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「50でセクシー 何が悪い?」スーパーボウルで魅せ付けたJ.Loとシャキーラ、ラテン女性の底力

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
セクシーすぎるジェニファー・ロペス。スーパーボウル、ハーフタイムショーにて。(写真:ロイター/アフロ)

英語でDress Your Ageという言葉がある。「年齢にあった着こなしを」という意味だ。日本同様にアメリカでも言われることだが、一方でWear what you want(好きなものを着ていい)という言葉も同時に聞こえてくる。

アメリカ社会では一般的に、その場の雰囲気に合う服装が良しとされる。例えばオフィスでは清潔感のある整った身なり、週末はリラックスしたTシャツにレギンス、パーティーでは大胆なセクシードレスといった具合だ。

そしてアメリカ人は「他人からどう見られるか」や「相手に失礼がないか」というより「自分がどういう気分になりたいか」「自分が気分よくいられるか」を重視する。自分に軸を置く中で、当然服装も状況に応じて自分が着たいものを着る。多少のDress Your Ageという感覚は持っているが、日本ほどではない。そしてたまにニューヨークの中心地で、明らかにオーバー70のおしゃれなおばあちゃんがミニスカートで闊歩している姿に出くわすと、自由の国アメリカにいることを再確認し、エネルギーと元気をもらえた気分になるものだ。

1億1,440万人が視聴するスーパーボウル

2月2日、NFLフットボール「第54回スーパーボウル」が米フロリダ州マイアミにあるハードロック・スタジアムで行われ、31対20でカンザスシティ・チーフスがサンフランシスコ・フォーティナイナーズを制した。

スーパーボウルと言えば、国民の3分の1にあたる1億1,440万人が視聴するとも言われる国民的大イベント。この数は、オリンピックの開会式の視聴者(3,170万人)をはるかにしのぐ多さだ。

試合会場に行けない国民のほとんどは、誰かの家で開催されるパーティーに行ってピザを食べながら観戦するか、近所のスポーツバーでビールを飲みながら観戦する。そして毎年、試合内容もさることながら、同じように注目を集めるのが(1)この日皮切りされる企業のCM(2)ハーフタイムに行われるライブショーだ。

(1)映画さながらのCM映像

スーパーボウルで流れるコマーシャルはどんな番組より一番影響力があるため、出稿料はもっとも高額とされている。Ad Ageによると、30秒枠で平均560万ドル(約6億円)とみられている。

スポンサーは冠スポンサーのペプシをはじめ、ピザやスナック菓子、車、モーゲージ、動画配信など多岐にわたり、真面目なメッセージ性の高いものからジョーク系までさまざま。中には大物セレブが出演し、映画さながらのカメラワークなど芸術的にも完成度が高いものもあり、各社がいかに年に1度のこの機会に力を入れているかを窺い知る。

WatchMojoが選んだ今年のスーパーボウル・コマーシャルトップ10

(筆者はこの中でもGoogleとRocket Mortgageがお気に入り)

(2)ハーフタイムの圧巻ライブステージ

今年のハーフタイムショーには、ジェニファー・ロペスとシャキーラという2大ラティーナ(ラテン系女性)がステージに立った。ラテン系女性がメインを務めるのはスーパーボウル史上初ということで、大きな話題になった。

スーパーボウルを前にした記者会見で意気込みを語る2人

ジェニファー・ロペス:

(ニューヨーク・ブロンクス出身のプエルトリコ系アメリカ人=ニューヨリカン、50歳)

「親友のコービー・ブライアントの死には私も(恋人の)アレックス(ロドリゲス)もショックを受けている。人生は儚いからこそ、みんなに愛と優しさをステージを通して届けたい。みんな一致団結して1つになる大切さを伝えたい」

シャキーラ:

(コロンビア出身、スーパーボウルの日が誕生日、43歳)

「バランキヤで生まれ育った子がこんな大舞台に立つなんて誰が想像したでしょう? とてもアメリカンなイベントで2人のラティーナがメインを張るのは、多様化が進むこの国の軌跡を語る上で意義深いこと。(ラテンコミュニティの多い)マイアミでっていうのもね。いろんな人種がミックスしているのがラテン系。このステージは年齢、性別、人種、出身や背景などどうでもいいという考えのパラダイムチェンジになるでしょう」

論争になったハーフタイムショー

Shakira & J. Lo's FULL Pepsi Super Bowl LIV Halftime Show

ラテンのフレーバー満開のステージでは、コロンビア出身のレゲトン歌手J.バルヴィンや、ジェニファー・ロペスの11歳になる娘、エマさんも共演した。しかし何よりも注目されたのは、ジェニファー・ロペスが50歳にしてこのようなパワフルでセクシーすぎるほど艶やかな圧巻のステージをしたことだ。

翌日のニューヨークタイムズ紙は「J. Lo と50歳のパワー」という記事を発表。「J.Loの衣装は際どいもので、少し馬鹿げたものだったが、昨年の(上半身裸だった)アダム・レヴィーンより肌は見えていない。マイクロミニスカートのシャキーラは43歳だ」と、皮肉と賞賛両方を含んだ内容だった。

ショーを見た人の反応はさまざまだ。主に女性からは「50歳でこの完璧な体型、信じられない」、男性からは「素晴らしい。衣装に気をとられてゲームに集中できなかったほどだ」などの賞賛の声が多く上がった。

しかし子どものいる主婦層には不評だったようだ。「パフォーマンスも衣装もセクシーすぎて、子どもも観るスーパーボウルに適していない」「ポールダンスの演出はひどい」「下品で気分が悪い」「もっとファミリーフレンドリーな演出にして欲しい」などの意見が多かった。

これらの批判に対して、「2人の出演が決まった時点である程度予想できたこと。ハーフタイムショーの時間はテレビを切るか、アニメに切り替えるかすればよかったのでは」と肯定派からも反論が出るなど、評価は真っ二つに割れている。

いろんな意味で毎年論争の的となるスーパーボウルのCM枠、そしてハーフタイムショー。1億以上の人々が一斉に観る(日本人にとっての紅白歌合戦的な立ち位置の)大人気イベントたる宿命だろう。

筆者は個人的に、全米の親を激怒させ目も当てられなかった、2004年のジャネット・ジャクソンとジャスティン・ティンバーレイクによる史上最悪のハーフタイムショーに比べると、今年のものは大いに勇気付けられ、また目の保養として可愛いいものだったのではないかと思っているのだが。

Janet Jackson & Justin Timberlake - Superbowl Halftime Show 2004

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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