「3球団が並べば前年順位で優勝決定」、どうして追加プレーオフの発想が出てこないのか?
これならくじ引きで決めた方が公平だと思う。
首位阪神から3位巨人まで2.0ゲーム差でひしめきあう大混戦のセ・リーグは、7日に都内で理事会を開き、3球団が勝率、勝利数、当該球団間の対戦勝率で並んだ際の優勝の決定方法について新たに規定した。それは、前年度順位で優勝を決めるという脱力感を感じるものだ。
この決定は、ある意味では当然と言える。これまでの合意事項でも、2球団が勝率で並んだ場合、勝利数、対戦勝率も同じ時は前年度順位で優勝球団を決めることになっているからだ。今回は、単に2球団の場合だけでなく3球団の場合も同様と決めたに過ぎない。
しかし、そもそも「前年度の順位によって」今年の優勝が決まるということ自体が奇妙だ。現在優勝を争っている阪神、ヤクルト、巨人のうち、まず巨人が、次に阪神が有利になるのだからだ。ペナントレースは毎年リセットされるべきだ。複数球団が勝率、勝利数、対戦勝率で並ぶというのは極めて稀だとは思うが、今年の優勝が前年度の順位に左右されるくらいなら、3球団(または2球団)でジャンケンでもしたほうがまだましだと思う。少なくとも公平だからだ。
それ以前に、そんな場合は追加プレーオフの開催という発想がないのが残念だ。それが実施されれば、それこそ88年パ・リーグの「10.19」や、94年セ・リーグの「10.8」のような盛り上がりが期待できるのではないか。
そうならないのは、セ・リーグ各球団に進取の気質が欠けることと、リーグ全体の利益よりもクライマックス・シリーズの興業権を確実に掴みたいという特定球団の思惑が優先されてしまう運営体質のせいだろう。阪神とヤクルトは、よくもこんな不公平な案を受け入れたものだ。
日程上のやり繰りや球場の確保などの問題を追加プレーオフが開催できない理由に挙げる声もあるかもしれない。しかし、それらは所詮オペレーション上の問題だ。事務方の都合が優先されてしまうのは、そもそもそれらの上位概念であるビジョンやストラテジーがないからだろう。
本件にはさらに残念なことがある。「前年度の順位を優先」などという規定の存在やそれに準拠した追加規定の決定を問題視し報道するメディアが全く見当たらないことだ。これは、メディアが球団を保有していることに起因する悪影響のひとつだろう。