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NY原油13日:ドル高、サウジ増産で期近が続落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油8月限 前日比0.54ドル安

始値 52.15ドル

高値 53.17ドル

安値 51.26ドル

終値 52.20ドル

ギリシャリスクが後退するも、ドル高や過剰供給に対する警戒感が上値を圧迫し、期近は続落した。

ユーロ圏がギリシャ支援で合意したことを受けて、欧州タイム入り後はやや安値是正の動きが優勢になった。欧州経済の減速リスク後退が工業用素材市況全体にポジティブに機能していることで、その流れの中で原油相場も買われた格好になっている。ただ、その影響でドル相場が急伸する中、ドル建て原油価格に対しては戻り売り圧力も強く、引けにかけては再びマイナスサイドに沈む展開になっている。需給環境に特に目立った支援材料が見当たらない中、ドル高環境では素直に売られ易い地合になっている。

石油輸出国機構(OPEC)が7月月報を公表したが、6月のOPEC産油量は前月の日量3,109.5万バレルから3,137.8万バレルまで28.3万バレル増加した。特にサウジアラビアとイラクからの増産圧力が強く、なおOPECが積極的な増産政策を展開していることが、原油需給の緩和状態が長期化するとの懸念を強めている。加盟国からの直接報告によると、サウジアラビアの産油量は前月比で23.1万バレル、イラクは30.3万バレルの増加となり、この2カ国のみで50万バレルの増産を行ったと報告になる。2次調査でも、この二カ国で24.7万バレルの増産が報告されており、いずれにしてもOPECの過剰供給体制は維持されることになる。

イラン核協議に関しては13日中の合意形成に失敗し、交渉期限の再延長が行われるのかなど不透明な部分が多い。ただ、いずれにしてもイラン産原油の取引規制が緩和方向にあることは変化がなく、イラン要因で改めて買いを入れるような動きは見られなかった。

10日に発表された国際エネルギー機関(IEA)月報に続いて、OPEC月報でも国際原油需給が強力な緩和圧力に晒されていることが確認されている。この状態は長期化する見通しであり、引き続き上値の重い展開を想定している。ただ、本格的な値崩れを起こすにはドル高が必要不可欠であり、ギリシャ救済合意後のドル高圧力を維持できるかが、短期の50ドル割れの有無を決定付けることになる。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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