【要注意】コロナ感染・ワクチン接種後に発症するアレルギー性接触皮膚炎の実態に迫る
今回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染やワクチン接種が、アレルギー性接触皮膚炎の発症にどのような影響を与えるのか、最新の研究結果をご紹介します。
アレルギー性接触皮膚炎とは、特定の物質に皮膚が接触することで引き起こされるアレルギー反応の一種です。かゆみや発赤、腫れなどの症状が現れ、場合によっては水疱ができることもあります。日常生活に支障をきたすこともあるため、早期発見と適切な治療が大切です。
そんなアレルギー性接触皮膚炎ですが、実はCOVID-19の感染やワクチン接種が、その発症リスクを高める可能性があることが明らかになりました。米国の研究チームが1,073人の患者を対象に行った後ろ向き研究の結果、以下のような実態が浮き彫りになったのです。
【COVID-19感染後にアレルギー性接触皮膚炎を発症したケース】
まず、COVID-19の感染が確認された後にアレルギー性接触皮膚炎を発症したのは、全体の0.47%にあたる5人(全員女性)でした。年齢は22歳から63歳で、顔の発疹が3人、目の周りの発疹が1人、全身の発疹が1人に見られました。このうち4人は、もともと皮膚炎の病歴がありませんでした。発症のタイミングは、COVID-19の症状が出てから1日以上経ってからが3人、6~7日間連続で発疹が続いたのが3人でした。
【ワクチン接種後の発症ケース】
一方、COVID-19ワクチンの接種後にアレルギー性接触皮膚炎を発症したのは、1.11%にあたる12人(男性2人、女性10人、36~80歳)でした。症状は、全身の発疹が5人、頭皮、顔、目の周り、口の周り、首、腕、脚の発疹がそれぞれ1人ずつでした。使用されたワクチンは、ファイザー社製が9人、モデルナ社製が2人、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製が1人でした。接種回数は、3回が3人、2回が5人、1回が4人でした。ほとんどの患者(10人)は、ワクチン接種前には皮膚炎の病歴がありませんでした。発症のタイミングは、接種から1~14日後が10人でした。
興味深いのは、COVID-19の感染やワクチン接種後に皮膚炎を発症した患者の中で、顔の皮膚炎の割合が45.5%と、通常のパッチテストを受けた患者の16.0%と比べて約3倍も高かったことです。
この結果から、COVID-19の感染やワクチン接種が、一部の人々にアレルギー性接触皮膚炎の発症を引き起こす「引き金」になっている可能性が示唆されます。ただし、発症率自体は非常に低く、ほとんどの人はワクチン接種による皮膚炎の心配をする必要はないでしょう。皮膚に何らかの異変を感じたら、早めに皮膚科医に相談することをおすすめします。
【再発リスクにも注意】
さらに気をつけたいのが、再発リスクです。COVID-19に感染した後に皮膚炎を発症した患者では、再感染しても症状の再発は見られませんでした。一方、ワクチン接種後の発症では、再接種により25%の患者で再発が確認されています。ワクチン接種を続ける際は、皮膚の状態にも注意を払う必要がありそうです。
【慢性皮膚炎への移行にも要注意】
また、今回の研究では、ワクチン接種やCOVID-19の感染が慢性皮膚炎の発症に関与したと考えられた17人のうち、11人(64.7%)でアレルギー性接触皮膚炎の可能性が高いことがわかりました。これは、一般的なパッチテスト受診者の陽性率とほぼ同じ水準だったそうです。つまり、一過性の症状と思われても、慢性化するリスクがあるということ。早期の診断と治療が重要と言えるでしょう。
以上のように、COVID-19の感染やワクチン接種は、ごく一部の人にアレルギー性接触皮膚炎の発症を引き起こす可能性があることが明らかになりました。皮膚に異変を感じたら、我慢せずに皮膚科を受診しましょう。早期発見・早期治療が何より大切です。
参考文献:
Battis N, Ekstein SF, Cosky EEP, Neeley AB. Patient-reported association between COVID-19 infection or vaccination and onset of allergic contact dermatitis. Dermatitis. Published online March 27, 2024.