氷見野日銀副総裁、為替に注意払うと発言
日銀の氷見野良三副総裁は4日、米コロンビア大ビジネススクール日本経済経営研究所が都内で開いた日米の金融政策をテーマにしたパネルディスカッションに登壇し、「金融政策で為替レート自体をターゲットにするのは適切ではない」と述べたうえで「物価に幅広く持続的な影響が起こる可能性もある。非常に注意を払ってしっかり分析していかなければならない」と指摘した(4日付日本経済新聞)。
日銀の役割は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ことである。物価というのは裏返すと「通貨価値」ともなる。つまり通貨価値を安定させることが日銀の目的となる。
ただし、対外的な通貨価値については財務省がその役割を担っている。日銀は対内的な通貨価値を安定させる必要がある。
このため物価が上がれば、本来であれば利上げなど金融引き締め策によって物価上昇を抑制させる必要がある。もしそれを怠ると、対外的な金利差の拡大などによって円安を招き、それによって物価がさらに上昇してくることも予想される。
つまり円安対応は日銀の役割ではないとしても、適切な対応を行わなければ、対外的な通貨価値の下落によって物価をさらに上昇させかねず、これは日銀にも責任の一端はあるはずである。
上記の氷見野良三副総裁の発言は、みずほリサーチ&テクノロジーズの中尾武彦理事長から「マンデート(使命)が物価だとしても長期的には物価に影響する。もう少し注意を払ってもいいのではないか」と問われて答えたものだとか。
氷見野良三副総裁は、パネルディスカッションで日銀が買い入れる国債の減額についても言及、「長短金利操作を3月にやめるまで非常に深く関与してきた。非連続的な変化や不測のことを起こすのは避けなければならない。大きな課題だし、難しいところだ」と話した。
日銀は3月にマイナス金利政策と長期金利コントロールを解除した。それに続く政策修正は利上げと国債買入の減額であろう。これは「非連続的な変化」となるのか。また市場にとってサプライズとなる「不測のこと」なのか。
日銀はもう少し今後の政策修正について前向きであると、具体的な指摘をしても良いのではなかろうか。
市場では日銀がこれから何をしてくるのかの予測が難しくなっており、そのため国債市場の乱高下を招きかねない。
いまさらながら、金融政策にとって緩和時にはサプライズが必要なときもあるが、引き締めに転じた際には市場にしっかり織り込ませることが重要である。