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【今から楽しむ初代86/BRZ】タワーバーとは異なる効果、ストラットアッパーサポートを試す

高根英幸自動車ジャーナリスト
写真:meiju0919

ストラットタワーバーは1980年代から人気の補剛パーツ。純正でも装着されているクルマも珍しくないほど、今では定番アイテムと言ってもいいほどのチューニングパーツだ。

このタワーバーはエンジンルームの左右にあるストラットタワー(コイルスプリングやダンパーが収まっている筒状の膨らみ)の上に追加することで、コーナリング時などに外側のタイヤからの入力でボディが内側に捩れることを抑制して、ハンドリングの応答性やボディ剛性を高めてくれる。

86/BRZにもエンジンルーム奥のバルクヘッドへと連結するVバーが標準で備わっているが、これもタワーバーと同じ効果を狙ったもの。重量増やコストアップを抑えてボディ剛性を高めている。

今回、装着して試したのは群馬県藤岡市にあるショップ、モータースポーツガレージアクティブのオリジナルパーツであるアッパーサポート。タワーバーと同じくストラットタワーの上部に取り付けるものだが、タワーバーのように左右を連結する部品がない。ドーナツ型の部品を左右それぞれに装着するだけで効果を発揮するらしい。

MSGアクティブのアッパーサポートとシートレールバー。手前左側の2つの丸い部品がフロント用で、右側の三角型がリア用。後ろにシートレールバー。どれも価格は2万4200円。写真:meiju0919
MSGアクティブのアッパーサポートとシートレールバー。手前左側の2つの丸い部品がフロント用で、右側の三角型がリア用。後ろにシートレールバー。どれも価格は2万4200円。写真:meiju0919

取り付けはストラットのアッパーマウントを固定しているナット3本を緩めて外し、ボルトにアッパーサポートを通して、ナットでストラットと共締めするだけ。

リアはアッパーマウントが2点のボルトナットで固定されているので、それと共締めすると共に、内側に追加されている補強プレートを挟み込むようにしてボルトナットで固定する。これによりストラットへの衝撃に対して剛性を高めるのだ。

フロントはストラットの取り付け部分のナットを一度外して共締めするだけ。これだけで路面からの突き上げが緩和された。筆者撮影
フロントはストラットの取り付け部分のナットを一度外して共締めするだけ。これだけで路面からの突き上げが緩和された。筆者撮影

ツーリングカーやラリーカーの室内を張り巡らせたロールケージがストラットを強化しているように、ストラット周りだけを強化しているのである。

ただそうした競技車両と違うのは、ボディをガチガチに固め過ぎるのではない、ということだ。ストラット頂部だけを強化することでスプリングの動きをスムーズにしてやることだけを狙っているアイテムなのである。

リアもダンパーを取り付けている2本のナットを緩めて外し、さらに内側の補強部分にT字型に延長されたナットを使って3点留めとされている。写真:meiju0919
リアもダンパーを取り付けている2本のナットを緩めて外し、さらに内側の補強部分にT字型に延長されたナットを使って3点留めとされている。写真:meiju0919

以前、ボディのアンダーブレースをいくつも取り付けたクルマに試乗したことがあるが、すべてのブレースを組みつけたら、非常に曲がりにくいクルマになってしまったことがある。クルマはステアリングを切ってフロントタイヤが向きを変えただけで曲がっているのではなく、ボディがコーナリング時に発生する応力によって捩れることで旋回性を高めているからだ。

ボディ剛性を思い切り高めた競技車両は、そうした捩れによる旋回性は発生しないから、ホイールアライメントなどのセッティングと、ドライバーの運転スキルによってクルマを旋回させているのだ。公道をスポーティに走る程度であれば、必要以上に後からボディ剛性を高めすぎないことも、気持ちのいい走りを楽しむポイントなのである。

装着して走ってみて、効果は体感した!

首都高速の内環状を走行してみると、ジョイントなどのギャップを超える際の衝撃が和らいでいるのがわかる。車体中央で発生しているZ軸方向の加速度を測定してみると、ノーマルとストラットアッパーサポートの違いがクッキリとグラフに表れていた。

装着前(左)と装着後(右)の測定データ。注目はクルマの上下方向のGを計測した下の棒グラフ。装着前は小刻みにGが激しく上下動するが、これはボディが振動しているから。装着後は滑らかに変動する。筆者撮影
装着前(左)と装着後(右)の測定データ。注目はクルマの上下方向のGを計測した下の棒グラフ。装着前は小刻みにGが激しく上下動するが、これはボディが振動しているから。装着後は滑らかに変動する。筆者撮影

ノーマルは大きな入力があった際に、Gの変化が大きくノコギリの歯のように小刻みにGの変動が起きている。それに対してアッパーサポート装着後は、入力に対してGの変動は滑らかだ。

ノーマルのボディではストラットが歪んで反発することでクルマに発生する振動を複雑にしてしまっている。アッパーサポートはストラットを強化することで、路面からの入力をよりスプリングに吸収させているのである。

首都高速C1での最大入力時の比較。全く同じ走行ではないため、若干入力に違いはあるが、装着前(左側)の方が最大Gが大きく、なおかつ細かく変動しているのに対し、装着後はGの変動が緩やかだ。筆者撮影
首都高速C1での最大入力時の比較。全く同じ走行ではないため、若干入力に違いはあるが、装着前(左側)の方が最大Gが大きく、なおかつ細かく変動しているのに対し、装着後はGの変動が緩やかだ。筆者撮影

首都高速からワインディングに舞台を移すと、その効果はさらにはっきりと表れた。スプリングのバネレートを下げたのかと思うほど、足が良く動く。荷重移動を上手く利用してのターンインや旋回からの脱出もトラクションがさらに掛かって、走りにメリハリが出る。

筆者個人としては、これは有用なパーツだと思ったが、乗り心地や走りのフィールは好みが分かれるもの。

姿勢変化が大きくなり、足回りが柔らかくなったと感じる場合もあるからだ。スポーツカーらしいキビキビとした動きを好む向きには、これを追加しただけの状態を好まないのも頷ける。

郊外まで行って峠道を走らせてみたところ、リヤサスペンションの動きがしなやかになり、クルマの動きが激変したことを実感した。筆者撮影
郊外まで行って峠道を走らせてみたところ、リヤサスペンションの動きがしなやかになり、クルマの動きが激変したことを実感した。筆者撮影

ボディのポテンシャルが向上したのだから、それに合わせてスプリングやダンパーのセッティングも見直すことが必要なのだ。最低でも減衰力を数段高めて(バネが動きにくくなるので、ノーマルでは振動が増える)やることで、踏ん張りの効いたシャーシの恩恵を受けることができる。

後席の足元が使いにくくなってしまうものの、シートの支持剛性は高まるので、運転時のしっかりとした感触が高まるシートレールバー。写真:meiju0919
後席の足元が使いにくくなってしまうものの、シートの支持剛性は高まるので、運転時のしっかりとした感触が高まるシートレールバー。写真:meiju0919

またシートレールに追加するシートレールバーは、クラッチペダルを踏み込んだ際や、峠道でのコーナリング時にシートがしっかりしたのを感じるので、後席を必要としないのであれば幅広い層のオーナーにお勧めしたいパーツだ。

自動車ジャーナリスト

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。芝浦工業大学機械工学部卒。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、様々なクルマの試乗、レース参戦を経験。現在は自動車情報サイトEFFECT(https://www.effectcars.com)を主宰するほか、ベストカー、クラシックミニマガジンのほか、ベストカーWeb、ITmediaビジネスオンラインなどに寄稿中。最新著作は「きちんと知りたい!電気自動車用パワーユニットの必須知識」。

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