ガソリン小売価格、7週連続高で前年から15円の値上がり
資源エネルギー庁が6月11日に発表した石油製品価格調査によると、6月9日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は1リットル当りで前週比+0.6円の166.6円となった。これで7週連続の値上がりであり、当該期間の累計で2.4円値上がりした計算になる。
4月の消費増税直後は164.1~164.2円水準で元売・小売各社が様子見に徹していたが、その後は緩やかなペースで原油調達コストの転嫁が進んでいる。消費増税前からは7.6円の値上がりであり、前年同期比での値上がり幅は15.0円に達している。
■海外原油は上げ一服も、ガソリン卸値は年初来高値更新
5月下旬から6月初めにかけての海外原油相場は小幅下落したが、ガソリン小売価格を押し下げるまでのインパクトは確認できなかった。
6月9日時点のドバイ原油は1バレル=104.95ドルとなっており、前週の106.25ドルからは1.30ドルの値下がりとなっている。5月27日の107.15ドルをピークに、緩やかなダウントレンドが形成されている。特に目立ったネガティブ材料は見当たらないが、5月に「ドライブ・シーズンの需要拡大→在庫削減」の流れを先取りして上昇してきた反動もあり、短期筋の利食い売りが膨らんでいる模様だ。
もっとも、為替相場の円高圧力が一服していることもあり、原油調達コストが大幅に低下するようなレベルには到達していない。業者転売市場では、ガソリン卸値が年初来高値を更新する展開が続いており、この状況下で小売価格のみが値上げ圧力を拒否するのは困難な状態になっている。
ゴールデン・ウィークと夏休みの狭間とあって、末端需要は必ずしも良好とは言えない。週間の出荷量を見ても、ドライバーが現行価格を支持しているのかは疑問視される。ただ、元売各社が利幅を圧縮してまで卸値の値上がりを抑制する動きを見せなくなる中、末端のガソリン価格に対しては年初から続く原油高のコスト転嫁が継続されることになる。
米国の原油在庫水準などは過去最高に近い水準を維持しており、現時点では世界的に需給が極端にひっ迫している訳ではない。ただ、北半球ではガソリン精製量の拡大に伴い8月前後まで製油所向け原油需要が拡大するのが例年のパターンであり、今後は先進国を中心に在庫取り崩しの動きが強まる可能性が高い情勢になっている。
今晩(6月11日)は石油輸出国機構(OPEC)の総会が開催されるが、OPECとしては増産対応の必要性は認識されておらず、供給サイドからの需給緩和圧力も想定しづらい状況になっている。北米のシェール革命は着実に続いているが、世界の石油需要が想定を上回るペースで拡大する中、季節要因に沿った形で需給引き締め圧力が強まり易くなっている。
ドライブ・シーズンが終わる8月下旬頃には原油高も一息つける可能性があるが、それまでは少なくとも大幅な値下がりは想定しづらく、逆にもう一段階の値上がりリスクを想定しておくべきだろう。引き続き、国内の夏休みシーズンには170円水準の価格が実現していても何ら不思議ではないと考えている。
■役所主導で製油所の再編が促されるも
なお、経済産業省は10日、供給過剰の解消を目的とする産業競争力強化法50条を石油業界に適用すると正式に発表した。この法案は、2013年12月に成立したものであり、供給過剰を是正することで脱デフレを促すアベノミクスの一貫でもある。
同省は2010年7月に「エネルギー供給構造高度化法」で重質油分解能力の向上に関する新基準設定という形で、石油業界の再編圧力を強めていた。この流れで、製油所各社は、精製能力の削減や統合といった動きを進めていたが、今回は3年後を目処とした合理化案、事業再編案の提出を義務付けることで、国内に23ヶ所ある製油所の再編をより強力に促すことになる。
民間企業の再編への国の介入が好ましいことなのかは疑問視されるが、国内の石油需要縮小を受けて、精製能力が過剰になっていることは間違いのない事実である。アジア地区では巨大な精製能力を持つ最新型の製油所が稼動を相次いで稼動を開始しており、国内石油元売りとの精製コスト差は広がる一方である。
こうした中、適正な水準への精製能力の削減を進め、アジアでの競争力を高めることに成功できれば、国内ガソリン価格に対する値上げプレッシャーは緩和される可能性はある。ただ、この議論は1年や2年で結論が出るものではなく、当面のガソリン価格に対する影響は限定的となろう。