セ界の火ヤク庫はマシンガンとダイハードを超えるか
ヤクルト・山田がタイトル総なめに向けて加速中
パワーとスピードを兼ね備えたヤクルト・山田。史上初の三冠王+盗塁王+トリプルスリーという快挙を狙える位置につけている。打球方向は引っ張りがやや多いという程度で満遍なく、右方向にも長打を打てる。昨季の初球スイング率は14.7%(リーグ平均26.8%)とじっくり待つタイプでありながら2ストライク後の打率が.292と追い込まれてからも強い。さらにチームにとって大きなアドバンテージとなっているのがセカンドであるということ。センターラインの選手には守備力が求められ、強打の選手はファーストやサード、レフトを守ることがほとんど。実際ポジション別OPSを見てもセカンドは.700前後の球団が多い中、ヤクルトだけは1.000を超える。他球団では打線の穴となるところに主軸選手がいるのだから相対的に打線の力はより強力になる。386得点、845安打はどちらもリーグトップ。その中心にいる山田は7月31日からの阪神3連戦でも初戦に藤浪から先制タイムリー、2戦目もメッセンジャーから先制となる犠牲フライを放ち存在感を示す。特に能力の高さを見せつけたのが2戦目の第2打席。パワーピッチャー、メッセンジャーの力強いストレートの前にファールと空振りで追い込まれ、球威が勝っているかに見えたが3球目は振り負けずにセンター前に弾き返す。首位争いを続ける大事なゲームで2ストライクからの強さを発揮した。もし山田が9人いれば何点取れるのか。安打、四死球、犠打や盗塁の他に塁打数や併殺打も含めた総合的な得点能力を表した指標、RC27で山田が叩き出した数値は9.31。セカンドにリーグ屈指の強打者がいる、これは過去の強力打線にも共通する特徴だ。
ローズ、井口、山田。強力打線のキーはセカンドの強打者
石井、波留の1、2番から始まる打線が集中打で得点を重ね、最後は大魔神・佐々木が締める。マシンガン打線と呼ばれた横浜打線は1997年から4年連続で首位打者を輩出した。特に好成績を残したのは優勝した1998年ではなくその翌シーズンでチーム打率.は294。1試合平均10.43安打、5.27得点。2桁安打は当たり前とマシンガン打線の名に恥じない猛打を振るった。
この上を行くのが2003年のダイエー。俊足の1番・村松が.324を打ち、小久保が離脱した穴を川崎が埋め、井口、松中、城島、バルデスと並んだ中軸は全員が3割25本100打点を記録。指名打者制を採用しているため投手が打席に立たないという違いはあるがチーム打率は.297とマシンガン打線を上回る。ダイハード打線と呼ばれた分厚い打線は100打点カルテットを中心に140試合で822得点を挙げた。
この上記2チームにも.369、37本塁打、153打点のローズ、.340、27本塁打、109打点の井口というクリーンアップを打てる強打のセカンドがいた。RC27はローズが10.17、井口が9.79。山田の打棒は横浜史上最強の助っ人と、ワールドシリーズで世界一に輝いたメジャーリーガーにも全く引けを取らない。
現在のヤクルト打線はミレッジ、バレンティンを欠いてこの破壊力。相手投手を何度も炎上、降板に追いやり「セ界の火ヤク庫」と恐れられる。暑さと疲労がたまる時期であることからエース級でも崩れることが増えるのが夏場の戦い。加えて故障離脱中の主砲も勝負の秋には戦線復帰する見込み。現在のペースでは安打、得点共にマシンガン打線、ダイハード打線には及ばないが、大砲を積載したセ界の火ヤク庫が爆発すれば球史に残る強力打線となる。