Yahoo!ニュース

ウクライナ軍、ロシア軍が最近よく利用している12個レンズ搭載の監視ドローン「Kartograf」撃破

佐藤仁学術研究員・著述家
「Kartograf」の12個のレンズ(ウクライナ軍提供)

以前はロシア軍の監視ドローンといえば「Orlan-10」だったが

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。またロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」で攻撃を行っている。

ウクライナ軍では撃墜したロシア軍の戦車やドローンなどの写真や動画をSNSに公開して世界中にアピールしている。以前はロシア軍の偵察ドローンで破壊されているのはもっぱら「Orlan-10」ばかりだった。だが2022年9月になってから、ロシア軍の偵察ドローン「Orlan-10」が破壊された写真や動画は少なくなり、代わって12個のレンズを搭載したロシア製の偵察・監視ドローン「Kartograf」が撃破された写真を見かけるようになった。

ロシア軍が「Orlan-10」以外の監視ドローンを使用しているのは珍しく、「Kartograf」が撃破された写真が公開された時にはアメリカのメディアNewsweekでも報じられたくらいだった。そして今回もまたロシア軍の偵察ドローン「Kartograf」が撃破された写真が公開されていた。

▼爆破されたロシア軍の監視ドローン「Kartograf」

上空の監視ドローンはすぐに破壊

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破する、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。爆弾などを搭載していない小型の監視・偵察ドローンならばジャミングで機能停止させる"ソフトキル"で迎撃できるが、中型から大型の攻撃ドローンの場合は対空機関砲や重機関銃のような"ハードキル"で上空で爆破するのが効果的である。

地対空ミサイルシステムや防空ミサイルのような大型システムで監視ドローンを攻撃して爆破させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。しかし監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。

「Kartograf」のように12個のレンズを搭載した監視ドローンはあらゆる角度から精度の高い写真、動画を撮影することから発見したらすぐに機能停止させるか、徹底的に爆破した方がよい。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果的である。

ウクライナ軍では2022年2月24日にロシア軍に侵攻されてから殺害したロシア軍の兵士の数、破壊した戦車、戦闘機など兵器の数をほぼ毎日公表している。ウクライナ軍では破壊したドローンのなかで、監視・偵察ドローンと攻撃ドローンの内訳は明らかにしていないが、9月21日までの7か月間で破壊したドローンは930機を超えている。

▼爆破されたロシア軍の監視ドローン「Kartograf」(2022年9月初旬)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事