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掴みどころのない中村倫也の“ひねくれ素直”な人の心の掴み方

てれびのスキマライター。テレビっ子
第35回東京国際映画祭での中村倫也(写真:2022 TIFF/アフロ)

3月25日に結婚を発表した俳優・中村倫也と日本テレビアナウンサーの水卜麻美。

水卜がMCを務める本日の『ZIP!』(日本テレビ)の生放送は、終始祝福モードに包まれていたが、そのエンディングでなんと中村倫也がサプライズで登場した。

「良ければこちらに」とスタジオの中央に促されると「ちょっと無理そう」と笑わせつつ、逃げようとする水卜アナと並ぶと「(職場の)みなさんにご挨拶を、と思ったんですが気づいたらピンマイクをつけてました」と笑う。

「水卜さんの好きなところは?」と聞かれると、「ちょっと手広げてもらっていいですか?」と水卜に両手を広げさせると「この絶妙に短い腕が」と言って、水卜から「何だよ、それ。もっといいこと言いなさいよ! 初めてのケンカだよ(笑)」とツッコまれる夫婦漫才のようなやり取り。

思えば、ともにインドア派ながらお笑い好きという共通点を持ったふたり。中村登場前に水卜が「楽しいことが大好きな人で、周りを楽しませようとめちゃくちゃふざけたりする姿がステキ」だと語っていた、そのままの姿を見せていた。

ひねくれ素直

そんな中村倫也は熱烈なバナナマンファンとしても知られている。

2018年に写真集『童詩』を発売した際には設楽統が司会を務める『ノンストップ』(フジテレビ)にVTR出演。共演者や仕事をする周りの人たちによくあだ名や異名をつけられると明かした。

そのひとつが「ひねくれ素直」。

まさに中村倫也を一言であらわした絶妙な異名である。

デビューしてすぐの頃、「誠実なヤツ」を演じてくれと言われた。けれど「誠実」の意味がいまいち分からなかった彼は、「誠実」を辞書で調べたりもした。が、結局わからなくてデタラメに演じたら、それがウケたという。

それから演じるのが楽しくなっていった。

ターニングポイントとなったのは25歳の頃。

河原雅彦演出の舞台「ロッキー・ホラー・ショー」に出演し演技観が変わった。

それまで理詰めで役作りをしていたが「想像力を限定してしまうような芝居はしたくない」と考えるようになったのだ。

そして2018年、朝ドラ『半分、青い。』(NHK)で脚本の北川悦吏子いわく「ホイップクリームみたいな男子」の“マアくん”こと朝井正人を演じ大ブレイクを果たした。

同時期の2018年に放送・公開された作品では、ドラマ『崖っぷちホテル』(日本テレビ)で競艇狂いのツンデレシェフ、『ミス・シャーロック』(Hulu)ではちょっと抜けてる刑事、映画『孤狼の血』ではぶっ飛んだヤクザと、まったく雰囲気の違う役柄をこなしていたことが象徴するように、掴みどころがない。

「見てくれている方に『これも中村倫也なの?』って思わせるくらい、振り回してやりたい気持ちはあります」(「オリコンニュース」2018年8月1日)

第43回 エランドール賞授賞式での中村倫也
第43回 エランドール賞授賞式での中村倫也写真:YUTAKA/アフロ

前述の『ノンストップ』では、続いて「疲れるのが嫌い。走るのが嫌」とインドアな私生活を披露。

ハムスター2匹と古代魚のポリプテルスを飼っていると話し、その場でポリプテルスの“顔マネ”もした。

その姿はあまりにチャーミングで母性本能をくすぐるものだった。

だが、理想の女性のタイプについて聞かれるとその愛らしい表情は一変。

きっぱりと「恋愛観、喋りたくないです」と拒否。

会見会場の空気が一瞬凍りつくと、すぐにニッコリ笑い「服をちゃんと着る人」と答えてみせた。

一度拒否しておいてのふわっと答える、相手を翻弄するツンデレ。

まさに「ひねくれ素直」の為せる業だ。

「人たらし」「イケメン俳優」「カメレオン俳優」「ゆるふわ」「癒やし系」……様々な形容をされる中村は、「特に好かれるために何かしているわけではないんですよ」と言う。

「そうやって僕で大喜利をして楽しんでもらいたいなって。20代だったら、『ほんとはそうじゃないのに!』って思ったかもしれないけど、今はもう『好きに楽しんでください』って。いろんな形容詞がつきまとった結果、『あの人はいったい何?』ってなるのも面白いですしね」(「朝日新聞デジタルマガジン&」2019年12月20日)

『ノンストップ』の最後には「俺、今日やりたいことあって」と切り出すと、おもむろに服のボタンを外し始めた。すると、バナナマンのライブTシャツがあらわになった。自ら物販に並んで購入したという。そうしてスタジオにいる設楽に向かって笑顔を振りまくのだ。

中村倫也は相手の心を掴む術を知りすぎている。

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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