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『ゆるキャン△』MV動画に見る作り手の志の高さについて

いしたにまさきブロガー/ライター/アドバイザー
ゆるキャン△ SEASON2MV「ここにも春が来るんだ。」(YouTubeより)

3年ぶりのゆるキャン△ SEASON 2の放送が終了しました。そして、2022年には「ゆるキャン△」の劇場版が公開されることも発表されました。

ゆるキャン△ SEASON 2の終盤の舞台となったのは伊豆。そして、その伊豆キャンプ編が始まる前に公開されたのが、ゆるキャン△ SEASON2 ~MV~「ここにも春が来るんだ。」という一風変わった公式の動画です。

ゆるキャン△といえば、その内容もさることながら、キャンプの醍醐味ともいえる風景描写の美しさで知られています。

そして、このゆるキャン△ SEASON2 ~MV~「ここにも春が来るんだ。」でも、その美しい風景がまるでメインのコンテンツかのようにユーミンの『春よ、来い』(佐々木恵梨によるカバー)とともに流れます。

そして、声として発せられるセリフは「もうすぐここにも春がくるんだ」というワンフレーズだけなのです。

そもそも冬アニメとも呼ばれる1月から3月に放送されるアニメではこういったイメージを伝える動画が放送のシーズン中に公開されるのはあまりないことです。そして、もっと大事なことは、このゆるキャン△のMV動画が公開されたは3月11日だということです。

2021年の3月11日といえば、ちょうど東日本大震災から10年目となる日です。そこにいたずらにメッセージを求めるのは余計なお世話かもしれません。

例えば、女子高生がわいわいとキャンプしているアニメとしか見えないゆるキャン△ですが、今回のSEASON 2の伊豆編の前では、メンバーがキャンプ中に自然のきびしさを味わう場面が描かれました。

そして最終回13話は「ただいま」というタイトルであり、エンディングではエンディングテーマとともに主要キャラクターの1人でもあるしまりんの帰宅する様子が美しい風景とともにていねいに描かれてもいます。

そもそも、このゆるキャン△は最初のアニメ化の際にキャンプブームをさらに後押しする存在となった大ヒットアニメです。

そして、その自分たちが生み出すアニメの影響力をこのゆるキャン△アニメの製作陣は、ちゃんと自覚もしています。

『ゆるキャン△』関連場所への訪問に関するお願い

『ゆるキャン△』TVアニメ放送開始以来、本作の関連場所には

多くのファンの皆様にお越しいただいており、感謝の言葉が尽きません。

そんな製作陣が特に意味もなく、わざわざ3月11日にこんなMVを出すとは、やっぱり思えないわけです。

キャンプといえば、自然。でも、戻れる家族のいる場所があるからこそのキャンプ。そして『春よ、来い』。

このMVを3月11日に見なかったみなさんも、3月11日という日がきたという気持ちになって、もう一度このMVを見てみませんか。そして、最後の「もうすぐここにも春がくるんだ」というフレーズをかみしめてみませんか。

私はやはりこのMVにゆるキャン△制作陣の自分たちがかかわっているアニメに対する姿勢を感じて、グッとくるしかないのです。

東日本大震災ということでは、震災をきっかけに緊急情報の配信で成果を上げている「特務機関NERV防災アプリ」を提供するゲヒルン株式会社も、声優の山寺宏一氏が声をあてたこんな防災啓発動画を公開していました。

優れたコンテンツは人を動かします。そして、そこに自覚的な作り手というのは、それに見合ったコンテンツをちゃんと用意します。

もちろん、それをどう受け入れるかはわれわれの自由です。でも、作り手のみなさんというのは、どこかでこんな思いを抱えて、ものを作っていたりすることも心にとめておいてもいいと思うのです。

ブロガー/ライター/アドバイザー

Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』管理人。2002年メディア芸術祭特別賞、2007年第5回Webクリエーションアウォード・Web人ユニット賞受賞。「ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である(技術評論社)」「あたらしい書斎(インプレス)」など著書多数。2011年9月より内閣広報室・IT広報アドバイザーに就任。ひらくPCバッグ・かわるビジネスリュックなど、ネット発のカバンプロデュースも好調。 #カゲサポ

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