迫力なき惨敗/レノファ山口(J2第12節)
J2レノファ山口FCは5月5日、維新みらいふスタジアム(山口市)でジェフユナイテッド千葉と対戦し、0-1で敗れた。1点差とはいえ、得るもののない惨敗だった。
明治安田生命J2リーグ第12節◇レノファ山口FC 0-1 ジェフユナイテッド千葉【得点者】千葉=船山貴之(前半40分)【入場者数】3129人【会場】維新みらいふスタジアム
「前節の町田戦でチームの成長を強く感じていたが、それらを一つも出すことはできなかった。そうであれば、最低でも勝ち点1を取らなければならない」
試合の終盤、最も声が出ていたのはそう悔やんだ渡邉晋監督本人だっただろう。ピッチサイドで一人、手を叩いてゴールに向かうように鼓舞した。しかし、チームが放ったシュートは試合を通じて5本。センターバックの渡部博文を前線に残すパワープレーにも出たが、相手のブロックを崩しきれなかった――。
中2日の連戦と暑さ
レノファは中2日で今節を迎え、前節からはメンバーを3人入れ替えた。山口市は朝から大雨注意報が出されるほどの雨に打たれていたが、昼には雨がやむと、初夏の日差しがピッチに降り注いだ。ピッチサイドで感じられる風はほとんどなく、ひたすらに蒸し暑い試合。中2日の選手には厳しいコンディションになった。
ただ、ゴールに向かうスピードや質が落ちたのを、コンディションのせいばかりにはできない。試合を通して選手の球離れが悪く、ボールホルダーが受け手を見つけられない状態が続いた。前線の動き出しが悪かったのはコンディションの悪さが理由かもしれないが、ボールを出そうとしないようなメンタリティーがあったとすれば、それはフィジカルコンディションに責任を求めるものではない。
試合を俯瞰すれば、主導権を握ったのは千葉で、レノファの対応は後手に回った。
前節までの相手に比べて、相手の守備強度はそれほど高いものではなく、組織的なハードプレスを掛けてきたわけではなかった。しかし、フォーメーションが噛み合ってマンツーマンでのプレスを受けたほか、千葉で初先発したサウダーニャがひたむきにボールを追うなど、個人と個人の勝負に持ち込まれてしまう。
センターバックから進めるレノファのゲームメークは受け手を探しながらの各駅停車になり、相手のブロックを破るだけの勢いを持てなかった。両サイドの深い位置を狙ったフィードでさえも相手にカットされ、シュートゾーンまで運べるシーンは限られた。
対する千葉は連係が合っていたとは言えないものの、サウダーニャの積極性を最大限に生かすようにシンプルに供給する。彼の両脇や少し下がった位置に船山貴之と見木友哉が構え、サウダーニャの自由度を高めるために、近づきすぎず、遠すぎずの距離を保った。
結果論かもしれないが、これがレノファの守備をさらに困難にさせた。サウダーニャにはマンマーク気味に付かざるを得なかった一方で、サウダーニャ以外の選手が攻守両面で少し構えた形で入ったため、プレッシャーを掛けるタイミングがつかめなかった。動く選手と構える選手のギャップに苦しんだと言っていいだろう。
GK関憲太郎の好反応もあってなんとか無失点で進められていたが、前半の終わり近くでついに崩壊する。
千葉は前半40分、ほとんどプレッシャーを受けていなかったボランチの小島秀仁がレノファ陣の中央から右サイドに展開。そのボールを最終ラインの間で伊東幸敏が受けると、さらに外側を駆け上がった岡野洵に受け渡し、すぐさま岡野はクロスボールを差し込んだ。これに船山がタイミング良く反応して頭を振り、鮮やかなヘディングシュートを叩き込んだ。
「自分の特徴はゴールに関わること。隙を探しながらやっている」。船山はそう話すとともに、「ジュン(岡野)があそこまで行くということはそんなにない。あんなにいいボールが来るとは思っていなかった」とセンターバックの岡野からのクロスに驚いた表情も見せた。
上述したレノファの守備の混乱を示す失点でもあった。船山がクロスに飛び付いたのはさすがの嗅覚とも言えるが、その前段階で小島に多くの選択肢を与えたことや、センターバックの一人がオーバーラップして高精度のクロスまで送らせたのは、出足の遅れを象徴するものだった。
交代でも挽回できず
レノファは状況を打開するため、後半14分までに矢継ぎ早に河野孝汰と石川啓人を投入。ボランチの佐藤謙介は右足を気にした状態でピッチを去り、中盤には神垣陸を送り出す。
これらの交代などから3-5-2でスタートしたフォーメーションを4-4-2に変更し、石川を左サイドバック、川井歩を右サイドバックに配置する。渡邉監督は「必要以上に後ろに選手を置くことなく前進できるような選手を選んで交代した」と話し、石川らの推進力を生かそうとしたが、相手のマンツーマンディフェンスの先へと踏み出せないままに時間だけが過ぎていく。
交代やシステム変更でも球離れの悪い状態を打開することはできず、最終盤こそ相手のブロックにパワープレーを仕掛けてシュート間隔は狭まったが、スコアは0-1から動かなかった。特筆するものはなく、淡々と90分が終わった。
シュートわずかに5本
後半のシュート数は公式記録上は3本。同18分に石川が放ったミドルシュートと、同40分にミドルレンジから、同49分にボックス内の左側からそれぞれ放った高井和馬のシュートがカウントされたものと思われる。前半のシュートは小松蓮と浮田健誠の1本ずつで、このうち高井のクロスに飛び込んだ浮田のシュートが、枠を捉えられなかったとはいえ、この試合最大の決定機だった。
90分でシュートは5本。それで勝ちきるチームもあり、コンディションが悪ければ、そういう泥臭い試合構築も必要になるだろう。とはいえ、レノファが自分たちの色を押し出そうとするなら、貧打で相手に脅威を与えることができないのは事実だ。
スコア以上の惨敗と言わざるを得ない90分間の鈍足旅行。渡邉監督は「連戦の間のゲームになれば、少し停滞するような内容になることは起こりうる」と振り返った上で、次のように話して苦杯にほぞを噛(か)んだ。
「そういうゲームでもどれだけ粘り強く、辛抱強くやれるかも示さなければならなかった。内容的にも乏しく、結果も付いてこない。見ている方には非常に残念な思いをさせてしまった」
二度とやってはいけないというような試合を、二度も三度もやっていては、チームはこのカテゴリーで戦うことさえ難しくなる。レノファは今、奮起すべき時を迎えている。
次戦は再びアウェー戦となり、5月9日に石川県でツエーゲン金沢と対戦する。次のホーム戦は5月15日で、SC相模原とJ3時代以来、6年ぶりに対戦する。