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イランの軍事施設にドローン攻撃で爆発:イスラエルの攻撃手法に似ていると米国NYT報道

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年5月にイランの首都テヘラン近郊のパルチンにあるイラン国防軍需省の研究室施設において、イラン国内から発射された攻撃ドローンが建物内に突っ込んで爆発したと、アメリカのニューヨーク・タイムズが報じていた。同紙によると、この建物はイラン軍のドローン開発をしている施設で、そのドローンの攻撃手法からイスラエルの関与が濃厚とのこと。攻撃ドローンの襲撃によって1人のエンジニアが死亡し、1人が負傷した。具体的な攻撃手法は明らかにされていない。

イスラエルが関与したと言われているイランへの攻撃ドローンでの攻撃といえば、2020年11月にイランの核科学者のモフセン・ファクリザデ氏が自動車に乗っている時に殺害されるという事件が起きた暗殺事件を思い出す。

当時、イスラエルとイラン国外の反体制派による犯行で人工衛星経由でコントロールされたキラーロボットによって実行されたと報じられていたが、イスラエル政府は当然否定していた。

そして約1年後の2021年9月にはアメリカのメディアのニューヨーク・タイムズの報道によると、イランの核科学者のモフセン・ファクリザデ氏の暗殺に使用されたのはベルギー製のFN MAG機関銃にAIと複数のカメラを搭載し1分間に600発の弾丸を発射できるキラーロボットで衛星経由でコントロールしていたということだった。そして機関銃に搭載されたAIとカメラセンサーで車内のモフセン・ファクリザデ氏を顔認識機能で識別して射殺した。たしかに同乗していたモフセン・ファクリザデ氏の妻や関係者は無傷だった。ニューヨーク・タイムズによると、証拠隠滅のためにキラーロボットは爆破されたが、本体部分が爆風で車外に放りだされたので判明したと伝えていた。

AI技術の軍事への活用は積極的に行われており、アメリカ、中国、ロシア、イスラエル、トルコなどでは自律型兵器の開発が進められており、現実的な兵器となってきている。顔認識技術を活用したキラーロボットによる殺害もSF映画の世界だけでなく、すでに現実の脅威である。顔認識技術の発展によって特定の個人を識別して殺害したり、特定の民族やジェンダーを標的にして攻撃を行うことが容易になってくる。

現在、人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界で40か国が自律型殺傷兵器の開発や使用に反対しているが中小国がほとんどだ。アメリカやロシアなど大国は開発も使用も反対していないため、国際社会での足並みがそろっていない。中国は自律型殺傷兵器の使用には反対しているが、開発には反対していないことから、おそらく開発は進められているだろう。2021年12月にスイスのジュネーブで開催された国連の特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons: CCW)の会議でも一致した結論は出ずに「これからも自律型殺傷兵器の開発や使用については継続して協議をしていく」こととなった。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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