飲酒や喫煙の習慣がある人は、新型コロナワクチンによる抗体価が上がりにくい
コロナ禍になり、家にこもりがちになったことから、お酒やタバコの量が増えてしまった人も多いかもしれません。飲酒や喫煙が新型コロナワクチンの効果にどのような影響を与えるかを調べた研究結果が、複数の施設から発表されたのでご紹介したいと思います。
飲酒がもたらす影響
普段からお酒を飲んでいる人は、免疫細胞のはたらきが弱くなるという説があります。となると、新型コロナワクチンによってしっかりと抗体が得られるのかどうか、気になるところですよね。
沖縄県の北部地区医師会病院から、2回目ワクチン接種を受けた職員を対象に抗体価を観察した研究結果が報告されています(1)。ご存知の通り、ワクチン接種後の抗体価は経時的に低下していくわけですが、ほとんど飲酒しない人と比べて、毎日飲酒する人は抗体価が低くなりやすいことが示されました(図1)。時々飲酒する程度なら大丈夫のようです。
東北メディカル・メガバンク機構コホートから、新型コロナワクチン接種後の抗体価を調べた類似の研究結果が示されています(2)。飲酒しない人と比べて1日エタノール換算で46g以上(例:ビール中ジョッキ3杯以上、チューハイ350mL缶2本以上、日本酒2合以上)飲酒している人の場合、抗体価が0.8倍になるという結果でした(図1)。
また国際医療福祉大学から、新型コロナワクチンの3回目ブースター接種前後の抗体価を比較した研究結果が発表されています(3)。これによると、飲酒しない人と比べて、習慣的に飲酒する人では接種後の抗体価が15%低くなるという結果が示されました。
以上から、飲酒の習慣があるとワクチン接種後の抗体価が上がりにくいことが分かります。
とはいえ、適度な飲酒であればそこまで問題にならないと思われます。厚労省は「過度な飲酒は控える」ことを推奨しています(4)。
喫煙はどうか?
先ほどの東北メディカル・メガバンク機構コホートの調査結果によると、図2にあるように、喫煙しない人と比べて1日1~20本喫煙する人は抗体価が0.74倍という結果でした(2)。
また同様に、国際医療福祉大学の研究においても、喫煙しない人と比べて喫煙する人で抗体価が低い傾向でした。ただ、飲酒と比べるとその影響は小さかったそうです(3)。
喫煙によって気道の免疫が障害されるわけですから、個人的にはワクチンの抗体価よりも、新型コロナが重症化しやすくなるデメリットのほうが問題ではないかと思います。喫煙は、本当に百害あって一利なしです。
他のワクチンではどうか?
他のワクチンについても、飲酒や喫煙との関連性が過去に研究されてきました。
たとえば、飲酒している人では肺炎球菌ワクチンの抗体価が下がりやすいとされています(5)。
喫煙については、子宮頸がんを予防するHPVワクチンの抗体結合力が低下したり(6)、インフルエンザワクチン接種後の抗体価が減少したりしやすいとされています(7)。
ワクチンの効果に影響する因子はたくさんある
ワクチンの効果に影響を与える因子は、飲酒や喫煙だけではありません。年齢、性別、運動不足、ストレスなど、たくさんあります(8) (図3)。このような記事を書いた身ではありますが、個々の因子を過度に気にしなくてよいと私は思っています。
「私はお酒をたくさん飲んでいるから・喫煙をしているからワクチンが効かない」ではなく、「もう少しお酒を控えよう・たばこを減らそう、しっかりワクチンも受けておこう」が新型コロナと向き合う上で適切なスタンスだと思います。
(参考)
(1) 新型コロナワクチン接種前後の抗体検査について(URL:https://hokubuishikai.com/新型コロナワクチン接種前後の抗体検査について/)
(2) 新型コロナウイルスワクチンによる抗体産生 〜東北メディカル・メガバンク機構コホート調査約3千人の調査より〜【プレスリリース】(URL:https://www.megabank.tohoku.ac.jp/news/47916)
(3) 3回目ワクチン接種後の中和抗体価は、接種前の34倍。 “習慣的な飲酒“が抗体価上昇を妨げる可能性も。(URL:https://www.iuhw.ac.jp/news-info/pdf/20220126.pdf)
(4) 新型コロナワクチンQ&A. ワクチンの接種前後に飲酒をしても問題ないでしょうか。(URL:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0087.html)
(5) McMahon BJ, et al. Am J Med. 1993 Dec;95(6):589-94.
(6) Namujju PB, et al. BMC Res Notes. 2014 Jul 11;7:445.
(7) MacKenzie J, et al. J Hyg (Lond). 1976 Dec;77(3):409-17.
(8) Zimmermann P, et al. Clin Microbiol Rev. 2019 Mar 13;32(2):e00084-18.