紫金山・アトラス彗星って何?見える方角・時間は?いつまで肉眼で見られる!?気象予報士解説
何百年、あるいは何千年や何万年に1度の周期で太陽系に近づく星、彗星のひとつが今、日本から肉眼で見える時期に入っています。
紫金山・アトラス彗星という彗星(すいせい・ほうきぼし)が現在、地球に接近していて、日本など北半球では肉眼で彗星が見られるのは27年ぶりのこと。
紫金山・アトラス彗星とはそもそも何なのか、見られる方角と時間帯は?そしていつまで見ることができるのか…??
気象予報士そして星空準案内人の資格も持つ筆者が解説します。
【目次】
・そもそも彗星とは?
・なぜこんな名前に?どう読むの??
・見える方角・時間帯は
・いつまで見られる?もっとも見やすい日は??
・おまけ:紫金山・アトラス彗星はもう戻って来ない
そもそも彗星とは?
私たちの住む地球は「惑星」という星の仲間で、太陽の周りを円に近い軌道で回っています。地球のほか、火星や金星、海王星などもすべて惑星です。
一方、「彗星」は惑星と比べるとかなり大きな軌道を回っていて、しかも細長い楕円(ものによっては放物線など)の軌道になっています。そのため、数千年とか数万年といった長い年月に1度の頻度でしか、太陽や地球に近づきません。
また、彗星は太陽に近づくとその熱によって表面が崩壊し、進行方向後ろにガスや塵(ちり)を放出します。このガスや塵が尾のように長く延びる様子がほうきのようなので、ほうき星とも呼ばれるのです。
なぜこんな名前に?どう読むの??
紫金山・アトラス彗星という名前を見て、そもそも「紫金山・アトラス」って何!?と思った人も多いと思います。
彗星は発見した人や機関の名前が最大3つまでつけられることになっていて、今回の彗星は2023年に中国の紫金山天文台と南アフリカのアトラス望遠鏡によって発見されたため、「紫金山・アトラス彗星」となりました。
ちなみに「紫金山」の読み方としては、英語表記がTsuchinshanなのでニュースでは「ツーシンチャン」と読まれることもありますが、名前のもとになった紫金山天文台のことを国内ではこれまで「しきんざんてんもんだい」と言うことが多かったために「しきんざん」と読むこともあります。
見える方角・時間帯は
紫金山・アトラス彗星は日の入り後すぐの時間帯に、西の空に見えます。
同じ時間帯に、西南西の方角に金星が見え、星の観察に慣れていない人でもわかるくらい明るいので、金星を目印に探すのがおすすめ。
上図は東京を例に描かれていますが、国立天文台が提供するサイト「今日のほしぞら」に場所や日時を入力すると、金星だけでなく他の星との位置関係も見ることができ、さらに探しやすくなります。
いつまで見られる?もっとも見やすい日は??
紫金山・アトラス彗星は10月12日頃からすでに肉眼で見られる距離に入っていますが、15日頃までは空のかなり低いところに見えるため、地上の明かりなどの影響を受け、見つけるのは少し難しいかもしれません。
一方、10月16日頃からは見える高度がやや上がって、もっとも彗星が見やすい時期に。
地球から若干離れ始めるため明るさ(等級)は少し落ちますが、それでも空の暗い場所であればぼんやり見えそうです。肉眼で見えていなくても、見える方角を撮影してみると、スマホ(ナイトモード推奨)やコンパクトデジカメでも映っている可能性があります。
今のところ天気は、16日は曇りや雨のところがあるものの日本海側や北日本は夜には回復している予想で、17~18日にはより広い範囲で晴れ間がある見込みです。
ちなみに17日は満月で、しかも今年2024年でもっとも大きい「スーパームーン」。紫金山・アトラス彗星が西の空に見える日没直後の時間帯に、月は反対側の東に見えます。
その後も20日頃まで肉眼で見ることができ、望遠鏡や双眼鏡があれば31日頃まで見えそうです。
おまけ:紫金山・アトラス彗星はもう戻って来ない
彗星は前述の通り大きな楕円の軌道を描きながら太陽の周りを回っていることがお多く、たとえば27年前つまり1997年に接近したヘール・ボップ彗星は、数千年後にまた地球に近づくと計算されています。
紫金山・アトラス彗星は約8万年前にも地球に接近したと考えられているため、次また約8万年後にやって来るのか?と思いきや、今回の接近の際に惑星などの引力の影響を受けたことで、軌道がわずかに変化してしまいました。
そのため、今後は太陽系の外に出て行き、二度と戻って来ないと推測されているのです。
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※本記事に掲載している国立天文台提供の画像は、国立天文台の定める利用規約を守って使用しています。