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マイナス金利時代のお薦めは個人向け国債

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

1月29日の日銀の金融政策決定会合では追加緩和策としてマイナス金利付き量的・質的緩和を導入を決定した。これを受けて国債の利回りが低下し、リスク回避の動きも相まって2月9日に10年債利回りはついにゼロ%を下回り、マイナスとなった。

日銀による当座預金の一部へのマイナス金利適用は2月16日ではあるが、すでに預貯金金利が低下するなどの動きが出ている。メガバンクは定期預金の金利を年0.025%に引き下げており、ゆうちょ銀行も1か月~4年の定期貯金の金利を年0.025%に引き下げた。

日興アセットマネジメントは国債などで運用する投資信託のMMFについて日銀がマイナス金利を導入する前日の15日に繰り上げ償還すると発表した。MMFを巡っては資産運用会社の間で販売を停止する動きが相次いでいるが、元本割れを避けるために繰り上げ償還する動きも続くものと予想される。

日銀のマイナス金利の導入の目的のひとつは、原油安や中国の景気減速などを背景としたリスク回避の動き、つまり円高株安の流れを止めることにあったとみられるが、日銀のマイナス金利導入発表後の円安株高の動きは一時的となり、むしろリスク回避の動きが加速する結果となっていた。

日銀のマイナス金利政策は金融機関へのポートフォリオリバランスを促し、貸し出しの増加を促すことが目的であろうが、これは個人の資産運用にもマイナス影響を与えかねない。もちろん住宅ローン金利の低下もあろうが、銀行にとってマイナス金利政策は利ざやの縮小となるため、貸出金利の低下には限度もある。

通常の国債利回りは10年債もマイナスとなってしまい、新型窓販での10年国債の販売も停止となった。しかし、ここまで金利が低下してしまったことで魅力的な商品が浮かび上がってきた。それは個人向け国債である。個人向け国債にはフロアーと呼ばれる最低金利が設けられている。それがプラス0.05%(税引き前)である。このため、2月募集債の3年物、5年物の個人向け国債の固定金利タイプの利率は0.05%であり、預貯金金利の倍となる。

さらに10年変動も初期利子は0.05%となるが、こちらは半年ごとに見直される。つまり何かのきっかけで長期金利が跳ね上がった際に半年のラグはあるが、それが利子に反映される仕組みになっている。個人向け国債は国の信用の裏付けがあり、1年経過すればいつでも現金化でき元本保証となっており、買入額に制限はない。リスク資産はどうもという方には、この個人向け国債の10年変動タイプをお薦めしたい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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