新労使協約でチーム格差が拡大?!年俸総額下位4チームがマックス・シャーザー個人の年俸を下回る驚愕事実
【新労使協約でチーム格差がさらに拡大】
3ヶ月以上に及ぶロックアウトの末、MLBと選手会が新しい労使協約に合意し、いよいよ2022年シーズンが開幕しようとしている。
ロックアウト解除後に各チームの戦力補強が急ピッチで進む中、ようやく大物FA選手たちの所属先も決定し、ほぼ全チームの戦力が整ったようだ。
今回の労使交渉で争点の1つだったぜいたく税制度に関しては、ほぼ選手会の主張が認められ、2021年は2億1000万ドルだった課税対象限度額が、今シーズンは2億3000万ドルまで引き上げられた。
その影響もあってか、潤沢な予算を抱えているチームは積極的な戦力補強を断行する一方で、マーケティング規模の小さいチームはほとんどFA市場に手を出すことがなく、チーム格差はさらに拡大してしまった感がある。
新しい労使協約では、低予算チームのタンキング(故意に戦力補強を控え翌年のドラフト上位指名権を獲得しようとする行為)を改善するため、上位ドラフト指名権をくじ引きにする制度を導入しているが、どうやら目立った効果を発揮できていないように見える。
【下位4チームの年俸総額はシャーザー投手の年俸以下】
プロリーグの年俸関連を専門に扱う『Spotrac』に掲載されている、現時点での各チームの年俸総額を比較してみると、チーム格差の傾向が如実に表れている。
ドジャース、メッツ、ヤンキースの上位3チームは、すでに課税対象限度額の2億3000万ドルを超えている一方で、オリオールズ、ガーディアンズ、パイレーツ、アスレチックスの下位4チームは、5000万ドルにも達しておらず、今オフにメッツと大型契約を結んだマックス・シャーザー投手の今シーズン年俸(約4300万ドル)すら下回っている状態だ
下位4チームに関しては、このオフにFA選手の補強をほとんどしておらず、昨シーズンより年俸総額を下げているほどだ。
ちなみに1位ドジャースの年俸総額(2億7480万8333ドル)は、最下位オリオールズの年俸総額(3107万1166ドル)の9倍近い額だ。これではリーグ全体の競技レベルを維持するのも困難になってくるだろう。
【プレーオフ進出率50%以上の12チーム中10チームがMLB平均以上の年俸総額】
もちろん年俸総額を上げれば、必ずチームが勝てるというわけではない。
レイズが直近3年間すべてでプレーオフ進出を果たしているように、低予算チームでも十分に戦える例がある。レイズの今シーズン年俸総額も7692万2813ドルで、24位に止まっている。
ただ十分な予算を用意し、しっかり戦力補強したチームの方が有利であることに変わりはない。
MLBのデータを専門に扱う『Fangraphs』が発表している、今シーズンの「Playoff Odds(プレーオフ進出予想)」によれば、プレーオフ進出率が50%を超えているチームが12チーム存在し、そのうち10チームがMLB平均以上の年俸総額を使っている。逆に平均以下は、ブルワーズ(17位)とレイズのみだ。
特に前述の年俸総額で上位3チームのプレーオフ進出率をみると、ドジャースが95.1%、メッツが74.1%、ヤンキースが83.7%──と、いずれも高いのが分かるだろう(プレーオフ進出率はすべて3月29日時点の数値)。
【年俸総額上位チームの中でダントツでコスパが悪いエンジェルス】
一方である程度の年俸総額をかけながら、プレーオフ進出率が低いチームも存在している。その典型がエンジェルスだ。
エンジェルスの年俸総額は1億6858万8094ドルで全体の9位なのだが、プレーオフ進出率は38.6%に止まっている。ちなみに年俸総額トップ10のチームで、プレーオフ進出率が50%を下回っているチームはエンジェルスしかいない。
以前から指摘されてきことだが、マイク・トラウト選手、アンソニー・レンドン選手の長期高額年俸契約選手の存在により、年俸総額が逼迫してしまい、バランスのよい選手補強ができてない状態が続いているためだ。いわゆるコストパフォーマンスがかなり悪いといえるだろう。
また今オフはコーリー・シーガー選手、マーカス・セミエン選手を獲得し、FA市場で総額5億8000万ドルを投資したレンジャーズは、年俸総額が昨シーズンの20位から14位まで上昇しているが、プレーオフ進出率は6.1%でしかない。
プレーオフ進出率がすべてではないが、エンジェルスをはじめ突出した予算を使えないチームからすれば、無駄なく効率よく戦力を揃えられるかが、チームの成否を分けることになる。とにかくシーズン開幕が待ち遠しい。