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公園で水道の蛇口に尻をこすりつけて逮捕の男 驚きの動機と器物損壊で逮捕のワケ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

 4月1日未明に東京都内の公園で尻を出し、水道の蛇口にこすりつけたとして、56歳の自営業の男が器物損壊罪で逮捕された。「性欲を満たすためだった」などと供述し、容疑を認めているという。

 男は双眼鏡で周囲に人がいないことを確認した上で犯行に及んでいたが、40分後の午前3時頃に公園近くの路上で下半身裸のまま自転車に乗っていたところを警察官に見つかり、公然わいせつ罪で現行犯逮捕された。

 警察が男の携帯電話を調べると、男が下半身を丸出しにした状態で水道の蛇口に尻をこすりつけている複数の自撮り画像があったため、4月4日に冒頭で挙げた容疑による再逮捕に至った。

器物損壊で逮捕のワケ

 とはいえ、男は蛇口を壊したわけではない。では、なぜ適用された罪名が器物損壊罪なのかというと、器物損壊の「損壊」とは、物理的な破壊に限らず、その物の効用を害する一切の行為を意味するからだ。心理的に使用できなくさせたり、その物が本来持っている価値を低下させたりすることも含まれる。

 今回の事件の場合、男が蛇口にこすりつけていたのは尻といっても「肛門」の部分だった。公園側は衛生面などの観点から一時的に使用を禁止し、部品交換も余儀なくされている。器物損壊罪にあたることは間違いない。

 料理店の食器に放尿した行為について、消毒すれば再利用できるとはいえ、そうした食器など誰も使いたがらないから、器物損壊罪の「損壊」にあたるとされた判例もある。

 公然わいせつ罪は最高で懲役6か月であるのに対し、器物損壊罪だと最高で懲役3年だから、後者のほうが罪が重い。ただし、後者は親告罪なので、被害弁償を行って公園側と示談がまとまり、捜査段階で告訴が取り消されたら起訴できない。実害がなかった公然わいせつ罪と併せ、不起訴で終わるという展開も考えられる。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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