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8月3日決勝戦を前に 『第28回全国高等学校女子硬式野球選手権大会 準々決勝』ダイジェスト 前編

中川路里香フリーランスライター
接戦の末、勝利した花巻東の菅澤陽向、平尾美空乃バッテリーは抱き合って喜んだ

 第28回全国高等学校女子硬式野球選手権大会は、8月3日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で決勝戦が行われる。対戦カードは、神戸弘陵-花巻東。決戦を前に、その2校が勝ち上がってきた準々決勝の模様と選手らのコメントをお送りする。
 準々決勝は、7月26日につかさグループいちじま球場(兵庫県丹波市)で行われた。いずれも名勝負の4試合となった。

◆7月26日 準々決勝 結果

東海大翔洋 6-0秀岳館 、花巻東 5-3埼玉栄 、神戸弘陵 7-0 佐久長聖 、履正社 2-1クラーク記念国際

◆第一試合は、序盤から主導権を握った東海大翔洋が勝利

 東海大翔洋(静岡)は、秀岳館(熊本)先発の三好紗香(3年)の立ち上がりを攻め、序盤に3点を奪うと、相手が継投後も中押し、ダメ押しと着実に点を重ね勝負を決めた。東海大翔洋打線の鍵を握る1番・井戸穂香(3年)が、5打数5安打、2打点、2盗塁と大暴れ。5安打のうち2本は三塁打と、次戦に勢いを持ち越す活躍を見せた。投げては、1年生投手、石野七星が完投し、被安打3、9奪三振と好投し、相手打線を寄せつけなかった。
 ユース、センバツでの対戦で一度も勝てていなかった秀岳館は、今度こその思いだったが、またしても勝利をおさめることはできなかった。

着実に得点を重ね、東海大翔洋応援スタンドは一層活気づいていた
着実に得点を重ね、東海大翔洋応援スタンドは一層活気づいていた

「センバツ準優勝はまぐれではなかったと証明できた」東海大翔洋・弓桁義雄監督談話

 「2回戦を終えた時点で、どうすれば勝てるのかを自分たちで考えながら戦えるチームに変わった。やっと春までのチームを超えられたと思いました。(逆転サヨナラ勝ちした)3回戦の福知山成美戦での最後まで戦う姿勢が、今日の勝利ももたらしたのでしょう。この勝利で、センバツ準優勝がまぐれでなかったということを証明できたと思います。
 石野は、経験が浅い分、チームに勢いをもたらしてくれる存在。自分からインコースを攻めると言えるところや、何事にも動じない肝の据わったところが強み。チームに新しい活力をもたらしてくれています。井戸の調子が上がってきているのも好材料。一戦でも長くあの子たちと一緒に野球がしたいので、次戦もうまく持ち味を活かしてがんばります」

「絶対に最後まで悔いなく戦いたい」東海大翔洋・井戸穂花

 「センバツでの秀岳館戦では1本もヒットが打てなかったので、ファーストストライクからどんどん振って行こうと決めていました。大会前に監督から『全然、積極性がないよ』と言われていたこともあったので、そこを特に心がけました。次は、甲子園での決勝もかかった試合なので、最後まで悔いのないよう戦いたいです」

5打数5安打と当たりが止まらず、らしさが際立った東海大翔洋・井戸穂花選手
5打数5安打と当たりが止まらず、らしさが際立った東海大翔洋・井戸穂花選手

「上級生と野球ができて嬉しい」東海大翔洋・石田七星

 「自分の持ち味は、右左関係なく、インコースを投げきれるところ。今日もそういう攻めた投球ができました。ほかにもアウトコースでも三振を奪えたので、良かったと思います。先発を言われたのは試合前でしたが、特に緊張しませんでした。むしろ上級生と野球ができて嬉しいです」

強気なピッチングが持ち味の東海大翔洋・1年生の石野七星投手
強気なピッチングが持ち味の東海大翔洋・1年生の石野七星投手


「勢いを止められなかった」秀岳館・柏田大貴監督の談話

 「打力があるチームだとわかっていたし、前日の3回戦で翔洋さんはサヨナラ勝ちしていたので、勢いづかせると怖いと思っていた。まず初回を無失点におさえたらうちに流れがくると踏んでいたが、それができなかった。選手たちに『勢いに乗せちゃいけないよ』と伝えたのが、かえって意識させてしまったのかもしれない」。チームは2年連続でベスト8に進出した。「誰かのミスを全員でカバーできるチームに成長したことが要因かなと思います。新チームには、今日の試合で最後に投げた竹下(瑞紗・2年)をはじめ、期待できるピッチャーがいるので、今年の成績を越えられるよう成長していって欲しい」

秀岳館・北里果音主将の談話

 「初回に点を取られてしまい、みんなからの声が少なくなってしまいました。それでも中盤くらいに、全員で盛り上がっていこうと話したりもして勢いづくかなと思いましたが、結局、そうなりませんでした。悔しいです」。そんな中でも主将らしく「打たれてもいいから、どんどんストライクを投げていこう」と、最後までチームを鼓舞した。この仲間たちと野球ができるのもこの日が最後。「一年間、ついて来てくれてありがとうと伝えたいです」。

野手陣や投手へ懸命に声をかける秀岳館・北里果音主将
野手陣や投手へ懸命に声をかける秀岳館・北里果音主将

◆第二試合は、小技を利かせて逆転、逃げ切った花巻東が勝利

 1点リードされて迎えた6回表、花巻東(岩手)は、1死二塁から6番・神山桃実(1年)の三塁打で同点とすると、7番・尾形ハル(3年)が2球目にサインの出たスクイズを成功させ、勝ち越しに成功。この回、さらに1点を加えてリード広げ、そのまま逃げ切った。先発の菅澤陽向(3年)は、味方打線の逆転を信じ、3失点しながら粘る投球を見せた。
 埼玉栄(埼玉)先発の吉岡凛(3年)は、調子が万全でないながらも4回を2失点で抑え、チームメイトにマウンドを託した。その後、チームは勝ち越したが、リードを守りきることができなかった。

6回表、花巻東は意表を突くスクイズで勝ち越しに成功した
6回表、花巻東は意表を突くスクイズで勝ち越しに成功した

花巻東・沼田尚志監督の談話

 「相手打線はしぶとく、選手たちにはずっと『我慢、我慢だよ』と言っていました。よく辛抱してくれました。菅澤については、初回の投球を見たとき、思ったほどボールが来てないと感じましたが、経験もあるし、この試合は菅澤にかけるしかないと思いました」
 チームは6回に同点に追いつき、スクイズで逆転。「あそこは絶対に追い越さないとダメな場面。確実に得点したかった。1球目にスクイズのサインを出さなかったのは、外されると思ったから。2球目も外されるのを覚悟でサインを出しましたが、外してこなかったので上手く決めることがでました」


菅澤を完投に導く好リードを見せた花巻東・平尾美空乃(3年)

 「どんどん打ってくるチームなので、コーナーを突くことと低めを意識してリードしていましたが、変化球が高めに浮き気味で、そこをとらえられました。前半は苦しいピッチングで『点を取られても取り返すから思い切って投げよう』と声を掛け続けました。逆転した後は低めに決まり始め、まっすぐも伸びてきたので、これでもう抑えられると思いました」


同点三塁打を放ち決勝点のホームを踏んだ花巻東・神山桃実

 「まっすぐが真ん中に入ってきたところを打ちました。狙い球を絞っていたというよりは、『絶対ここで打ってやる』という気持ちで、甘い球はどんどん振るつもりでした。スクイズが決まり自分がホームに帰ってきたときは、(逆転できたことに)鳥肌がすごかったです」

同点三塁打を放ち、次打者7番・尾形ハル選手のスクイズで勝ち越しの生還を果たした神山桃実選手
同点三塁打を放ち、次打者7番・尾形ハル選手のスクイズで勝ち越しの生還を果たした神山桃実選手

埼玉栄・池田健太郎監督の談話

 「吉岡の調子は良くはなかったが、投手陣の軸で人間性も抜群。大一番の勝負ということで、吉岡に懸けました。行けるところまで行って、あとは豊富な投手陣に託そうと。試合前に全投手でいくと伝えていたので、継投は予定通り。ただ、後手後手に回ってしまった部分もあった。6回は、打たれた云々ではなく、スクイズの場面での采配ミスです。1球目は外させたが、スクイズの素振りがなかったので、2球目はそのまま行かせたら決められてしまいました。いつもの花巻東さんなら仕掛けが早いので、1球目にないなら次もないと思ってしまった。そこに悔いが残っています。采配の差が出たのかなと思います」

序盤は接戦に持ち込んだ埼玉栄先発の吉岡凛投手
序盤は接戦に持ち込んだ埼玉栄先発の吉岡凛投手

(撮影はすべて筆者)

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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