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ナイキも反トランプ派? 30周年記念キャンペーンの顔に“あの男”を起用

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ナイキの30周年記念キャンペーンの“顔”に選ばれたコリン・キャパニック氏(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 米の複数メディアが現地3日に報じたところでは、ナイキが長年にわたり展開し、今年で30周年を迎える「just do it」キャンペーンの顔として、元NFL選手のコリン・キャパニック氏を選んだという。

 その第一報を報じたのは、ESPNのダレン・ロベル記者。同社サイトに記事を掲載するとともに、以下のようなツイートを投稿している。

 ロベル記者によれば、ナイキがキャパニック氏を選んだ理由は「コリンは現世代で人々に最も影響力があるアスリートの1人であり、世界を動かせるスポーツの力を行使できる人物だ」としている。同記者のツイートにはキャンペーン広告の画像が添付されているが、キャパニック氏の顔写真に「何かを信じろ。それがすべてを犠牲にすることを意味したとしても」というメッセージが添えられている。

 確かにキャパニック氏は現役時代にNFL界に大きな浪を巻き起こしている。昨年ドナルド・トランプ大統領が試合前の国歌斉唱時に片膝をつくNFL選手が存在することに猛批判を展開し、NFLを飛び越え他のアスリートを巻き込んだ一大抗争にまで発展していたが、そもそも国内の人種問題への抗議を表明するため片膝をつく行為を最初に実施したのが2016年シーズンに49ersに在籍していたキャパニック氏その人だった。

 しかもNFLの国歌斉唱問題は今なお解決できていない。NFLは今シーズンを迎えるに当たり、選手たちは「国歌斉唱時は全員起立すること」とする一方で、「ロッカールームで待機しても構わない」という新ルールを策定したが、このルールをオーナー会議が単独で決定したとし、選手会が反発。いまだ両者の間で合意できおらず、現在も片膝をつく行為を続けている選手が存在している。もちろんトランプ大統領は「片膝をつく行為は国、国旗、軍人を侮辱するもの」と対決姿勢を崩していない。

 そんな中でナイキが同社最大のキャンペーンの象徴として、国歌斉唱問題の発端ともいうべきキャパニック氏を採用したのだ。しかもキャンペーンの顔にはキャパニック氏以外にも5人のアスリートが選ばれているのだが、その中に先日トランプ大統領が侮辱的ツイートを投稿して騒ぎになったレブロン・ジェームス選手が含まれているのだ。ジェームス選手もこれまで公の場でトランプ大統領の批判を繰り返している人物だ。果たしてそこに政治的意図はないのだろうか。

 これまでも自分に反旗を翻したと思えば、次々に容赦ない攻撃を加えてきたトランプ大統領だけに、今後大統領の批判の矢がナイキにも向かうことになるのか、注目を集めるところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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