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<ガンバ大阪>アディショナルタイムに食野亮太郎がゴールを奪い、劇的な白星を掴む。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

MF倉田秋が出場停止の状況で迎えた湘南ベルマーレ戦。0−0で迎えた後半、スタートからMF遠藤保仁を投入したガンバは、高い位置でボールを動かせることが増え、ほとんどの時間を相手陣内でゲームを進める。だが、湘南の守備も固く、なかなかゴールチャンスを見出せない。その状況を覆そうと、73分にはアデミウソンに代えて食野亮太郎を、90分には高江麗央に代えて渡邉千真を投入。すると3分間のアディショナルタイムに突入した直後に食野が左サイドからドリブルで仕掛け、ゴールを奪う。これが決勝点となりリーグ戦では4試合ぶりとなる白星を掴み取った。試合後のガンバ監督、選手のコメントをお届けする。

●宮本恒靖監督

ー倉田選手が出場停止の中、福田選手をインサイドハーフに起用しました。その狙いと、後半、彼から遠藤選手にスイッチしましたが、彼を投入することでどういう変化を期待したのか、聞かせてください。

湧矢(福田)に関しては攻守において、運動量豊富に、ピッチをカバーできるというところと、相手からプレッシャーを受けても臆することなく、中盤でボールをおさめられるというところ。またここ数試合のリーグ戦のパフォーマンスを見て、自信を持って使えると考えて、起用しました。もちろん、後半も続けて彼を起用するアイデアもありましたがイエローカードをもらっていたので、試合展開を考えて、カウンターを受けそうなシーンもあるかもしれないということで交代しました。それと同じ理由で遠藤の起用を考えたのですが、こちらがボールを持ちながらも、少し相手を引きつけてからボールを動かすとか、深いところに入っていった時のリズムの変化だったり、を期待して起用しました。

ー食野選手がゴールを決めましたが率直な評価を聞かせていただきたいのと、ジョーカー的な起用の方が活かせる、と思っての途中出場だったのでしょうか。

評価に関しては期待通りというか、相手が人数をかけて守ってくる、ペナルティエリアの狭いスペースでボールを受けて、シュートまで持ち込むシーンを作るという指示を与えましたし、そういうプレーをしてくれた結果の得点ということで非常に評価できると思います。彼も少し持ちすぎたかなと言っていましたが、ああいう形でゴール前にもっていけたのは成長を感じるところです。ジョーカー的というよりも、アデミウソンも直近のルヴァンカップのプレーオフで点を取っていますし、調子のいい選手が試合に出るというのがあるというか、今はそういう競争があるチーム状態ですし、そこで今日は亮太郎が得点を取ったことで、良太郎が点を取ったことでポジション争いというのはまた出てくるかなっていうのは思います。スタメンで使ってもジョーカーで使っても、同じように良さがでるような精神状態に今の彼はあるんじゃなかと思っています。

ー前節に引き続き、無失点で終えた守備の評価を聞かせてください。

完璧な守備ができる試合はないと思いますが、相手にチャンスを作られたとしても最後の最後、体を投げ出したり、なんとか体に当てたり、粘り強い守備というのが今シーズンの初めはできなかったところなので、この1ヶ月、セレッソ大阪戦から今のシステムに変えてやっていますが、少しずつ浸透してきているように思います。

●MF矢島慎也

湘南というチームカラー的にも前からきたいんだろうなっていうのは予想していて、1トップ2シャドーで磐田と同じようなハメ方をしてくるんだろうなっていうのは思っていました。ただ、この間の磐田戦はそれをもろに食らって、前半の30分くらいまで苦しんだので、今日は相手の1トップを僕と弦太(三浦)で挟み込むような感じで落ち着かせて、麗央(高江)と湧矢(福田)を絞らせて相手がこれないように、っていうことを考えてやっていました。うまくいったところと、ハメられてしまったシーンもあったんですけど、そこで結構相手を疲れさせたことで、後半相手は出てこれなかったし、最後は亮太郎(食野)が質を見せてくれて良かった。(後半に入るにあたって遠藤選手と何かを確認をしていましたが、どんな話だったのですか?)ヤットさん(遠藤保仁)が入ることによって、僕のやっていることをヤットさんができるのは当然だし、ヤットさんもわかっているので、もう少し僕と、麗央とヤットさんで距離を近く、ということも言っていたし、テンポよくボールが回ってくる中で、自分がいいところにいれば入ってくるし、裏をとったら出てくるし、っていう展開になった。あそこでヤットさんがいてくれることでいろんな質のボールが出てくるので、それが後押しとなって、後半は押せ押せな感じになったんだと思います。(矢島選手が1つ高いところでボールを触れることで、相手の状況もありますが、深いところでボールが動かせるようになった印象もありました)そうですね。それも前半あっての後半だと思うし、欲を言えば前半からそういうプレーをもっと増やせたら得点の機会ももっと増えると思うし、守備がしっかり安定してきている中で、得点はなかなか入っていないですけど、もっとゴールの前にもっと入り込むシーンがあれば得点のチャンスも増えるだろうなって思います。(率直にリーグ戦は4試合ぶりの白星で、矢島選手も出始めた中で勝ちがついてくるようにならなければという思いも強かったと思います。率直に勝てたということに対しての気持ちを聞かせてください)負けていなかったという状況はあったし、ルヴァンカップのV・ファーレン長崎戦で勝っていい流れでここまできて、今日も勝てたので。やっぱり負けないことも大事だと思うし、ここで勝ち切ったのも大きいし、それが亮太郎だったのもこのチームにとっては大きいと思います。ただ、ここから上に這い上がっていくためにはもっと勝つ試合を増やしていかなければいけない。そのためにも、一人一人の成長とチームの成長が大事になってくると思う。今日は亮太郎がみせてくれたので、次は麗央とか僕とか、湧矢とか弦太もそうですけど、見せていかなきゃいけないと思います。

●MF福田湧矢

(インサイドハーフでの出場は久しぶりですよね)そうですね。高校生ぶり、くらいですね。慎也くん(矢島)からのボールをうまく、ギャップで受けるっていうことは意識していたんですけど、2〜3回くらいしかそのシーンをつくれなかったので、出来はあまりよくなかったなっていう印象です。(守備の戻りも考えながらになる中で攻撃のバランスをとりあぐねているかなという印象もありましたが)そうですね。このポジションを言われたのが結構急で…それでも秋くん(倉田)のポジションを見ていたので、ある程度はイメージできていたんですけど、実際にやってみて、改めてあの人のすごさを思い知りました。(監督はここ数試合のパフォーマンスを踏まえてそこで使った、と。ある意味、ポジションを変えてまで使われるという信頼は大きなものだと思いますが)後半までやりたかったというのが本音というか…今は後半からが楽しくなるサッカーなので。相手のスペースがあいてきて、みたいな。ただイエローをもらったし、次ももう1つファウルしちゃったので、覚悟はしていました。たぶん次のファウルでもう一枚カードが出てしまうはずだったし、変えられて当然かなっていうのは思いました。(4試合ぶりの白星。出始めてから、負けていないけど、勝てていないという試合が多かった中で白星を掴めたことについて)ただ、負けてはいなかったし、結果だけを見たら(公式戦は)2勝3分で悪くないというか…勝てる試合はあっただけに余計に勝てなかったことは悔しいですけど、でもガンバはここから這い上がっていけるチームだと思うので。僕もまた1から頑張りたいです。

●FW食野亮太郎

(ゴールシーンを振り返って)あまりよく覚えていないですけど、でも90分すぎてアディショナルタイムに入っていて、相手も…タフなゲームだったので足がもつれているな、っていうのは一度切り返した時に感じたので、もう一回やってみようと思って仕掛けたら入りました。(途中で入るときは監督にはどういう声を掛けられましたか?)ゴール前まではボールを運べているからターンしてシュートとか、思い切ってやってこいということを言われました。(リーグ戦では3試合ぶりに先発を外れた。その悔しさも含めて結果への思いは強かったと思いますが)そうですね。やっぱりスタメンじゃなくて若干悔しい思いもありましたけど、そこはうまく気持ちを切り替えて、1点取れれば自分がヒーローになれる、と気持ちを切り替えられたのが良かったのかなと思います。(打つ瞬間はコースは見えていましたか?)いや、適当です(笑)。だいたいこのへんでドリブルをしているから、このへんに当てて、打ったら枠にいくだろう、くらいの感覚でシュートを打ったらうまいこと入ってくれました。(相手も密集していて、ドリブルで仕掛けても突っかかって、っていうシーンも多かった。それを見ていて、自分が入った時にはこうしよう、と考えていたことはありましたか?)まあ、外から見ていて「これは僕の得意な展開だな」とは感じていて、入ったら美味しいなと思っていました。ディフェンスラインとボランチの間が結構あいていたので、そこで受けて仕掛けられたらチャンスは作れるなと思っていたので、そこをうまく使えて、結果的にゴールに繋がって良かったです。(得意な展開、というのはこっちがボールを持っている展開という意味ですか?)それもありますし、ボールを持って押し込んで、相手も後ろ向きの選手にあまりプレッシャーをきていない展開で、ファーストタッチでパッと前を向いたら仕掛けられる展開だったので、僕はそういうところを得意としているので、入ったらそれをやろうと思っていました。(ゴールを決めたリーグ戦で2試合勝てていなくて、今日はようやく勝てた)やっとゴールが勝利に繋がって、なかなか繋がって来なかった中で今日は決められたというのは、しかもアディショナルタイムに劇的なゴールを決められたというのは嬉しかったです。(サポーターの皆さんがいる目の前でゴールを決められましたしね)どんなパフォーマンスをしたか覚えてないくらいで…多分ダサかったと思います(笑)。(チームとしても4試合ぶりの白星。守備も踏ん張った中での白星だったと思います)最近は失点が少なくて守備陣が、ヒガシくん(東口順昭)をはじめ体を張ってくれて、守ってくれていたので、その時に僕もスタメンで出ていたりしてすごく後ろに申し訳ない気持ちもあって、今日は何としてでも点を取って勝とうという気持ちでプレーしました。最初、ファーストタッチが浮ついてなかなかうまく生きませんでしたが、最後しっかりゴールにおさめられて良かったです。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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