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”完結”してもなおファンを熱狂させる『あぶない刑事』

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

映画+オーケストラ=シネマコンサートが人気。ドラマ+バンド=『あぶない刑事』のフィルムコンサートが大盛況

ここ数年、映画を観ながらオーケストラの演奏を楽しむ“シネマコンサート”が人気で、定着してきた。「生オケ・シネマ」は、新日本フィルハーモニー交響楽団の生演奏と、映画上映がコラボレーションしたもので、5月に開催された第1回目の作品は、今年で公開80周年を迎える、チャーリー・チャップリンが監督・制作・脚本・作曲を手がけた『モダン・タイムス』だった。チャップリンのギャグ、アクションと完全にシンクロした生演奏で、観客を魅了した。全世界で行われているハリー・ポッターフィルムコンサートシリーズ『ハリー・ポッターinコンサート』が8月に日本にも上陸し、東京・大阪・名古屋・福井の4都市で行われた。映画『ハリー・ポッターと賢者の石』の全編を、東京フィルハーモニー交響楽団の生演奏と共に楽しむもので、どの会場もカップルからファミリー層、熟年まで幅広い観客で盛況だった。

シネマコンサートがあるなら、ドラマコンサート、ドラマのフィルムコンサートはないものかと思っていたら、NHK大河ドラマ『真田丸』や、人気韓国ドラマのそれはあるものの、やはり数としては多くはない。そんなところに舞い込んできたのが『あぶない刑事 スペシャルフィルムコンサート』の情報だった。

完結編の映画、CDBOXのヒットを受け、フィルムコンサートを企画――30年前にテレビシリーズがスタートした記念日、10月5日に聖地・横浜にファン集結

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『あぶない刑事』はご存知、舘ひろし演じる鷹山敏樹(=タカ)と、柴田恭兵演じる大下勇次(=ユージ)が横浜・港警察署を舞台に繰り広げるアクション刑事ドラマで、二人のスタイリッシュなセリフ回しや、浅野温子、仲村トオル、木の実ナナ、中条静夫、ベンガル他個性的な共演者とのコメディチックなやりとりなど、それまでの刑事ドラマにはないテイストが人気となり、30年続く人気シリーズになった。

10月5日は、30年前に『あぶ刑事』のテレビシリーズが、日本テレビ系で放送開始された日で、そんな節目の年、日に『「あぶない刑事」 スペシャルフィルムコンサート』が開催された。舞台は港署と同じ、横浜は神奈川県民ホール。コンサートのために編集されたテレビシリーズの名場面を観ながら、歴代のサントラ盤に収録された音楽を、豪華ミュージシャンとゲストボーカリストが生で演奏、歌い、それを楽しむというスタイル。主役の二人が登場しないにも関わらず、客席は満席。改めて『あぶ刑事』の人気の凄さを実感した。

映像ナビゲーションとして町田透役の仲村トオルが映像出演し、撮影裏話などを織り交ぜながら、コンサートを映像の中から進行していった。

10枚組BOX『あぶない刑事 ORIGINAL ALBUM COMPLETE』
10枚組BOX『あぶない刑事 ORIGINAL ALBUM COMPLETE』

今年1月30日、30年間続いたシリーズの最終作ということで映画『さらば あぶない刑事』(東映系)が公開され、興行収入が18億円を超えるヒットになり、その流れの中で、4月6日には、これまでのオリジナルアルバムをレーベルの枠を超えて、完全復刻収録した10枚組CDBOX『あぶない刑事 ORIGINAL ALBUM COMPLETE』が発売された。10枚組で15,000円という価格をどう感じるかは人それぞれだが、リマスタリングが施され、Blue-spec2仕様の高音質CD10枚組は、5,000セットを超える売り上げになり、大ヒット。映画の好調さもあって、関係者の間でこのフィルムコンサートの企画が持ち上がったという。

クオリティの高い音楽だからこそ実現した企画。名うてのミュージシャンの演奏と、鈴木聖美、小比類巻かほる、佐藤竹善、A-miの歌で名曲の数々を再現

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「あぶ刑事」の劇中で使用されていた音楽は、インストものだけではなく、英語のボーカルものが使用されていて、これは当時のテレビドラマとしては珍しかった。しかもどの曲もクオリティが高くオシャレ、メロディが“立っている”ので耳なじみもよく、場面やセリフとリンクしているのはもちろんだが、“普通に”聴ける音楽なのだ。

そんなオシャレな音楽の数々を、生演奏で披露したバンドのバンマスは、映画『さらば あぶない刑事』のサントラを手がけた安部潤(key)。彼を中心に櫻井哲夫(B)、川口千里(Dr)、古川望(G) 、鈴木謙之(Key)ら名うてのミュージシャンが揃い、ホーンセクション、ストリングス、そして分厚いコーラスも入るスペシャルバンドが、ほぼ原曲のアレンジに近いアレンジで、1曲1曲丁寧かつ大胆に演奏し、素晴らしい音を弾きだしていた。音響の良さで有名な、神奈川県民ホールという空間がさらにイイ音に仕上げてくれていた。実力者揃いのバンドの中でも、最年少の注目の女子大生ドラマー・川口千里のプレイは圧巻だった。噂に違わぬテクニックと表現力で、自身が生まれる前の80年代、90年代の音を忠実に再現しながらも、瑞々しさも感じさせてくれ、バンド全体を引っ張っていた。世界レベルの実力の彼女のプレイを、今の時点で観ることができたことも収穫だった。

リハーサル風景
リハーサル風景

素晴らしいバンドの音をバックにゲストボーカルが、圧倒的な歌を聴かせてくれた。名シーンに名曲あり。鈴木聖美、小比類巻かほる、A-miエイミ(鎌田英子)、そして佐藤竹善(SING LIKE TALKING)、『あぶ刑事』の“歌モノ”を支えた名ボーカリストの共演に、客席からは大歓声が沸き起こっていた。主役二人のボーカルの音源も、生演奏に乗せて披露され、まるでその場で歌っているかのような臨場感があった。映像と音楽が完全にリンクして、ファンはあの時、あの時代に、瞬間的にプレイバックできる空間と時間を共有できたはずだ。

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『あぶ刑事』が30年という長い時間続けられたのは、やはりこだわりの強い、濃いファンに支えられてきたからこそだ。新たなシリーズ、映画を発表する度に、役者陣はもちろん、制作サイドもその内容、音楽には細部に渡って徹底的にこだわり、ファンの期待に応え続けてきたからこそ支持され続けてきた。今回のフィルムコンサートもそうだ。『あぶ刑事』を彩った名曲の数々を、耳が肥えたファンに満足してもらえるように、腕利きのミュージシャンを集め、オリジナルのボーカリストを呼び、“再現”と“進化”にこだわった。その結果、終演後も大きな拍手が鳴りやまなかった。

『あぶない刑事 NON STOP BEST』(10月5日発売)
『あぶない刑事 NON STOP BEST』(10月5日発売)

開演前も終演後も、ロビーに展示されていた映画『さらば あぶない刑事』で舘と柴田が着用した衣装、二人の等身大パネル、歴代のポスターの前では撮影するファンの行列ができ、”タカ”と”ユージ”のコスプレをしているファンもいた。またこの日に合わせてリリースされた、日本のテレビドラマのサントラCDとしては初のノンストップ企画『あぶない刑事 NON STOP BEST』が、会場販売で300枚以上売れ、大きな反響があった。

個性派揃いの役者陣の演技、素晴らしい脚本、制作陣のこだわりと情熱等、30年間『あぶ刑事』という“ブランド”を守ることができた理由は、それら濃いものがひとつの大きな力になったからで、素晴らしい音楽も、そこに大きく貢献していることを再認識させてくれた“ライヴ”だった。この”ライヴ”は10月28日大阪でも開催される(森ノ宮ピロティホール)。

『「あぶない刑事」スペシャルフィルムコンサート』特設サイト

『あぶない刑事 NON STOP BEST』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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