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日本代表が本拠地で快勝も指揮官は「課題は山積み」。真意は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
フィールド上でインタビューに応じるジョーンズ(写真提供=JRFU)

 現体制にとって、本境地でのテストマッチ(代表戦)初白星となった。

 ラグビー日本代表は9月7日、埼玉・熊谷ラグビー場でのパシフィック・ネーションズカップの予選プール2戦目でアメリカ代表に41―24で勝った。

 エディー・ジョーンズヘッドコーチが約9年ぶりに復帰してから非テストマッチを含め7戦を実施している。この大会では、テストマッチ初勝利を挙げたカナダ代表戦(現地時間8月25日/バンクーバー/〇55―28)に続き2連勝中。予選プールBで首位に立ち、14日からのファイナルシリーズでは15日の準決勝に挑むが、指揮官は「課題は山積み」とも話した。

 真意は。

 立川理道主将と会見した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「アメリカ代表は我々のようにとても若いチームでありますが、アメリカ代表のラグビーというのはとても伸びている点があると実感しました。

 前回のラグビーワールドカップは生憎ながら出場できなかったものの、現在のヘッドコーチの方がとても良い形でチームをまとめていて、とても良い姿勢で試合に取り組んでいたということが手に取るようにわかりました。

 我々としては現状 PNCを望んでいた形で勝ち進むことができていると思ってはいます。もちろんまだまだ修正しなければいけない点もありますし、課題も山積みではありますが、今回の試合に関しては 9 番の藤原、そして 10 番の李がとてもいいプレーをして、我々をさらに一歩前に進めることを手助けしてくれたと実感しています。

 次回は準決勝です。おそらく相手はサモア代表になると思います。とても楽しみにしています」

――冒頭で「課題は山積み」。例えば。

「本日、試合前から、この試合がどう進むのかといったような展開に関して、頭の中で少し予想していたところはありました。カナダ代表戦では流れに乗って、エネルギッシュにボールを確実に動かしながら、試合を進めることができました。あのような試合をした後というのは、どうしても『また同じことがすぐにできる』と思いがちになってしまいます。

(そのためか)本日の試合においては、相手にボールを簡単に渡しすぎてしまった面が多く見られてしまったと思います(自陣で展開を試みて落球するシーンもあった)。

 しかしながら、そういった状況の中でもプレイヤーが順をアダプトできたといったところは評価をしたと思っています。それほどボールを動かさず、ダイレクトなプレー、ハードなキャリー(突進)を心がけた。そうしてボールが滑ることにうまく順応ができていたと思っています。こういったプレイヤーの順応力を、本日は評価をしたいと思っています」

 この日の日本代表は、蒸し暑いグラウンド状況にあって簡潔なプレー選択も意識したか。ボックスキック、バックスペースへのキックも巧みに活用した。その判断に藤原、李が絡んでいたこともあり、ジョーンズは司令塔を高く評価していたのだろうか。

 もっとも「山積み」の「課題」について指揮官はさらに続ける。

「また、今後の課題についてはモールディフェンスが挙げられると思います。ここに関しては相手に簡単に失点をすぐに許していた(前半30、後半11分の失トライのきっかけになった)。次回の試合へ、ここをキーポイントとして取り組んでいきたいです」

 この日の日本代表は『超速ラグビー』というコンセプトを体現する複層的なアタックに防御の裏側へのキック、直近で整備したというダブルタックルを軸にした防御がさえた。もっとも、エラーや反則による停滞やモールへの守りに課題を残した。

 ジョーンズは、ゲームの動きを一定の予想に沿ったものだとしながら検討課題を抽出していた。

 試合の流れと言えば、重要局面のひとつが後半20分頃にあった。

 その約6分前に自軍スクラムで反則を取られ、自陣ゴール前で攻め続けられた挙句にトライを取られていた。直後もゴール成功。一時大量リードの日本代表は、この失点で31―24と7点差に迫られた。

 残り時間をどう過ごすか。スタンドオフで途中出場していた主将の立川は、円陣で穏やかな顔つきで訓示。その次のキックオフで首尾よくボールを確保し、得意の連続攻撃でアメリカ代表の反則を誘った。

 スタンドオフから李承信のペナルティーゴールで34―24と10点差にし、危険水域を脱した。

 その後はアメリカ代表のセットプレーにエラーがかさんだのもあり、日本代表は得点機を手繰り寄せた。だめを押し続ける形で向こうを寄り切った。

 試合の潮流を取り戻すきっかけとなった円陣について、立川は「ああいうプレッシャーがかかるところで自分たちにプレッシャーかけるんではなくて、しっかり相手にプレッシャーかけるというマインドセットを全員に伝えることはできた。ああいう状況で一番大事なのは『何をしなければいけないのか』で全員が同じ絵を見ることが大事。シンプルなメッセージで(意思統一できた)」と述懐。ジョーンズはこうだ。

「我々が(キャリア組の辞退や休養もあって)とても若いチームであると考えたうえでとても大切な部分ですが、こういったテストマッチでは勝つ局面というのをひとつのみならず、ふたつ、みっつと積み重ねないといけない。

 その意味でハルの指示、ひとつにまとめるというところは、とても大事だと思います。これによって次のステージに進むことができますし、それぞれの局面に順応することができる。

 最後の 20 分間プレッシャーがかかっていたなかで、アタックをし続けられたところも、評価をしたいと思っています。選手全員で落ち着きながら、エネルギーを上げられた。また、特に本日はベンチから出できたフィニッシャーのことをとても評価したい」

 問題点を精査しながらも、前向きな談話でまとめるのが印象的だった。ちなみに故障で途中退場した坂手淳史ゲーム主将、ジョネ・ナイカブラについては、「(試合日の)翌日、MRI検査をする。いまどうするかを語るのは時期尚早」とジョーンズ。15日、東京・秩父宮ラグビー場でサモア代表とぶつかる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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