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リブゴルフは第4戦の初日を終え、突然「明日から選手の短パン着用OK」を発表。SNSは賛否両論の嵐。

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
これまでも練習ラウンドとプロアマ戦は短パンOKだったが、「試合でもOK」と発表(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 リブゴルフは今週、米マサチューセッツのボストン郊外で第4戦(9月2日~4日)を開催している。その初日終了後、リブゴルフを率いるグレッグ・ノーマンがツイッターでこんな発表をした。

 「リブゴルフのプレーヤーは明日から試合で短パンを着用します。これは公式発表です」

 ノーマン自身が登場し、彼の肉声で直接伝える動画。長いパンツ姿でコース上に立っているノーマンが、飛び跳ねた途端、短パン姿に早変わりする「変身」を披露しつつ、この発表を伝える仕掛けのツイートが発信されるやいなや、SNSでは賛否両論が押し寄せている。

【パンツ事情の経緯】

 「男子選手の長いパンツ着用」は、プロゴルフ界における長年の、世界共通の決めごとだった。

 PGAツアーでは、キャディの短パン着用に関しては1999年以降は試合でも許可してきたが、選手はあくまでも「長いパンツを着用すべし」とされてきた。

 そんな長年の慣習に最初にモノ申したのは北アイルランド出身で全英オープン覇者のダレン・クラークだった。

 2016年にマレーシアで開催された「欧州チームVSアジアチーム」のユーロアジアカップの際、欧州キャプテンだったクラークは、東南アジアの蒸し暑さに不慣れな欧州チームのメンバーたちの健康状態を気遣い、「せめて練習ラウンドだけでも選手の短パン着用を許可してほしい」と懇願したところ、欧州ツアー(現DPワールドツアー)が異例の「OK」を出した。

 それは、練習日とはいえ、プロゴルフ界において選手が「人前」で短パン姿を披露した初の事例として、世界のゴルフ界を駆け抜けるほどのビッグニュースになった。選手たちは「とても快適」「いつも短パンOKになればいいのに」と絶賛した。

 その成功例は、その後、欧州ツアーの大会へと波及。「短パンOKは素晴らしい」という欧州ツアー選手たちの声は、やがて世界選手権シリーズやPGAツアーにも波及。そして、ついに2019年2月のメキシコ選手権で、練習日とプロアマにおける選手の短パン着用が許可された。

 それは、PGAツアーの試合会場を選手が短パン姿で闊歩した史上初の事例となった。その後は、2019年の全英オープンを皮切りにメジャー大会でも練習日の選手の短パン着用が認められるなど、男子プロゴルフ界における「パンツ事情」は徐々に変化を遂げてきた。

【選手の試合における短パン着用は?】

 とはいえ、選手の試合における短パン着用はなかなか認められなかった。だが、2019年11月に南アフリカで開催された欧州ツアーのアルフレッド・ダンヒル・チャンピオンシップが選手の試合における短パン着用が許可された史上初の例となり、大きな話題になった。

 しかし、PGAツアーやDPワールドツアーでは、いまなお選手の試合における短パン着用は認められていない。「伝統や慣習より、選手の健康を優先すべき」といった声は上がり続けており、議論が重ねられているものの、いまなおNGとされている。

 SNSに押し寄せている賛否の「賛」は、「ようやく選手が肉体的に救われる」「すばらしい決定」「前例も歴史も勇気を出して作り出すもの」といった内容が多い。

 逆に「賛否」の「否」は、「ゴルフ界の伝統を軽々しく変えるな」「ゴルフ界の歴史や伝統を崩壊させるな」といったものが多いが、中には「どうせリブゴルフは単なるエキシビションなのだから、短パンだろうが、何だろうが、どうでもいい」という突き放した見方もある。

 選手の健康を何より優先すべきであることは当然であり、PGAツアーでは議論が遅々として進まなかった「選手の試合における短パン着用の可否」が、リブゴルフであっという間に「可」と決定・発表されたことは、ある意味、前進なのかもしれない。

 だが、リブゴルフの独断・独走が「ゴルフ界の歴史や伝統を崩壊させる」という指摘には、それはそれで頷かされる。そして、秋の気配がする9月のボストンで、初日終了後に突然、短パンOKを発表し、2日目からいきなり実施というあたりの唐突感には首を傾げさせられる。

 短パン着用の是非や可否より、PGAツアーに先行すること、先手を打つことが優先された末の決定だったのか――。

 各方面で物議を醸し、さらなる騒動になりそうである。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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