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米でアニメ業界が活況!NYアニメ展で見た「クランチロール急成長」 映画上映会にもファン集結

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
コスプレした「アニメNYC」の来場者。(c)Kasumi Abe

ニューヨーク各所でこの週末、アニメ関連のコンベンションや映画の上映会が催され、多くのファンがアニメ、漫画、コスプレなど日本のサブカルチャーを楽しんだ。

11月17日から3日間の日程で行われた毎年恒例の一大コンベンション、AnimeNYC(アニメNYC)では200以上の企業が出展し、自社サービスをアメリカ市場に向けアピールした。会場のジャヴィッツ・センターでは、VTuberの星街すいせいが全米初ライブを行ったほか、日本のクリエイターを交えたパネルディスカッションなどが行われ、さまざまなキャラクターに変身したアニメファンが各所で楽しむ姿が見られた。

主催者発表では4万人分の入場チケットはすべてソールドアウトしたという。(c)Kasumi Abe
主催者発表では4万人分の入場チケットはすべてソールドアウトしたという。(c)Kasumi Abe

米・アニメ業界が活況

アメリカではアニメ業界が活況だ。以前からアニメブームはあったが近年はさらに爆発的な人気となっている。この背景にはコロナ禍となった2020年以降、ステイホームが増えたことがある。おうち時間により幅広い層の人々がストリーミングサービスを利用するようになり、多くの人がアニメを観るようになったのだ。

またこのアニメブームは、近年、一時衰退していたリアル書店の復活劇も後押しするほどの力を及ぼしている。

会場で感じたのは、アニメ文化が若者にもたらす社会現象だ。来場者の多くはコスプレすることで「自分ではない誰かになりたい」欲を満たしているようだ。日本のハロウィンがここ数年でコスプレ大会の様相になっているが、アメリカの人もこのようなアニメイベントで仲間と楽しく「変身願望」を満たしている。

(c)Kasumi Abe
(c)Kasumi Abe

さて、アニメ市場の成長ぶりについて。筆者は今年のアニメNYCで、はっきりと見て取れた。

数々のアニメ関連企業がブースを出す中、特筆すべきはアニメのストリーミングサイト大手、米クランチロール(crunchyroll)の飛躍だ。同社は毎年このイベントにブースを出展する常連企業だが、年々ブースの規模は大きくなっており、昨年はアニメ事業の大手ファニメーションと経営統合しさらにパワーアップした。それを象徴するように、今年はなんとアニメNYCで1ブースではなく「1フロア丸ごと」を同社が占拠したのだった。ここでファン向けにさまざまなイベントを行い、ライブ会場まで設置して、PR活動に精を出していた。

(c)Kasumi Abe
(c)Kasumi Abe

IT系メディアのCNETによると、クランチロールのサブスクライバー(登録会員)は1億人を超えている。また月額8ドル(約1180円)からの有料会員も昨年末までに1,000万人を超える進撃ぶりだ。

統計調査企業のスタティスタの発表でも、特に2018年以降に会員数が増えたようで、急成長してきたことがわかる。

アニメ文化の勢いを感じたのは、このコンベンションだけではない。同じ週末、ニューヨークでは上記イベントとは別に、2夜連続で日本のアニメ映画の上映も行われた。この上映会は共にソールドアウトし盛況だった。

日本の文化を紹介するジャパン・ソサエティー(NY)では、17日にスタジオジブリの話題作『君たちはどう生きるか』(The Boy and the Heron)の先行上映会が同団体の会員向けに開かれた。同作は12月8日より全米で劇場公開されることになっている。さらに多くの人々がこの映画を目にすることだろう。

翌18日には絵本が映画化された『えんとつ町のプペル』(Poupelle of Chimney Town)も上映され、原作・脚本・製作総指揮の西野亮廣さんが会場に現れた。西野さんは舞台挨拶とQ&Aで「尊敬する宮崎駿さんの映画と同じスクリーンで自分の作品も上映され光栄です」と語った。

同作はブロードウェイでのミュージカル化も決まっており、現在制作が進められているそうだ。この日の会場では、ミュージカル界のアカデミー賞と言われるトニー賞獲得の夢についても語られた。

上映前に舞台挨拶する西野さん。(c)Kasumi Abe
上映前に舞台挨拶する西野さん。(c)Kasumi Abe

このように当地はアニメ三昧の週末だった。日本発のアニメがアメリカおよび世界中のファンに及ぼす影響は計り知れず、今後もその躍進から目が離せそうにない。

(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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