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デザインの力で東北のいいものを多くの人に/(株)PILE 佐藤高則さん

岡沼美樹恵フリーランスライター/編集者/翻訳者
(株)PILEの佐藤高則さん

この秋、仙台で画期的な取組が発足しました。それが「DMARK project」。東北を拠点に活動するデザイナーやコピーライターなどのクリエイターがクライアントとタッグを組んで、商品開発やブランディング、マーケティングなどを二人三脚で行う、クリエイティブパートナーシッププロジェクトです。

この「DMARK project」でアートディレクター/デザイナーとして参加するのが、佐藤高則さんです。

山形県鶴岡市で生まれた佐藤さんは、幼少期からとにかく絵を描くことが大好きだったそう。

「うちの親父は公務員なんですけれど、若いころ油絵を描くのが好きで、そういうのも影響しているかもしれないですね。昔、『ボブの絵画教室』っていうテレビ番組があったんですけれど、それをひたすら観ているような子どもで、高校生のときにはサッカー部と美術部を兼任していましたね。絵は好きなんだけれど、それが仕事にどうつながっていくのかわからなかったんですよね。そんなとき、親父が『こんなのがあるぞ』と教えてくれたのが、フォトショップとイラストレーターを使って作品をつくるというNHK文化センターでやっていたデザイン教室だったんです。そこからデザイナーという仕事を意識するようになりましたね」。

新たに発足した「DMARK project」(写真はウェブサイトより)
新たに発足した「DMARK project」(写真はウェブサイトより)

仙台や新潟、東京の専門学校への進学を検討する中、佐藤さんは「まわりの友達が結構行くっていうので、仙台の専門学校に決めたんです」と、仙台での進学を決意。

進学先である仙台デザイン専門学校で、株式会社ロルの堀井哲平さんをはじめとする4人の盟友と出会った佐藤さんは、卒業から5年後、再び集まって会社を興すことを約束。5人はそれぞれがプロとしてのスキルを身につけるべく、散り散りになりました。

佐藤さんは、仙台で看板屋での仕事を得ました。

「デザイナーっていう仕事を意識し始めてから、すごく看板に目が行くようになったんですよね。こんな大きいキャンパスで自分の表現ができるってすごいよな、気持ちいいだろうなって思っていたので。実際に仕事にしてみると、デザインはもちろんなんですけれど「立体の造作や施工とかの現場も楽しくて。本当に楽しく仕事をさせてもらっていました」。

その後佐藤さんは「5年後には会社をやるって決まっていたから、ほかのスキルも身に着けないと…というので、東京に出たんです。看板のデザインのほかに、大手百貨店の店内ディスプレイやさまざまななイベントの造作をしている会社で。世界的なブランドも手掛けていてすごく仕事の幅が広かったんですね。デザインもしながら施工もしていたので、結構キツかったんですけど、仕事の体力はここで培われた気がしますね」。

3年後、専門学校時代の友達と会社を興すために仙台に戻ってきた佐藤さん。

「ディレクターさんと仕事をする中で、本当にいろいろ考えました。正解に導いてくれる人もいないし、かなり大変だったのを覚えています」。

そんな時代を乗り越え、今やトップクラスのクリエイティブ集団となった株式会社PILE。2023年には、クリエイティブの力で東北を盛り上げていくべく「DMARK project」を立ちあげます。

「これは、当社役員の発案です。僕らはデザインができて、PRもできる。だけど、その部分をどうしたらいいかわからない事業者さんやメーカーさんがお金を理由に諦めてしまうのではなくて、もう少しハードルを下げられるように成果報酬型のビジネスモデルを確立したいということで始まりました。既存の商品もブランディングをしっかり行うことで、今までとは違ったお店に並ぶかもしれない。販路拡大にもつなげていけたらいいなと思って」。

さらに佐藤さんは続けます。

「東北にはいいもの、おいしいものが本当にたくさんある。それらを自分たちの持つクリエイティブの力でいろんなところに届けていきたいです」。

「DMARK project」では、すでに煮干しを効かせたナポリタン「ニボリタン」や仙台の人気ラーメン店「仙台っ子ラーメン」「油そばはてな」「ラーメン☆ビリー」の袋麺開発、そして仙台随一の“映える”甘味処として人気の「すずや」の新商品開発に携わりました。

「すずや」と協働して完成させた「すず芽」
「すずや」と協働して完成させた「すず芽」

「『すずや』さんは、宮城県角田市産の秘伝豆という希少な青大豆を使用した贅沢なずんだの商品『すず芽』というものになります。北海道産のクリームチーズをレアチーズケーキにして、秘伝豆のずんだと合わせています。忖度なしに本当においしいんですよ。12月22日までクラウドファンディングを行っていますので、ぜひご覧いただければ」。

秘伝豆を贅沢に使用したすずやの「すず芽」
秘伝豆を贅沢に使用したすずやの「すず芽」

佐藤さんは「今後もいろいろアプローチしていきます。食や工芸、雑貨や衣類も。さまざまな商品に関われたら楽しいですよね」と楽しそうに笑います。

11月10日から12月3日まで、仙台PARCO本館1Fにて「DMARK project」のポップアップショップを開催するそうなので、気になる方はぜひ足を運んでは? また、「商品のリブランディングをしたい」「なにかつくってみたい」という企業の方は、「DMARK project」の問い合わせフォームから気軽に相談してみてください。

取材:2023年10月

フリーランスライター/編集者/翻訳者

大学卒業後、株式会社東京ニュース通信社に入社。編集局でテレビ誌の制作に携わり、その後仙台でフリーランスに。雑誌、新聞、ウェブでエンターテインメント、スポーツ、広告、ビジネスなど幅広いジャンルの執筆活動を行う。2016年よりウェブメディア「暮らす仙台」で東北のよいもの・よいことを発信。ローカルビジネスの発展に注力している。好きなものは、旅、おいしいものを食べること、筋トレ、お酒、こけし、猫と犬。夢は、クリスマスのニューヨーク・セントラルパークでスケートをすること。妄想は、そのスケートのお相手がジム・カヴィーゼルだということ。

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