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東京圏選出議員の増加は地方衰退に拍車をかけることにならないか~衆院9増9減案を受けて考える~

吉田大樹労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表
朝日新聞2月10日付朝刊1面より

今朝の朝日新聞に衆議院選挙の一票の格差是正の記事があった。

衆院選挙改革、「9増9減」軸に検討 議長諮問機関

http://www.asahi.com/articles/ASH295GDXH29UTFK00J.html

衆院の選挙制度改革を検討する衆院議長の諮問機関「衆議院選挙制度に関する調査会」(座長=佐々木毅・元東大総長)は9日、「一票の格差」を是正するため、小選挙区の定数を「9増9減」する案を軸に検討することを明らかにした。

「9増9減」案は、青森や岩手など計9県の定数を1ずつ減らし、埼玉、千葉、静岡、愛知の4県を1議席、神奈川を2議席、東京を3議席増やす。調査会が2010年の国勢調査に基づいて行った試算によると、都道府県ベースで、議員1人あたりの人口が最少の鳥取県を1倍とした場合の最大格差は滋賀県の1・598倍になる。また、調査会には「12増12減」とする案もあり、この場合、鳥取県を1倍とした場合の最大格差は広島県の1・620倍になる。

調査会は「9増9減」案にするかどうかを5月の大型連休明けにも決定する考えだ。その後、定数削減の問題を話し合い、年内に選挙制度改革の答申を出す方針だ。この答申には法的拘束力はないが、安倍晋三首相をはじめ与野党幹部は、調査会の結論を受け入れる考えを示している。(安倍龍太郎)

出典:朝日新聞

この「9増9減」案に従うと、東京圏は、東京が現在の25区の小選挙区から28区、神奈川が18区から20区、埼玉が15区から16区、千葉が13区から14区に変更されることになる。

衆院において一票の格差を是正するという問題は憲法上の問題であろうから、これはこれで進めるしかないものと考える。しかし、現状の選挙区における候補者の「地方(選挙区)のために」という呼びかけを繰り返し聞くたびに少々不安な気持ちになる。

そもそも、日本国憲法第43条第1項には「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と明記されている。つまり、一選挙区の選出であったとしても、それは選挙区のためではなく、国のために考えるということが前提となろう。たとえ一地方の問題が浮上したとしても、それについては選出された議員の問題ということではなく、国という視点に立って国全体が持続可能な状況を考慮しつつ、施策としてその地方の在り方をいかに考えられるかが重要となる。究極的な形としては、毎回違う選挙区で出馬することを制度化しても地方の問題をしっかりと考えることができる政治状況が理想だろう。とは言っても、それがすべての議員にできるものでもないだろうから、例えば政党内で地域担当を決めるなりして、重点的に対応するということくらいはすべきであろう。もちろん少数政党はそんなことも言ってられないだろうが。

こうした格差是正は地方出身の議員が減ることを表しているのであり、現在の政治風土のままでは地方の声を奪うことにつながってしまう。国会議員の意識や発言の中に、「地方(選挙区)に恩返しをする」的なものがまだまだ蔓延っている中で、今回の9増9減はどのような意味を持つのかを考えてみたい。

安倍政権において「地方創生」が声高に言われている中で、地方出身の議員が相対的に減ることは結局中央モデルの押し付けとなってしまう可能性が出てくるということだ。「9増9減」案が実現すれば東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)からは78人もの議員が選出されることになる。東京圏の選出議員が増えれば増えるほど、議員の関心が一方的に東京圏に吸い寄せられてしまう危険性をはらんでいる。そのようなことがないように、東京圏選出の議員が意識的に地方に足を運び、地方の衰退を目にし、地方に関心を高める必要があるだろう。一票の格差是正を進める中で各政党が取り組むべき課題だと思う。

一方で、参院については、議員定数を100議席に減らし、州から2名の議員を選出するアメリカの上院のように、議員定数を各都道府県(東京は23区以外)から2名ずつの計94名を選出し、首都である東京23区については別途2名の定数を振り分ける。もちろん96名定数でもいいのだが、残る4枠は全国区にして地盤を持たない有力者(例えば有名人)を選出する。これで計100名というのはどうだろうか。

国会において憲法改正に向けた動きが今後活発になるであろうが、先に挙げた43条についても早期に改正し、参院における「一票の格差」問題に終止符を打つべきだと思う。

地方を持続可能性のある社会にしていくことが、日本全体の底上げにもつながる。一票の格差是正だけではなく、国会議員の定数削減の問題を考える上でも、「地方」という視点を決して忘れないように取り組むべきであろう。

労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表

1977年7月東京生まれ。03年3月日大院修士課程修了(政治学修士)。労働専門誌の記者、父親支援団体代表を経て、16年3月NPO法人グリーンパパプロジェクトを設立。これまで内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚労省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員を歴任。現在、こども家庭庁「幼児期までのこどもの育ち部会」委員、「こどもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、東京都「子供・子育て会議」委員などを務める。設立したNPOで放課後児童クラブを運営。3児のシングルファーザー。小中高のPTA会長を経験し、現在鴻巣市PTA連合会前会長(顧問)。著書「パパの働き方が社会を変える!」(労働調査会)。

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