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波乱続出! 夏の甲子園懸けた地方大会中盤戦

森本栄浩毎日放送アナウンサー
夏の甲子園をめざす地方大会も中盤戦だが、例年以上に波乱が目立つ(筆者撮影)

 「有力校、強豪が敗退」というニュースが、連日、飛び込んでくる。とりわけ衝撃的だったのは13日。センバツ王者の東邦が、愛知大会の2回戦で星城にまさかのコールド負けを喫した。センバツ優勝投手の石川昂弥(3年=主将)が13安打を浴びて、一方的に押し切られた。その前日には、宮崎大会で、センバツ出場の日章学園と昨夏代表の日南学園が同日敗退。宮崎は、一県一校が定着してから唯一、夏の連続出場がなく、その珍記録は継続となった。

センバツ組の苦戦続く

 その後も、波乱は続く。西東京では、センバツ出場の国士舘が、初戦で都立日野に逆転負け。センバツ後も都大会で準優勝し、関東大会でも8強入りしていただけに、初戦の怖さを痛感させられる。そのほか、センバツ出場校では大分も姿を消し、21世紀枠の熊本西も、九州学院と初戦で当たり、逆転で惜敗した。さらに17日には、秋の神宮覇者の札幌大谷が、南北海道大会初戦で駒大苫小牧に3-5で敗れた。もっとも、駒苫も春の北海道大会で優勝していて、波乱というより、事実上の決勝のような顔合わせではあった。春の王者に続いて、秋の王者も。このように、センバツ出場校の早期敗退が目立つのが、今夏、地方大会の特徴である。

有力校つぶし合う京都

 17日は、京都大会でセンバツ8強の龍谷大平安の試合を観戦した。京都は春の8強がシードされるが、順位付けをしないため、強豪集中のゾーンがある。平安とともにセンバツに出た福知山成美は、2戦目で京都翔英を破ったが、次戦は、昨年センバツ出場の乙訓と当たる厳しい組み合わせ。ほかにも立命館宇治が初戦で東山と当たる(立宇治の勝ち)など、序盤戦から有力校がつぶし合っている。平安は、ここまで2戦は危なげなく勝ち上がったが、8強を懸けた4回戦で、西城陽の無欲の挑戦に大苦戦を強いられた。

平安に西城陽が無欲の挑戦

 夏の甲子園経験がある西城陽は、乙訓の部長で昨春の甲子園を経験した染田賢作監督(38)が、この春からチームを率いる。

西城陽の染田監督は、元プロ投手。短期間で投手陣を整備し、この日投げた3投手はいずれも下級生。相手の原田監督から、「インサイドワークをしっかり教え込んでいる」と称賛された(筆者撮影)
西城陽の染田監督は、元プロ投手。短期間で投手陣を整備し、この日投げた3投手はいずれも下級生。相手の原田監督から、「インサイドワークをしっかり教え込んでいる」と称賛された(筆者撮影)

 郡山(奈良)~同志社大で活躍し、横浜ベイスターズの投手でもあった染田監督は、短期間で投手陣を整備して優勝候補筆頭との大勝負に出た。先発は1年生の右腕・井上周汰。外角中心に正確なコントロールで強力打線を翻弄。初回に失策絡みで2点を失ったものの、打たれた安打は1本のみ。5回に勝ち越すと、その裏から沢田健登(たけと=2年)へつなぎ、5-4と1点をリードして、残すは平安の9回裏だけだ。今夏の波乱のスパイラルに、全国屈指の強豪も巻き込まれようとしていた。

涙で打席に入った平安主将

 平安はトップを打つ中島大輔(3年)が、試合中のケガで離脱し、この日は本来4番の水谷祥平(3年=主将)が1番に入っていた。勝ちを意識したか、沢田は、先頭の8番・長畑海飛(かいと=3年)を歩かせてしまう。1死二塁となって、水谷が打席に向かう。「『このままだと負けてしまう』、そう思ったらお世話になった人の顔が浮かんできて、涙が出てきた」という水谷は霞む目で1球目が見えなかった。ベンチから原田英彦監督(59)が「落ち着け」と叫ぶと、水谷も我に返った。

土壇場で平安の水谷主将が起死回生の同点打。この日はチーム事情で、前チームで打った1番に入ったが、勝負所で4番打者としての本領を発揮した(筆者撮影)
土壇場で平安の水谷主将が起死回生の同点打。この日はチーム事情で、前チームで打った1番に入ったが、勝負所で4番打者としての本領を発揮した(筆者撮影)

 追い込まれていたが、「気持ちで打った」という当たりは右前に抜け、長畑が本塁へ殺到。土壇場で同点に追いついた。二塁塁上で、ベンチと応援席に何度も拳を突き上げる水谷。また涙が溢れてきた。試合は延長に突入し、10回裏、9回に同点の生還をした長畑が、今度は左翼線にサヨナラ打。6-5で大熱戦に終止符が打たれ(タイトル写真)、平安は九死に一生を得た。

追い詰められてから強い今年の平安

 原田監督は、「3点差に離されたときや、好打順が3者凡退で終わったときなど、3回くらい『まずいな』と思った。9回は、一番いいやつに回った。あいつ(水谷)が打たないと盛り上がらない。志願して主将になっただけのことはある」と、水谷を絶賛した。「弱いチームだが、一球一球、最後まで気を抜かずやっていきたい」と、疲れ切った表情で話した指揮官だが、昨秋も京都3位で出た近畿大会では優勝している。このチームは追い詰められてからが強い。まだまだ先は長いが、この日の経験が必ず生きるだろう。

彦根東も好発進

 近畿の他地区に目をやると、17日に兵庫大会で報徳学園が加古川西に敗退。和歌山では、智弁和歌山と市和歌山のセンバツ組が揃って勝ち上がった。

彦根東は、比叡山との名門対決を7-4で制して応援席に向かう。スタンドでは先輩の増居投手らが応援していた。次戦は、好投手のいる光泉が相手だ(筆者撮影)
彦根東は、比叡山との名門対決を7-4で制して応援席に向かう。スタンドでは先輩の増居投手らが応援していた。次戦は、好投手のいる光泉が相手だ(筆者撮影)

 滋賀では、春の近畿大会優勝後、調子を落としていた近江の林優樹(3年)に復調の兆し。彦根東は、先輩・増居翔太(慶大1年)がスタンドで応援する中、16日の比叡山との名門対決を制して、2年ぶりの夏へ好発進した。大阪は、17日に再抽選があり、大阪桐蔭、履正社の2強が準々決勝以降まで当たらない組み合わせになった。18日以降、全国的に荒天の予報が出ている。日程も勝敗を左右する大きな要素。天も味方につけたいところだ。

 

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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