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ウクライナ軍、ソレダルで中国DJI製小型民生品ドローンでロシア兵を上空から監視・ミサイルで攻撃

佐藤仁学術研究員・著述家
ソレダルでのウクライナ軍(写真:ロイター/アフロ)

上空のドローンからははっきりと見える戦況

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

2023年1月11日にロシア国防省は、ロシアが一方的に併合したウクライナ東部ドネツク州バフムト近郊のソレダルを包囲したと宣言。ウクライナのゼレンスキー大統領は「戦闘は続いている」と主張している。このようにソレダルでロシア軍とウクライナ軍の攻防が激化している。

そんななか、ウクライナ軍がソレダルでロシア軍との戦いで中国DJI社製の小型民生品ドローンで上空からロシア兵の動きを監視して、ロシア兵に対して機関銃やミサイルで攻撃を行っているシーンを公開していた。ウクライナ軍の兵士がスマホの画面でロシア軍の動きを監視して、適切な場所にミサイルで攻撃を行っているのがわかる。英国のメディア、テレグラフが報じている。

▼【刺激的な映像のため閲覧注意】

ロシア軍の動きを中国DJI製の小型民生品ドローンで監視して、適切な場所へ機関銃やミサイルで攻撃するウクライナ軍(英国メディア、テレグラフ)

中国のDJI社の小型民生品ドローンは市民からの寄付でも多く調達されている。上空のドローンからロシア兵の様子がくっきりと映っている。今回は監視・偵察のみに利用していたが、改造して小型爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア兵に投下して殺傷させることにも貢献している。

ウクライナ紛争ではドローンによる上空からの攻撃をウクライナ軍、ロシア軍ともに頻繁に行っている。そしてドローンの多くは迎撃されて破壊されてしまうか、機能停止させられてしまっている。

ドローンが上空を飛んでいたらバリバリと大きな音がしてドローンの存在に気付くのでアンチドローンの迎撃システムがあれば機能を停止させたり、撃墜したりすることもできる。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破する、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。それぞれに迎撃システムがある。

だが今回のソレダルでの戦いでは地上からのミサイルやライフル銃、戦車による攻撃が激しくて、ロシア兵は上空のドローンには気が付いていなかった。地上での戦いに気を取られて上空のドローンに全く気が付いていない様子もウクライナ軍が監視で使用していたドローンの映像にはっきりと映っている。

上空のドローンを察知したらすぐに破壊したり機能停止させたりしないと、このように敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んできたり、爆弾を投下される。

ソレダルでの戦いは激しいようで、ウクライナ領土防衛隊が2022年8月1日と2023年1月の上空からのドローンで撮影したソレダルの様子を比較して公開していた。

▼ウクライナ領土防衛隊が撮影した2022年8月1日と2023年1月のソレダルの様子の比較

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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