今年は海のウエイディングを子育てに生かそう 熱中症予防にも効果的【#コロナとどう暮らす】
とうとう来ました、暑い夏。海水浴場やレジャープールでの水遊びは、心身ともに成長する時期の子育てには、うってつけです。楽しい夏の思い出をみんなで作り、共に心にしまうことで、秋には誰もが「子供が成長したな」と実感します。今回は、水難事故の確率を減らすことができる、海のウエイディングをご紹介します。
水遊びは、熱中症から身体を守ってくれます。例えば海水温は高くてもせいぜい30℃程度で、本州で普通は27℃くらいです。気温が高くても海水に一部を浸けるだけで、身体全体を冷やすことができます。その一方で、新型コロナウイルス感染防止対策の影響で、今年は水難事故から自分たちで身を守らなければならない場面も増えそうです。そこで、今年は事故の確率をグッと減らすことができる、海のウエイディングの出番です。
ウエイディング(wading)とは、水底歩行、すなわち浅い水辺を歩いて活動することです。スイミング(swimming)はどちらかというと、足の届かない水辺で泳ぐことです。このふたつの言葉は、英語圏では湖などで遊ぶ時の注意書きで一緒に使われます。ノーウエイディング・ノースイミング(水の中を歩いてはいけないし、泳いでもいけません)のように。でも日本ではあまり聞き慣れない言葉ですね。
海水浴場でのウエイディング
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、「出かけても近場」という方が多いかもしれません。近場に砂浜の海岸があれば、お出かけしてちょっと足を海水に浸してみませんか?
ウエイディング活動服のイメージとしては、図1の親子のような感じです。活動しやすい普段着で、帽子をかぶって日焼けや暑さ対策をします。半袖や半ズボンで、濡れても体が動かせるくらいの薄着にします。靴やサンダルは水中で脱げにくく、しかも海水中で浮く、軽い製品を選びます。
図1左をご覧ください。大人の膝下の水深で、足を海水に浸けて、歩きながら足を冷やし、そして全身の熱が海水に放出されるというイメージです。簡単な散歩程度です。
そして、時々背浮きの練習をしてみます。図1右をご覧ください。1人が背浮きになります。もう一人が支えて援助します。足に靴やサンダルをはいていれば、簡単に浮くことができます。お子さんが援助役になって、親が背浮きの練習をすることだってできます。親子で「浮けた!」という思い出を作りませんか?
安全なウエイディングのために
「海は危険だ」と言われるとその通りですが、次のことを守っていれば、安全の確率がどんどん高くなります。水難学会事故調査委員会が行った、これまでの海での水難事故の調査結果(注)より、注意すべきポイントをお話ししたいと思います。
1.砂浜の構造に注意
図2をご覧ください。新潟県長岡市野積海水浴場の遊泳可能エリア(右)と遊泳注意エリア(左)の砂浜の様子です。右の遊泳可能エリアの砂浜の傾斜はなだらかなのに、左のそれはきついことがわかります。
傾斜の緩やかな場所を選んでください。なぜかというと砂浜の傾斜が緩やかであれば、海の中も沖に向かってしばらくは遠浅です。そして、波の戻り方も緩くなります。傾斜のきつい砂浜海岸では、しばしば「戻り流れ」という現象で砂浜の人が海に引きずり込まれます。
2.離岸堤の構造に注意
図3をご覧ください。砂浜海岸にはしばしば離岸堤と呼ばれる波消しブロックを積んだ構造物があります。離岸堤の裏側でウエイディングを楽しむようにしましょう。
離岸堤と離岸堤との間には注意が必要です。水深が急に深くなっていたり、波のパターンが複雑になっていたり、時間帯によっては比較的速い沖向きの流れ、離岸流が発生したりすることがあります。
【参考】海に散った3人の命 海岸で遊ぶ高校生に何が起こったのか 水難事故調レポート
3.遊泳が禁止されていないこと
たくさんの立て看板が設置されていて、「多くの事故が発生しています 遊泳禁止です」と砂浜にあったら、ウエイディングでも絶対に海に入ってはいけません。場所によっては、砂浜にいるだけでも命の危険があります。
このような海岸は、一見するととても安全に見えます。365日中、360日くらいは全く危険ではない日かもしれません。ところが、天気図がある条件を示した日だけ、前触れなく、とてつもなく強力な流れが海岸に沿うように発生し、膝くらいの水深でも流されます。砂浜の構造によっては、そのまま沖の深いところに流されてしまいます。
そういう危ない場所は、海岸工学のプロが見ても全然わかりません。「過去に大きな事故が繰り返された」という経験則にしか頼れませんので、看板の注意書きは絶対に信じてください。
4.波が穏やかなこと
図4のように、波がなくて海面がほぼ鏡に等しい日を選びましょう。海岸での水難事故は、海岸構造X波の高さXそこに人がいる、の条件がそろうと発生します。昨年の8月11日には小笠原諸島に停滞していた台風からの大きなうねりの影響で、本州の太平洋側で同時に多発的に水難事故が発生しました。「晴れていて、風もないのに、少し波が荒い」という日は特に要注意です。
【参考】今年は海での水難事故が多すぎる。特に11日は同時多発性と言わざるを得ない
海で泳いではいけないのか
当然、監視員がいて図5のように安全の青サインが出ていれば、海で泳いで楽しんでください。ただし、もしもの水難事故の場合は、救助が来るまで時間を必要とします。その間、呼吸を確保するためには、やはりライフジャケットの着用が一番効果的です。
ライフジャケットを着ていると、競泳のようには泳ぐことができません。流されてしまった時は、流れに逆らったり、流れから外れたりしても、元の場所に戻ることはほぼ不可能です。その場合には、救助が来るまでしっかりと浮いて待っています。
家でじっとしていたい時には
小さなビニールプールや自宅の浴槽を使って、ウエイディング程度の水遊びを親子で楽しみませんか?水道水は結構ひんやりしていますので、足だけ浸けるだけでも熱中症予防対策には効果絶大です。ただし、これまでビニールプールやお風呂で、大人の目が離れた間に重大事故が発生しています。必ず、お子さんに大人が寄り添って水遊びを楽しんでください。
(注)一回の事故で3人以上が亡くなる水難事故については、水難学会事故調査委員会が原因究明のために現地調査を行って、その結果を公開しています。注意1.と3.については、それぞれに関する事故調レポートを、この8月中にYahoo!ニュースで報告する予定にしています。また、1人が亡くなったような個別の水難事故の調査に関しては、水難総合研究所(兵庫県)が対応しています。
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