秋の夜長は炎を見つめて調おう 初心者でも安心の絶景焚火宿を見つけた
山梨県の富士吉田市といえば、Booking.comが毎年実施している『Traveller Review Awards』(※1)で、日本の都市としては第5位をマーク(※2)している人気都市です。
なにしろどこからでも富士山の絶景が見られる町であり、かつ首都圏からも車で1時間半程度とアクセスが良く、日帰りでちょろっと訪れることができる気軽な旅先。しかも、インスタグラムで有名になった“あの写真”を撮ることができるとあって、ぐんぐん人気が高まっています。
※1:実際の利用者による全世界約2億4千万件のレビューを統計し、口コミスコアが高かった施設やサービスに対し授与されるアワード
※2:2023年度。4月に発表
しかしながら、ここにはぜひ宿泊したい、なんなら年に何度も訪れたくなる施設があるので、力いっぱい紹介させてください。
それは、河口湖町のキャンプリゾート『くうねるたす』。キャンプリゾートと聞くと「ああ、いま流行りのグランピングね」と思われるかもしれませんが、ここは一言「そんなんじゃない」と一刀両断したい施設です。
客室は一棟貸しで完全にプライベート空間になっており、それぞれの部屋にはデッキと焚火台、キッチン、トイレがついていてゴージャス! それぞれのスペースに設置されたトイレは簡易トイレっぽいですが、実はウォシュレットつきで、ほかのギアもすべて最新モデルのモダンなタイプでした。
筆者が宿泊したのはかつてサウナだった設備をベッドルームに改装したもので、部屋に入るとサウナらしい木の香に包まれます。サウナ好きならこれだけで調ってしまうのでは? というくらい、サウナ感あふれますが、施設内にはサウナはありませんのであしからず。
これだけそろっているのに、筆者がここを「グランピング」と呼ばないのは、グランピングはアウトドアだけれどホテル並みに至れり尽くせりというのが筆者の見解だから。一方、『くうねるたす』は基本的にはなんでも“自分でやる”のが前提なのです。
たとえば、食事。食事つきのプランもありますが、BBQセットですので各部屋に設置されたグリルや焚火を使って自分で調理します。メニューはワイルドに鶏肉を丸ごと1羽、グリルで焼く『くうねるたす』名物料理のみで、食材はすべてそろっているほか、味付けもされているし、調理のコツも教えてもらえるけれど、焼くのはあくまでも自分なのです。
暮れゆく河口湖を眺めながら焚火でもしようか、と思ったら、薪をセットして着火するのも自分。こちらももちろんやりかたを教えてもらえます。デッキにある薪も、大きすぎるなら自分で割ってちょうどいい太さにしてから火にくべます。できないことがあれば寄り添ってくれるけれど、でも基本的には放置。そんな絶妙な距離感に、筆者はぐっと心をつかまれました。
翌朝。
キャビンの中で、カーテンを閉めなかったので朝日とともに目覚めます。起き上がると富士山の絶景。これだけでもう気持ちがいい。外に出てさわやかな朝の空気を胸いっぱいに吸い込んだら、もう優勝を祝福したくなるような清々しい1日が始まります。富士山すごい。
さて、朝食です。
食事セットについてくるのはカマンベールチーズとはちみつのホットサンド。もちろんこちらも自分で作ります。そのために、薪に火をくべ、コーヒーのためにお湯を沸かし、とちょっと忙しい。実はパンにチーズとはちみつをはさんでそのままいただくことともできますが、焚火で焼いたほうが絶対おいしいはず! とがんばります。
焦げないようひっくり返しながら、時々焼き加減を見たりして。ふだんはホットサンドメーカーにおまかせしているような簡単なものでも、焚火で調理となると勝手が違います。朝ごはんを作るのに、こんなに神経を使ったっけ? というくらい、焚火と向かい合いながらのひとときは、忙しくてもとても楽しく充実感があります。
実にシンプルな朝食。しかしこの絶景の中で熱いコーヒーと一緒にいただくなんて、これ以上の贅沢ってあるのだろうか。今回は取材だったため、ひとりで堪能したわけですが、むしろひとりでいたいときにおすすめ。ソロキャンにあこがれるけれど、ギアをそろえたり技術や安全面に不安がある人にもよいと思います。
もちろん家族(※山の斜面にあり、柵などが少ないため小さいお子さまはNG)や友人同士で来るのも楽しいでしょう。でも、この放置感(※実際には困ったときに助けてくれるスタッフがいます)はたまらない。日々の生活に翻弄され、心ががちゃがちゃしてしまってなんだかひとりになりたいとき、炎のパワーは絶大です。
大人の火遊びを堪能するならぜひ焚火。おすすめです。
<データ>
つながるキャンプリゾート くうねるたす
〒401-0304 山梨県南都留郡富士河口湖町河口2568-1