「ネット上の情報は情報源で信頼度合いが大きく異なる」は世界共通認識
インターネットは情報発信のハードルが低いことから、流通する情報の信頼性がしばしば論議される。結果として情報の発信元でその内容の確からしさを精査するケースが多くなっている。世界各国におけるその認識を、アドビが2015年12月に発表した、消費者のコンテンツに関する意識調査「The State of Content : Rules of Engagement」の結果から確認していく。
次に示すのはインターネット上に記載されている情報に関して、どのような発信元の情報を信じるかについて。例えばイギリスでは84%の人が、著名な人がオススメした内容よりも、一般の人がオススメしたものの方を信頼すると考えていることになる。
「著名人より一般人」「ニュースキャスターより現場」、いずれも権威があると世間一般から認識されている対象に、その権威が発する情報への強い疑いが表れている。同一軸上に両者による情報があった場合、権威が無い、見方を変えればしがらみのない情報の方が信頼できるとするものだ。一般人や現場の声は、昔は取得することは困難で、せいぜい自分の周辺にいる人からの直の口コミ、権威ある存在からの間接的な伝聞(例えば新聞報道の「目撃者の話」「以前から知っていた人の感想」など)ぐらいしかなかったが、今ではインターネット経由で取得方法さえ身に付ければ、誰もが大よそ確認できる。
興味深いのは他国と比べ、日本の値が一段低い状況にあること。つまり日本は他国と比べ、権威あるもの、従来から独占的に情報を提供してきた側の情報を、一層信頼していることになる。日本は他国と比べて権威主義であるとは良く言われているが、その一端を知ることができる。
それではどのような情報源なら信頼に値するのか。該当発信元の発するコンテンツを信頼できるか否かと尋ね、「強度の強い信頼」と「強度の弱い信頼」を合わせた「強弱はともあれ信頼できる仕切り分けに収められる」と回答した人の割合を示したのが次のグラフ。
対象者を直接知っている「友達や家族」への信頼性は高く、全体では63%。「YouTubeの有名人」(「YouTubeの有名人」は原文では「YouTube celebrity」。当人が直接画面に出てくるユーチューバーだけでなく、YouTubeを用いて情報発信を積極的に行う個人を意味する)は24%でしかない。しかし見方を変えれば、1/4の人が「YouTubeで有名な人の語りは信頼できる」と認識していることになる。
原文では「company」とあることから「企業」と訳したが、法人的な情報発信元、例えば出版社発行の雑誌などと考えた方が良いかもしれない、に関しては、実商品を購入したと考えられる企業の方が信頼性は高い。単にプレスリリースだけを読み解いての評価と、実機体験レポートや試食評価のようなものとでは、後者の方が信頼できるとするものだ。もちろん実物を取得した上での精査情報でも、正しいことが書かれている担保としては弱いのだが、判断の上では「より確からしい」となる。
国別では大よそアメリカ合衆国において、それぞれの場合で信頼度が他国よりも高い。イギリスではリアルに対するこだわりが強いようで、実商品を買っていない企業やYouTube有名人に係わる値が低めに出ている。
そして日本ではいずれにおいても、他国より大きく値を落としているのが特徴的。日本は今回取り上げた他国と比べ、情報に関して、特にネット上の情報には醒めた目で接している感はある。どのみちどこかでやらせが行われている、ステルスマーケティングによるものかもしれない的な、色眼鏡を通して世の中を見ている、達観している雰囲気を覚える。「友達や家族」ですら信頼できる情報源としては4割程度しか同意が無い点で、その可能性は十分有り得るといえよう。
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