太陽光温水機器や太陽光発電機器などの省エネ設備の導入状況の変化をさぐる(2020年公開版)
この10年ほどの間で住宅設備の中でも特に注目を集めるようになったのが、太陽光を利用した発電機器。一方で住宅用の省エネ設備としては太陽熱を利用した温水機器や、二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓が知られている。それらの省エネ設備の導入率の推移について、総務省統計局が2019年4月に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査の速報集計結果から確認をする。
住宅・土地統計調査は5年おきに調査が実施されているが、2003年分以降について省エネ設備の導入率が調査・公開されている。そこで3種類の省エネ設備それぞれにおける、住宅種類別の導入率の変化を確認する。
まずは太陽熱を利用した温水機器。
太陽光発電機器に取って代われていることもあり、導入率は漸減状態。2003年時点では6.6%あった導入率も2018年では3.5%と半分近くに減っている。特に持家での減少が著しいことから、新規に建築される住宅では導入されない事例が増えているものと考えられる。
続いて太陽光発電機器。
太陽熱を利用した温水機器とは真逆で、導入率は漸増状態。持家での増加が著しいが、民営借家でも大きく伸びている。2013年で増加に弾みがついたように見えるのは、やはり震災が影響しているのだろう。逆に都市再生機構・公社の借家で漸減の動きが見えるのは意外ではある。
最後に二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓。
太陽光発電機器ほどの増加スピードではないが、二重以上のサッシまたは複層ガラスの窓も漸増状況。しかも元々昔からある程度導入されていたこともあり、導入率そのものは高い状態となっている。
持家では導入率の増加度合いの大きさが目に留まるが、民営借家や給与借家でも順調な増加を見せている。他方公営借家や都市再生機構・公社の借家では今一つの動きに留まっている。
今回取り上げた3種類の設備すべてにおいて、持家に比べて公営や民営などの借家での導入率は押しなべて低い。貸し手(大家など)にとっては「余計な費用がかかる設備をつけると、空き家状態におけるリスクが高まる」とのデメリットがあるからなのだろう。しかし借り手の視点で考えると、エネルギーの節約≒光熱費の節約は、それだけ賃貸住宅としての魅力は高いものとなる。
現状において賃貸住宅の客取り合戦が激化している状況を鑑みるに、賃貸住宅でも省エネ部門の充実について、十分以上に検討する必要があるに違いない。
■関連記事:
「浮島太陽光発電所」のデータを元に太陽光発電の現状をグラフ化してみる
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。