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会議がいちばん多いのは水曜日 Zoomのレポートから見える「働き方」

土橋克寿クロフィー代表取締役、テックジャーナリスト
Web会議ツールのZoom(写真:中尾由里子/アフロ)

コロナ禍以降、知名度や利用者数を爆発的に伸ばしたクラウドサービスの代表格として、「Zoom」を取り上げることに疑問を挟む余地はないでしょう。そこで今回は、コロナ禍初期の2020年でどれほど利用が伸びたのか、飛躍的成長後も継続的に利用者数が伸びているのか、昨今はどのような形で利用されているのかーーなどについて、Zoom社の公開資料や決算資料、第三者レポートなどから探っていきます。

大変化の年の飛躍的成長

まずは、コロナという世界的大変化が起こった2020年を振り返ります。Zoomを利用した1日当たりのミーティング参加者数は、2019年12月時点で全世界1,000万人でしたが、2020年4月には3億人に上りました。この結果、2021年度第3四半期(11月〜1月)の全世界売上高を見てみると、前年同期比367%増の7億7720万ドルへ急増しています。

日本国内においては、2020年1月と4月を比較すると、無料ユーザーの新規登録者数は63倍となり、有償顧客(10ライセンス以上)数は17倍へと膨らみました。続いて、2020年の一年間に焦点を当てると、日本国内の有料顧客数は2,500社から20,000社に増加し、売上高は対前年比約10倍へと増加、国内シェアは前年の10%未満から35%へ急増、認知度も74.7%へと高まっています。

Zoomの利用実態

それでは次に、2020年終盤からの一年間(2020年11月15日から2021年11月15日まで)における、Zoomのユニークな利用実態データを見ていきます。Zoom は、世界中の約200の国と地域で使用され、ミーティングの平均時間は54分、平均人数は10人でした。なお、1週間のうち、ミーティングが最も多く開催された日は水曜日で、その次に続くのが火曜日と木曜日です。

Zoomを利用したグローバル約1,700人へのアンケート調査(Zoom社が実施)によると、68%の人がカジュアルな服装でミーティングに出席しており、ほぼ半数(47%)が「ミーティング中に何か食べることは決して許されない」と答えています。利用シーンについては、42% がベッドから、21%がウォーキング/ジョギング中に、11% が公共交通機関での移動中にZoomを利用しています。上記の調査結果については、日本国内ユーザーにとっては少し違和感が残るかもしれませんね。

Zoom利用中に最も頻出したフレーズについては、71% が「ミュートになっています」、57% が「皆さん、私の画面が見えていますか?」、21% が「次のスライドをお願いします」と答えました。さらに、ユーザーの75%がミーティングが終わる際に手を振っており、73%がハッピーアワーの飲み会やゲームナイトに参加、34% がフィットネスまたは料理教室に参加しています。この辺りについては、日本国内利用者の多くの方々にとっても覚えのある、フレーズや行動パターンかもしれませんね。

また、お気に入りのバーチャル背景の種類については、26%が屋外風景、25%がぼかし背景、20%がビジネス・会社背景と答えています。そして、背景に映し出されるものについて、43%がカメラが映し出す部屋の一部のみの片付け、43%が親の子供がミーティング中に映りこみ、36%がペットのミーティング中の映りこみなどを経験しています。

出典:Okta 社『Businesses at Work 2022』レポート
出典:Okta 社『Businesses at Work 2022』レポート

コラボ三大勢力

ここからは、Okta社の『Businesses at Work 2022』レポートを見ていきます。本レポートによると、ZoomはAPAC地域(アジア太平洋)では前年比 37%増、EMEA地域(ヨーロッパ・中東・アフリカ)では前年比 45% 増と、世界中で新規ユーザーを増やし続けています。特にAPAC地域においては、ユニークユーザー数で 231% もの急増を達成しました。本丸ともいうべき北米においては、第3位のAWSに迫る勢いで第4位につけています。

Zoomの利用は現在、医療機関・薬品業界、金融機関・銀行業界、教育機関、非営利部門と幅広い業界に広がっており、そのコラボレーション技術の用途はバーチャル医療の提供、ハイブリッドクラスルームの確立、クライアントサービスの底上げなど、多岐に渡ります。 その中でも、特に教育機関とテクノロジー業界の2分野が突出しており、 教育機関はGoogle WorkspaceとZoomを使ったコラボレーションを多用しています。 Zoomはコロナ禍の初期である2020年3月23日に、教育分野の顧客が28日前に比べ1,941%の成長を記録したと明らかにしていますが、その後もユニークユーザー数が継続的に伸びている様子が窺えます。

一方、テクノロジー業界では、コラボレーションに注力する企業によって、アプリ採用が加速しています。Okta社は同レポートで、「コラボレーション三大勢力」としてGoogle Workspace、Slack 、Zoomをあげています。実際、これらの前年比成長率は大きく、Google Workspaceが32%、Zoomが33%、Slackが34% の伸びを示していました。ユニークユーザー数に基づく人気度を調べてみると、Zoom は2020年に195%という驚異的な成長を遂げた後ですら、前年比 42%という見事な成長ぶりを示しています。

出典:Okta 社『Businesses at Work 2022』レポート
出典:Okta 社『Businesses at Work 2022』レポート

出典:Okta 社『Businesses at Work 2022』レポート
出典:Okta 社『Businesses at Work 2022』レポート

テクノロジーとビジネス資産

同レポートでは、既存ソフトウェアを補強する追加アプリケーションを購入した企業についても取り上げられていました。それによると、Okta社提供のクラウド型ID管理・統合認証サービスを利用するMicrosoft 365ユーザーの45%が、Zoomを日々利用することが明らかになりました。このことから、1 つのITベンダーに全て依存する時代の終わりが感じ取れます。

大企業も中小企業も問わず、今日の組織は、画一的ソフトウェアソリューションだけでは生産性向上などの大きな課題に対処しきれません。 バンドルされたアプリケーション(例えばMicrosoftのWindowsに付属提供されるTeamsやOneDriveなど)の他に、業界をリードするSlack、Zoom、Boxといったコラボレーションツールを入れて補強していくことの重要性が高まっています。

クロフィー代表取締役、テックジャーナリスト

1986年東京都生まれ。大手証券会社、ビジネス誌副編集長を経て、2013年に独立。欧米中印のスタートアップを中心に取材し、各国の政府首脳、巨大テック企業、ユニコーン創業者、世界的な投資家らへのインタビューを経験。2015年、エストニア政府による20代向けジャーナリストプログラム(25カ国25名で構成)に日本人枠から選出。その後、フィンランド政府やフランス政府による国際プレスツアーへ参加、インドで開催された地球環境問題を議題に掲げたサミットで登壇。Forbes JAPAN、HuffPost Japan、海外の英字新聞でも執筆中。現在、株式会社クロフィー代表取締役。

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