日本を代表する彫刻家…生誕100年を迎える「毛利武士郎」作品51点が展示 制作ノート初公開【黒部市】
今回は、黒部市美術館で開催されている、彫刻家「毛利武士郎」展を紹介します。
毛利武士郎(1923-2004)
東京生まれの「毛利武士郎」は、富山県立近代美術館で開催された「現代日本武術の展望―立体造形」展がきっかけとなり、晩年を黒部市で過ごした彫刻家です。
マネキン制作会社に勤務していたことがあり、マネキンの型を取るときに使用する“アルギン酸”を用いた作品が多く遺されています。
黒部市美術館
黒部市美術館では、黒部にゆかりのある作家を紹介する「Kurobe Art Research」を企画。第2回目となる今回は、晩年を黒部市で過ごした、日本を代表する彫刻家「毛利武士郎」展です。
「毛利武士郎」は生誕100年。展覧会には、初期の塑像作品や、晩年のステンレスなどで制作した作品を含む51点の他、初公開となる「毛利武士郎」の手書き制作ノートなど多くの資料が展示されています。
Kurobe Art Research vol.2 生誕100年 毛利武士郎と黒部
- 開催期間:2023年6月25日(日曜日)
- 開催場所:黒部市美術館
- 開催時間:9時30分~16時30分※入館は16時まで
今回は、学芸員さんの熱い解説をふまえ、多くの謎が残る「毛利武士郎」作品に迫ってみたいと思います!
異なる素材で作られた2つの≪不死鳥≫
「毛利武士郎」の初期ころに多い作品は、石膏やブロンズなどを用いた塑像作品です。この像は、石膏で制作した像にブロンズ色を施した作品です。
実は、黒部市栗寺にある「シーラカンス 毛利武士郎記念館」にはブロンズで作られた≪不死鳥≫があります。ブロンズ作品とブロンズ色の石膏作品、2つの像を、ぜひ見比べてみてください!
阿とは…
晩年の「毛利武士郎」は、自ら工作機を操作して幾何学的な模様を施したステンレスの作品など、初期のころとは異なる様子の作品を創作しました。
この作品は、≪阿の肖像≫。多くの作品のタイトルに“阿”という文字が入れられています。
あまり作品の説明をしてこなかった「毛利武士郎」。“阿”とは、何を意味するのか、はっきりしたことは分かっていません。
Mr.阿からのメッセージ第1信 第2信
図面とともに展示されている≪Mr.阿からのメッセージ第1信 第2信≫。真鍮で作られているため、完成当初は黄金色に輝いていたそうです。
いくつかの異なる素材を組み合わせて作られたこの作品には、複数の円の跡があり、線が彫り込まれ、ナットが埋め込まれています。一見すると、表面に円の跡がついているだけのように見えますが、実際は、円状の穴をくり抜き、くり抜いた穴には同じサイズに加工した金属をはめるという作業を繰り返して作られているそうです。
円が意味するものは…。跡を残すだけではなく、円をくり抜き埋めた訳は…。
くり抜き、埋められた円。工作機で掘られた、いくつもの穴や線。作品では確認することができなかった、図面に描かれた“点線の円”。図面と作品を見比べながら芸術を鑑賞したことは初めてでしたが、興味深く面白い体験でした。
他にも、「毛利武士郎」の貴重な作品や、初公開となる多くの資料が展示してあります。
最後に
今回紹介した「Kurobe Art Research vol.2 生誕100年 毛利武士郎と黒部」展は、黒部市栗寺にある「シーラカンス 毛利武士郎記念館」と共催です。異なる素材で作られた同じタイトルの作品が「シーラカンス 毛利武士郎記念館」と黒部市美術館にそれぞれ展示されるなど、共催ならではの楽しみ方ができるユニークな展覧会です。
2つの美術館を巡るからこそ見えてくる「毛利武士郎」の世界観を、ぜひご堪能ください!
「シーラカンス 毛利武士郎記念館」生誕100年記念展覧会
「かすがい」と「まる」木呼里 安達直樹
- 開催期間:2023年6月10日(土曜日)~6月25日(日曜日)
- 開催時間:10時~16時
- 休館日:開催中は無休
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黒部市美術館
住所:富山県黒部市堀切1035
電話番号:0765-52-5011
開館時間:9時30分~16時30分(入館は16時まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般500円、高校・大学生400円
※ 中学生以下無料
※障害者等手帳をお持ちの方と付添1名無料
シーラカンス 毛利武士郎記念館
住所:富山県黒部市栗寺41
電話番号:090-4323-6885
観覧料:無料