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台湾国防部「ウクライナとロシアの戦争を生かしてドローン開発と生産を加速」戦場での勝敗は「数」と攻撃力

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

台湾国防部のスポークスマンの孫立方氏は2023年2月7日にウクライナとロシアの紛争でのドローンの使用を見て、台湾でもドローンの開発と生産を加速していくと語っていたとロイターが報じている。

孫立方氏は「現在、台湾が直面している危機と敵の脅威に対抗するために、ウクライナとロシアの戦争でのドローンの使用と経験を生かしていきます。非対称戦闘力を増強するためにも、国防部は様々なドローンの開発と生産を加速していきます」と語って、ウクライナとロシアの戦争の教訓と台湾有事と言われる中国の脅威に対抗して、台湾国防部は軍事ドローンの開発を加速させていく方針を示している。ロイターによると台湾は中国からの攻撃を撃退するための教訓を学ぶためにウクライナとロシアの紛争を注視している。

戦場でのドローンの勝負は「数」攻撃側が優位なドローン

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ロシア軍はロシアで製造された監視ドローン、攻撃ドローンのほかにイラン政府が提供した攻撃ドローンでウクライナ軍に攻撃をしている。また中国製の小型の民生品ドローンも大量に購入にして監視や攻撃に使用している。

ウクライナ軍ではロシア軍侵攻直後はトルコ製の軍事ドローンを使用していた。またウクライナで製造されたもの、欧米諸国の政府から提供された監視ドローン、攻撃ドローンを多く使用している。さらに世界中の多くの市民からの寄付で中国製の小型民生品ドローンも大量に購入している。

ウクライナもロシアも両軍ともにドローンを多く使用している。ロシア軍もウクライナ軍も多くの中国製の安価な小型民生品ドローンを購入して監視や攻撃に使用している。中国製の小型民生品ドローンも開戦直後は監視用のみに使用されていたが、現在では手りゅう弾や爆弾を搭載して、敵軍を上空で探知したら手りゅう弾や爆弾を投下して攻撃している。上空から敵軍を監視をして、その場で爆弾を投下できるので一石二鳥である。さらに民生品ドローンに爆弾を搭載してドローンごと突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンタイプの攻撃も両軍で行っている。またドローンで撮影したあらゆる情報や写真、動画などは戦略立案、作戦の実行に貢献している。ここまで戦場でドローンが活用されたのは歴史上でも初めてであろう。

そして戦場でのドローンは監視であれ攻撃であれ「数」が勝負である。戦場ではドローンは何機あっても足りない。多くのドローンを所有している方が優位である。監視ドローンはすぐに破壊しないと敵軍に居場所を探知されてミサイルなどを大量に撃ち込まれてしまう。標的に突っ込んできて爆発する攻撃ドローンも上空で破壊しないと民間の重要インフラなどへ攻撃されて大惨事になったり市民生活に打撃を与える。そのためドローンは探知されたらすぐに機能停止されたり、破壊されてしまう。

ロシア軍は現在、執拗にイラン製軍事ドローンでウクライナ軍に毎日のように奇襲をしかけている。軍事ドローンでの上空からの攻撃を迎撃するために地対空ミサイルや機関銃で破壊したり、トラックやバンなどの後方部に地対空ミサイルなどを搭載して、アラート(警報)が鳴ったら飛来してくる場所まで走っていき攻撃ドローンを迎撃している。大量の軍事ドローンでいっきに攻撃をしかけてくるので人間の兵士による迎撃にも限界があり、破壊力も強いのでかなりの脅威である。軍事ドローンは攻撃側が優位である。

標的に突っ込んでいき爆発する神風ドローンは1回使用したらドローンも粉々に破壊するので再利用はできない。ドローンは大型の戦車やミサイルのように開発と生産にコストと時間もかからない。現在のウクライナとロシアの戦争でも大型ミサイルなどに比べると安価なので破壊されても次から次へと戦場に導入されている。そのためドローンを使用した戦争を優位に展開するためには、ドローンを短期間で量産し続けていくことが必須である。

ドローンによって非対称戦闘力は強化できるが、所有するドローンは多い方が優位である。現在、ウクライナ軍はウクライナ製のドローンや欧米諸国やポーランド、リトアニアなどの周辺諸国、市民からの寄付で購入された大量のドローンがあるのでロシア軍の監視と攻撃を続けいてる。ドローンの数が少なければ非対称戦闘力も構築できない。

小型の民生品ドローンを大量に生産している中国はドローンの世界のシェアの8割を占めているといわれている。小型民生品ドローンも爆弾や毒物を搭載すればすぐに殺傷力がある攻撃ドローンになる。台湾だけでなく日本を含めて多くの国にとって大量のドローンを短期間で生産できる体制の構築が安全保障の観点から急務である。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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