衛星失敗「このへんが限界」…不機嫌さ増す金正恩の危うさ
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は24日、国家宇宙開発局が同日未明に北西部・東倉里(トンチャンリ)の西海衛星発射場から新型衛星キャリアロケット「チョンリマ(千里馬)1型」で軍事偵察衛星「マンリギョン(万里鏡)1号」の2回目の打ち上げを行ったが、3段目飛行中に非常爆発システムにエラーが生じ失敗したと明らかにした。
国家宇宙開発局は、「当該事故の原因が段階別エンジンの信頼性とシステム上の大きな問題ではないと説明し、原因を徹底的に究明して対策を立てた後、来る10月に第3次偵察衛星の打ち上げを断行する立場」だと伝えた。
北朝鮮は5月に最初の軍事偵察衛星の打ち上げを行ったが、そのさいも「千里馬1型」が海に落下して失敗に終わっている。今回は満を持しての再挑戦だったはずだが、あえなく失敗してしまった。
北朝鮮はこれまでも、失敗を繰り返しながら弾道ミサイル技術を向上させてきた。その裏では人命においても財政にも多大な犠牲を出している。それを乗り越えての大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発は、金正恩総書記にとって最大の「業績」と言えるものだろう。
(参考記事:【画像】「炎に包まれる兵士」北朝鮮 、ICBM発射で死亡事故か…米メディア報道)
しかし、ミサイルよりさらに高コストと見られる偵察衛星打ち上げで連続して失敗したことは、北朝鮮技術陣は「このへんが限界」であることを示しているように思える。1回目で落下したロケットの一部は韓国が回収しており、いずれその評価が部分的に明らかにされるかもしれない。
技術面ではそうした分析に頼るとして、気になるのは金正恩氏の行政手法だ。同氏は技術的失敗に関しては現場の責任を問わず、むしろ激励して成果を伸ばしてきたと見られる。
だが、6月に行われた朝鮮労働党中央委員会第8期第8回総会拡大会議では、担当者たちの「無責任さが辛辣に批判された」と朝鮮中央通信が明らかにしている。現場に対して公開的にプレッシャーをかけ、2回目での成功を至上命題としたのだ。
そして今回の失敗を受け、金正恩氏はどのような行動に出るか。
そうでなくとも同氏は最近、不機嫌さを増している。干拓地の冠水を巡っては、金徳訓(キム・ドックン)総理の対応が「無責任」だったために、国家経済に深刻な損害を与えたと強く批判した。総理を名指ししての批判は異例だ。
度重なる失敗にしびれを切らした金正恩氏が、これまでのような「現場を伸ばす」手法を維持できず、過酷なペナルティを与える行動に出れば、北朝鮮の技術的難関はむしろいっそう深まるのではないだろうか。