「あなたはなぜ非正規社員で働くの?」その理由をたずねてみた
労働市場、雇用形態に関して昨今では特に注目されているのが、非正規社員問題。主婦のパートや学生のアルバイトなど、雇用される側にも必要不可欠なワークスタイルだが、その一方で雇用する側が正規雇用枠を減らして、その穴埋めに非正規雇用枠を拡大する施策を取ることで「正社員の席」が減るとの指摘もある。2013年時点では雇用者全体に占める正社員率は63.3%に留まり、パートやアルバイト、派遣社員、嘱託などの非正規社員率は36.7%と1/3を超えている。
これら非正規雇用の人達は、なぜ現職についているのか。総務省統計局が2014年2月に発表した2013年分の労働力調査(詳細集計)では、その主たる理由を聞いている。その結果が次の図。男女それぞれの回答者に占める比率と、回答実数をそれぞれグラフ化する。
比率の上では男性は「正社員としての仕事が無い」が最多回答率。上記で事例に挙げた「正規雇用の椅子が減らされ、その分非正規雇用の椅子が増やされるので、非正規の椅子に座らざるを得なくなる」との指摘は、男性においては3割強が同意を示していることになる。そして「自分の都合の良い時間に働きたい」「家計の補助・学費などを得たい」「専門的な技術などを活かせる」とする自ら望んで今の立場にあるとの意見が続く。
一方女性は「家計の補助・学費などを得たい」がもっとも多く1/4強、ほぼ同率で「自分の都合の良い時間に働きたい」が並ぶ。いずれも兼業主婦のパート・アルバイトでありがちな理由。男性で最上位についた、ネガティブな理由「正社員としての仕事が無い」は1割強でしかない。
これを人数別に見ると合計では、女性と男性との比較では女性の非正規社員の方が多いこともあり、「自分の都合の良い時間に働きたい」が最上位に、次いで「家計の補助・学費などを得たい」が続き、「正社員としての仕事が無い」は3番目の理由に落ち着く。ちなみに「正社員としての仕事が無い」は合計で341万人となるが、これは非正規社員全体(1906万人)の17.9%に留まることになる。
今件項目は非正規社員問題への関心が高まる中、労働力調査において2013年分から新設された項目で、過去のデータとの比較は不可能。少なくとも現状においては「非正規社員の男性3割、女性1割強は『正社員になりたかったがなれず、仕方なく』非正規社員として働いている」という現状は、認識しておくべきだろう。また同調査では「正社員に成りたかったけどかなわず、非正規社員の立場にある人の半数は転職を望んでいる」との結果も出ている。
一方で「正規の職員・従業員の仕事が無い」とする理由だが、単に「正社員としての受け皿が少ない」と判断するのは早急である。完全失業者の失業理由でも、多分に雇用する側とのミスマッチが指摘されていることから、非正規社員の「正社員の仕事が無い」とする意見でも、類似の傾向があるものと考えた方が道理は通る。
本当に「正社員としての受け皿縮小が、正社員を望んでいた非正規社員の増加につながっている」のか否か、そして事実ならばどれ程までに影響を及ぼしているのか、今後複数の視点から検証する必要があろう。単純に勢いだけで叩きやすい対象をバッシングする風潮が創られ、それにのせられても、当事者には何ももたらされないどころか事態が悪化していくのは、先の派遣問題に絡んだ一件で実例があったばかりである。
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