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早明戦。58失点の早稲田大学が「全てがだめではない」と言えるわけは?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
伊藤と大田尾(左から。筆者撮影)

 中盤までに、ほぼ勝負をつけられてしまったか。

 100周年を迎える早明戦こと、今季の関東大学対抗戦Aの明治大学と早稲田大学の試合は、12月3日、東京・国立競技場であり、大学選手権優勝回数を最多の17回とする早稲田大学は38―58で敗れた。

 前半は攻守ともに接点で気圧され、3―27とリードを許した。後半20分には3―41とされていた。

 試合後、大田尾竜彦監督と伊藤大祐(示に右)主将が会見した。

 ここで浮かび上がったのは、圧力を受けていたように映った接点への、内なる手応えだった。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

大田尾

「一番やってはいけないというか、恐れていたシナリオになってしまった。この試合で自分たちの強み、弱みははっきりしたと思う。これを修正して選手権に臨めるという意味ではいい試練になったと思っています」

伊藤

「勝ちたかった試合で、前半、いかれた(圧倒された)部分が全てかなと思う。選手権まで時間がある。自分たちで獲られた得点と、そうじゃないところを反省して…。このまま恐らくもう1回、どっちもうまく勝ちあがったら、(明治大学と)同じ舞台でできるので、一戦一戦、準備して、勝ちたいです」

——「自分たちで獲られた得点と、そうじゃないところ」とは。

伊藤

「前半、自陣22メートルエリアくらいに入られてからの明治の勢いについては、相手が強かったというよりは自分たちのやりたかった接点のバトルが(できず)、全ていかれた原因かなと思う。それがインパクトに残っています」

 早稲田大学は、自分たちを比較的、小柄な集団と分析。大学選手権2連覇中の帝京大学が圧倒的なフィジカリティを有し、早稲田大学も決勝で20―73と完敗しているのがその背景にあるような。

 ここで伊藤が話した「やりたかった接点のバトル」とは、鋭い出足で相手をせき止めることを指すか。

——いま話題になった1対1のタックル、およびその後の接点の攻防を、指揮官はどう見ていましたか。

大田尾

「接点が起こるエリア(ボール保持者とタックラーの衝突点)でのスペースの取り合いで(両軍のサポートの速さを競い合う局面)、全部、後手を踏んでいる。当たられている、という印象ですかね。そのスペースを取られ出すと、当然ながら相手のフォワードは乗ってくる。そこのスペースの取り合いで完敗かなと。コリジョン(衝突)する前のところで、自分たちから当てに行けていないという感じはありました」

——その領域は、帝京大学戦では惜敗も手応えがあったような。それなのに…。

大田尾

「我々のディフェンスに対し、特に前半、明治さんのやることが徹底していた。シンプルだったんです。ボールを長く持たれてからコンタクトされるシーンが多く、自分たちは対面を決めきれなかった(誰が誰をマークするかが不明瞭になってしまった)。自分たちのコンタクトが弱くなったというより、相手が対策してきた時に自分たちの次の打ち手をどうするか…という話だったと思うんですけど、そこを改善できたらば…というところが結構、多かった。全てがだめというよりも、『どういう風にしてコリジョンのシーンに行くのか』を(改めて)徹底したいなと思います」

 比較的、簡潔な突進を重視してきた帝京大学と比べ、明治大学はゲインラインへ駆け込みながらも複数のパスを折り重ねていた。ここに、「自分たちは対面を決めきれなかった」というのが大田尾の見立てだ。

 ここでの「どういう風にしてコリジョンのシーンに行くのか…」には、防御の並び、立ち方、防御ラインのなかでの各人の連携などを改善したいという意思がにじむ。大田尾は続ける。

「身体を鍛えていなかったら、コリジョンを鍛えていなかったら、もう選手権に入ってもどうすることもできなかった。ただ、そこは鍛えてきた。あとは、切り口を変えるだけ」

 そう。鍛錬してきた手応えはある。

——ちなみに、スクラムについてはどう感じるか。

大田尾

「スクラムについては、非常によく組めていた。後半、ペナルティを1回、我々が犯しましたが、もう少しスクラムにこだわってよかったという展開もあります。選手たちもそういう手応えがあった。総じて――さっきのブレイクダウン(接点)の話もそうですが――これまで鍛えていなかったらどうすることもできないですが、ここまで鍛えてきている。それを信じていくだけかなと」

 前半から大いに苦しめられながら、終盤には連続得点でファンを沸かせた。自陣からのワイドな展開に活路を見出した。

 その流れを、明治大学陣営は「後半ばてていた」「気の緩みがあった」などと口々に言った。同大でゲーム主将を務めた山本嶺二郎はこうだ。

「点差が開いたところで油断したわけではないんですけど、僕らのミスというよりかは、早稲田さんのプライドが勝ったのかなと感じています。早明戦がこのような試合展開になるというのは、終わってみれば楽しいというか、早明戦だな、と、思うので、このような激しい試合ができたというのは、今後の成長に繋がると思います」

 一気呵成の反撃について、早稲田大学側はどう振り返るか。

——終盤のスコアラッシュについて。

伊藤

「前半に関してはゲームコントロールをしながら、明治が強いのは分かっているのでチャレンジャーでやろうとしていくなか、チャレンジャーの姿勢じゃなかった。判断が保守的になった。結果論なんですけど。でも、自分たちはここから上がっていかなきゃいけないチームなので、アタックするマインドを持って選手権に臨みたいです。

 外側のスペースの攻略には自信を持っている。前半からできればよかったなという思いもあるにはあるんですが、明治さんの足が(後半には)大分、止まっていて、そこも関係している。そこについては、こっちのほうがきついこと(練習)をやっているぞという自信はあります」

——選手権へ。

伊藤

「ここからノックアウト。1年間やってきたことを信じてぶらさずにやらないといけない。また、僕の良し悪しでチームが変わると思うし、きょうもいいところと悪いところがはっきり出た。自分自身、こっからギアを上げて選手権に臨みたいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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