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アレルギー体質の方への影響はどうだったのか?コロナワクチンによる副反応

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対し、ワクチン接種が進められてきました。しかし、ワクチンの副反応を心配する声も少なくありません。特にアレルギー体質の人への影響はどうだったのでしょうか?ブラジルで行われた最新の研究から、改めてコロナワクチンの副反応とアレルギーの関係について考えてみたいと思います。

【コロナワクチンの種類と副反応の特徴】

現在使用されているコロナワクチンは、大きく3つのタイプに分けられます。

1. mRNAワクチン:ファイザー社のBNT162など。ウイルスのタンパク質を作る設計図(mRNA)を体内に注入し、免疫反応を引き起こします。

2. ウイルスベクターワクチン:アストラゼネカ社のChAdOx1など。別のウイルスにコロナウイルスのタンパク質の遺伝情報を組み込んで接種します。

3. 不活化ウイルスワクチン:シノバック社のCoronaVacなど。コロナウイルスを不活化して接種します。

ブラジルの研究チームは、これら3種類のワクチンを接種した人を対象に、副反応の種類と頻度を調査しました。

その結果、BNT162では接種部位の痛みが最も多く、ChAdOx1では頭痛や発熱などの全身症状が目立ったことがわかりました。CoronaVacは副反応の報告自体が少なかったようです。ワクチンの種類によって、副反応の特徴が異なると言えるでしょう。

ただし、これらの副反応は一時的なもので、多くは数日以内に自然に回復します。重篤な副反応の報告は非常に少ないことから、ワクチン接種のメリットはデメリットを上回ると考えられています。

【アレルギー体質の人への影響は?】

今回の研究では、花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎など、アレルギー疾患を持つ人(アトピー)とそうでない人で、副反応の出方に違いがあるかが調べられました。

研究の結果、アトピーの人がChAdOx1ワクチンを接種した場合、筋肉痛や発熱、悪寒などの副反応がより多く見られることが明らかになりました。一方、BNT162ワクチンでは逆に、アトピーでない人の方が頭痛を訴える傾向にあったそうです。私個人の経験としては、ワクチンの種類を問わず、コロナワクチンを接種した多くのアトピー患者さんが症状悪化を経験しています。CoronaVacについては、アトピーの有無で副反応に大きな差は見られなかったようですが、サンプル数が少なかったため、さらなる研究が必要でしょう。

【まとめ】

新型コロナウイルスのパンデミックに対し、mRNAワクチン、ウイルスベクターワクチン、不活化ウイルスワクチンの3種類のワクチンが開発・接種されてきました。ブラジルの研究により、ワクチンの種類によって副反応の特徴が異なることが明らかになりました。また、アレルギー体質の人では、特にウイルスベクターワクチンにおいて副反応がより多く見られる傾向にあることがわかりました。今後も、コロナワクチンの副反応とアレルギーの関係について、さらなる研究が進められることが期待されます。

参考文献:

Oliveira, L.A.R.; et al. Distinct Adverse Reactions to mRNA, Inactivated Virus, and Adenovirus Vector COVID-19 Vaccines: Insights from a Cohort Study on Atopic and Non-Atopic Subjects in Brazil. Vaccines 2024, 12, 408.

https://www.mdpi.com/2076-393X/12/4/408

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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