ウクライナ情勢を起点に、円建てパラジウム相場が急騰中
東京商品取引所(TOCOM)のパラジウム先物相場は、4営業日連続で年初来高値を更新した。2月4日の1グラム=2,272円をボトムに、本日高値は2,590円に達している。これは、実に2001年5月以来の高値である。
背景にあるのは、ウクライナ情勢の緊迫化だ。とは言っても、ウクライナはパラジウムの主要生産国ではなく、ウクライナの政情不安そのものが小麦やトウモロコシ相場を押し上げているのとはロジックが違う。パラジウム市場で焦点になっているのは、専らウクライナ情勢への介入を目指すロシアの動向である。すなわち、今後のウクライナ情勢の進展状況によっては、ロシアに対する欧米の経済制裁が強化される可能性あり、その際に世界のパラジウム供給が需要に対応できるのかが疑問視されているのだ。
現実的には、欧米諸国がロシアに対する貿易規制にまで踏み込む可能性は、現段階ではそれほど高い訳ではない。ただ、パラジウム市場は世界供給の42%がロシアによってカバーされる歪んだ供給構造にあるだけに、ロシアからの供給不安に関する動きに対しては、例えそれが発生確率の低い「テールリスク」といえども一定の配慮を示さざるを得ない。石油で言えば、イランがホルムズ海峡を封鎖するリスクが高まっているのと同じ、またはそれ以上の効果がある。
加えて、足元では37%の生産シェアを有する南アフリカでも、鉱山ストライキによって供給環境が不安定化している。こちらは既に現実の供給トラブルになっているが、両国を合計すると8割近いパラジウム供給がリスクに晒されていることが、パラジウム相場を押し上げている。
パラジウムは、工業関連需要の拡大とロシア政府在庫の枯渇化で、特に新たな供給トラブルなどが発生しなくても、3年連続の供給「不足」となる可能性が高い状況にある。こうした中、ロシアと南アフリカで同時に発生した供給トラブルと供給不安が、パラジウム相場高騰の流れを加速させている。2,500円の節目突破で、このままウクライナ情勢の緊迫化が続くと、3,000円台到達の可能性も浮上しよう。