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露朝関係はスターリン時代に回帰?「スターリンは金日成」に、「プーチンは金正恩」に高級車をプレゼント

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
金総書記に「アルウス」を見せるプーチン大統領(ロシア国営放送記者テレグラムから)

 ロシアのプーチン大統領が金正恩(キム・ジョンウン)総書記にロシア製乗用車を贈ったことが問題になっている。国連安保理の制裁決議に違反するからだ。

 今朝の朝鮮中央通信は朴正天(パク・ジョンチョン)党書記兼軍政指導部長と金正恩氏の実妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長が一昨日、プーチン大統領から贈り物を受け取ったと伝えていた。贈り物は車だが、車種は明らかにされておら「ロシア産専用乗用車」とだけ伝えていた。

 このニュースを伝えた韓国のメディアは一斉に金総書記が昨年9月にロシアのウラジオストクを訪問した際、プーチン大統領が車好きの金総書記に自国製の高級乗用車「アウルス」を自慢げに紹介し、金総書記がプーチン大統領と一緒に後部座席に乗り込み、関心を示していたことから「アウルス(Aurus)」を贈ったのではないかとみている。

 「ロシア版ロールスロイス」とも呼ばれている「アウルス」はロシア初の高級ブランド車。重量は7トンで、装甲が施されており、爆弾や化学兵器の攻撃にも対応でき、車両が水没しても生存できるほどの安全性が担保されており、ロシアはこの車の設計と製作に124億ルーブル(日本円で約198億円)を費やしたと言われている。

 「アウルス」であれ、何であれ贅沢品に該当するものならば北朝鮮への供給、販売、移転を禁じた安保理制裁決議(2017年12月に採択)に抵触するのでロシアは国連決議を公然と違反したことになる。国際社会としては座視するわけにはいかない。

 「朝鮮中央通信」によると、金与正副部長はプーチン大統領の贈り物は「朝露両国の首脳の間に結ばれた格別な親交の明白な証左となり、最も立派な贈り物になる」と述べていた。

 昨年のロシアのショイグ国防相の訪朝(7月)、金総書記の訪露(9月)、ラブロフ外相の訪朝(10月)、そして先月の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相の訪露を踏まえ、プーチン大統領が大統領選挙(3月)後にも訪朝することが確実視されている。

 今月は平壌市の金秀吉(キム・スギル)党責任書記を団長とする代表団がロシアの政権与党「統一ロシア」が主催した国際会議(15~17日)に出席のため訪露したが、昨日は北朝鮮の水産省代表団と体育代表団が露朝水産共同委員会の会議への出席とロシアとの体育交流議定書の調印式に出席するためそれぞれモスクワ入りしている。まさに露朝関係は絶頂期、蜜月の真っ只中にあると言っても過言ではない。

 露朝が国交を結んで今年で76年目となるが、両国の関係が最も良好で強固だったのは国交を結んだ年の1948年から1953年(3月)までのスターリン時代である。

 金日成(キム・イルソン)主席は1949年にモスクワを訪問し、ヨシフ・スターリン書記長と初の首脳会談を行ったが、帰国後、スターリン書記長からソ連製のVIP乗用車「ジス(ZIS-115)」をプレゼントされていた。この車は平安北道の妙香山にある世界各国から贈答された贈り物が貯蔵されて(1978年8月に開館)に今も展示されている。

スターリンから贈られたVIP乗用車「ジス」(国際親善展覧会のパンフから)
スターリンから贈られたVIP乗用車「ジス」(国際親善展覧会のパンフから)

 スターリングラードの自動車会社で製作された「ジス」は米国車「パッカードスーパーエイト」をモデルにしたもので当時としては最も防御力の高い極秘設計の車だった。

 余談だが、スターリンの後継者になったニキータ・フルシチョフ書記長もソ連の指導者として1959年に初めて訪米した際にアイゼンハワー大統領から「友好の証」として装甲を施した重量が6トンもある堅固な車体のリムジン「パッカード・トゥエルヴ」をプレゼントされている。

 どうやら昔も今も車が最高の「贈り物」「友好の象徴」となっているようだ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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