SNS時代とコロナ禍で変化した3大オーディション。東宝シンデレラなど近年のグランプリたちの動向は?
昨年開催された第9回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリに輝いた10歳の白山乃愛が、4月スタートのドラマ『Dr.チョコレート』で女優デビューする。同じく、昨年の第45回「ホリプロタレントスカウトキャラバン」でグランプリとなった11歳の小田愛結は『Get Ready!』最終回でデビューした。
この2つと「全日本国民的美少女コンテスト」で3大オーディションと呼ばれ、多くのトップ女優やタレントを輩出してきた。SNSの時代になってコロナ禍もあり、オーディションの形式が変わってきた中で選ばれた近年の受賞者たちは、デビュー後にどんな展開をしているのか。
ホリプロタレントスカウトキャラバンは選考を完全非公開に
プロダクションが主催するオーディションの草分け「ホリプロタレントスカウトキャラバン」は1976年にスタート。第1回のグランプリは榊原郁恵だった。80年代には堀ちえみ、井森美幸、鈴木保奈美らを発掘し、新人の登竜門として定着した。
以後、深田恭子、綾瀬はるか、石原さとみら出身の女優たちが華々しく活躍。小島瑠璃子、井上咲楽はバラエティで道を拓いた。
2016年に当時の史上最年少だった12歳でグランプリとなった吉柳咲良は、翌年からミュージカル『ピーターパン』で主演。榊原や高畑充希らを継いだ10代目。近年はアニメ映画『天気の子』や『かがみの孤城』で声優、ドラマ『未来への10カウント』、『星降る夜に』に出演など頭角を現している。
2018年までは毎年開催され、基本的に書類審査、地方予選、決選大会という流れ。決選大会は公開でテレビ中継もされていた。しかし、2018年には選考を完全非公開とした。
入賞できるかわからないファイナリストの段階で名前などがオープンになると、良くも悪くもネットで拡散されやすくなり、「知人に知られたくない」など不都合なケースが増えてきたことが大きな理由だった。乃木坂46ら坂道グループのオーディションのSHOWROOM個人配信で、顔出しをしなくてもOKとしたのも同じ流れだ。
2019年には初めて開催を見送った。2020年は昔ながらの書類に写真を貼った応募をなくし、ウェブ受付に一本化。コロナ禍で3次審査までオンラインで実施したのち、決選大会を開いた。
この年は「次世代ミュージカルスターの発掘」がテーマ。グランプリの山﨑玲奈は、今年夏に『ピーターパン』の主役を吉柳から受け継ぐ。スカウトキャラバンを受ける前年にミュージカル『アニー』に主演していて、審査員の宮本亜門から「天才」と評された。
「芸能人よりインフルエンサー」志向が増えた中で
2021年も休催。2年ぶりとなった昨年は、再び最終選考まで完全非公開に。募集の際、実行委員長のホリプロ・白石哲也氏は以下のようにコメントしている。
「近年、オーディションのスタイルが大きく変わろうとしています。やりたい職業としてYouTuberが上位に入り、インスタグラマー、TikTokクリエイターも活躍。『オーディションを受けて芸能界を目指したい』という方が少なくなってる昨今、ホリプロとしては原点に帰り、スカウトキャラバンの名の通り、自薦のみならず、スカウト活動にも本気を出していきます」(オーディション情報サイト「Deview」より)
そして、グランプリに選ばれたのが小田愛結だった。11歳5ヵ月で吉柳の記録を更新した史上最年少。3月に行われたお披露目会では「みんなから愛されるようなモデルになりたいです。好きな俳優は阿部寛さん。娘役をやりたいです」と話していた。
白石委員長は「インフルエンサー主流の時代で、『SNSで有名にはなりたいけど芸能人までは……』といった声も多い中、応募が集まるか不安でしたが、たくさんの応募をいただき、素晴らしい原石に出会うことができました」と話していた。
小田はデビュー作となった『Get Ready!』最終回では、心臓の病気で余命3ヵ月の小学生の役。母親が仮面ドクターズにオペを懇願したが、「もういいよ。私、もうすぐ死ぬんでしょう?」と諦めの言葉を口にしたりしていた。
また、先輩の綾瀬はるかと共演するユニクロの新CM「UVカット LifeとWear/夏の美術館」が今月から放送。初々しい笑顔を見せている。
福本莉子は日本アカデミー賞の新人俳優賞に
「東宝シンデレラ」は1984年に初めて開催。初代グランプリに沢口靖子が選ばれ、ファイナリストに斉藤由貴も名を連ねていた。以後、不定期に行われ、1996年の第4回で野波麻帆、2000年の第5回では長澤まさみがグランプリに。
2011年の第7回では、10歳だった上白石萌歌が当時の史上最年少でグランプリ。他にも、姉の上白石萌音と山崎紘菜が審査員特別賞、浜辺美波がニュージェネレーション賞と、振り返れば豊作の年だった。
続く2016年の第8回でグランプリに輝いたのが福本莉子だ。当時は高1。当初は東宝シンデレラの肩書きがありながら、オーディションになかなか受からなかったそうだが、2018年にミュージカル『魔女の宅急便』で初舞台にして初主演。ドラマや映画の出演も増えて、『消えた初恋』や『思い、思われ、ふり、ふられ』などでメインキャストも。
昨年は『君が落とした青空』、『20歳のソウル』、『今夜、世界からこの恋が消えても』と主演やヒロインを務めた映画3本が公開。日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞した。先輩だが同い年の浜辺らに迫る勢いだ。
6年ぶりの開催で最終審査に小学生が5人
そして昨年、東宝創立90周年プロジェクトとして6年ぶりに「東宝シンデレラ」オーディションを開催。応募はウェブで受け付け、全国6都市での2次審査、東京と大阪での3次審査、都内でレッスンを受ける合宿審査を経て最終選考と、オーソドックスな形で進められた。
応募対象は10~22歳だったが、グランプリの小4の白山乃愛を始め、東宝芸能所属となったファイナリスト10名の内訳は小学生5人、中学生5人(中1が2人)と、ローティーンが多くを占めて、高校生以上はいなかった。
東宝芸能は「選考過程や受賞者の受賞理由を公にしない」とのことだが、豊作の2011年も上白石萌歌が小6、萌音が中1、浜辺が小5から時間をかけて育成されている。
偶然、同年のタレントスカウトキャラバンでも募集対象は9~20歳だった中で、グランプリには小5の小田愛結が選ばれた。小学生グランプリが異例だった時代からは低年齢化の流れがあるようだ。
白山はグランプリ受賞から4ヵ月で、4月22日スタートの連続ドラマ『Dr.チョコレート』(日本テレビ系)でヒロインを演じる。10歳ながら天才的な手術スキルを持つ役で、坂口健太郎が演じる主人公の元医者が代理人を務める。オーディションで選ばれた大役だ。
「難しい病名や手術で使われる道具の使い方を一生懸命覚えて、手術シーンもたくさん練習したので、見てもらいたいです」とコメントしている。
国民的美少女コンテストは6年前から開催されず
オスカープロモーションが主催する「全日本国民的美少女コンテスト」は1987年から始まった。中1で女優デビューし「国民的美少女」と呼ばれブームを生んでいた後藤久美子に続く逸材を、発掘しようとしたもの。
第1回のグランプリは藤谷美紀。1992年までは毎年開催され、細川直美、小田茜、佐藤藍子らを輩出。1992年の第6回では米倉涼子が審査員特別賞を受賞している。以後は不定期開催となり、5年ぶりの第7回では小6だった上戸彩が特別賞。2002年の第8回では、剛力彩芽が2次予選で落ちたものの、会場でスタッフにスカウトされた。
2003年に小6でグランプリとなった河北麻友子は、20歳になる頃からバラエティでブレイク。2006年には武井咲がマルチメディア賞とモデル部門賞。最近では、2014年の第14回でグランプリの髙橋ひかるがドラマ『村井の恋』で主演、『スクール革命!』で準レギュラーなど幅広く活躍している。だが、国民的美少女コンテスト自体は2017年の第15回以降、開催されていない。
井本彩花が『仮面ライダー』ヒロインから飛躍へ
その第15回でグランプリとなったのが井本彩花。当時は中2で、『ドクターX』のゲスト出演で女優デビュー。『あなたには渡さない』で木村佳乃が演じた主人公の娘役で初レギュラーなど順調に滑り出し、2021年には『仮面ライダーリバイス』でヒロインに抜擢された。
主人公の妹の空手を習っている女子高生という役柄で、自らも仮面ライダージャンヌに変身。悪の女王との対決など見せ場も少なからずあり、特撮ファンから知名度を広げた。『仮面ライダー』シリーズからブレイクした俳優は多いが、井本も1月クールで『警視庁アウトサイダー』に出演するなど、飛躍に繋げつつある。
オスカープロモーションでは近年、米倉や剛力ら所属タレントの退所が相次いだ。髙橋や須藤の成長に期待がかかるが、新たな逸材を求めて、すでに6年空いている「全日本国民的美少女コンテスト」の第16回の開催が検討されるかもしれない。