日本は第11位、自由判定…インターネット上の自由度ランキング最新版(2019年版)
21世紀を迎えてからまだ20年も経過していないが、インターネットは今世紀に普及した技術の中でも、もっとも大きな変化を世界に与え、これまでに無い情報伝達ツールとして歴史に刻まれるに違いない存在。情報の概念は大きく覆され、価値も意義も一変し、多様な方面に多大な利便性と革新をもたらすことになった。それとともに便利極まり無いインフラでもあるインターネットに関し、自由に利用できるか否かに注目が集まっている。情報のやり取りは諸刃の剣であり、自由な利用を好まない勢力もあるからだ。今回は国際NGOフリーダム・ハウス(Freedom House)(※)が毎年精査結果を発表しているインターネット上の自由度に関する報告書の最新版「Freedom on the Net 2019」(※※)から、世界各国のインターネット上の自由度の状況を確認する。
まずは直近分の2019年分となるスコアの確認。「自由」「やや自由」「不自由」の区分された国ごとに、総合スコアと主要3要素ごとにチェックが入った=加算されたスコアを確認していく。値が大きい方が、インターネット上の自由度が高く、自由さを覚える国であると認識されている。また、報告書にある地図の色分けによる状況確認も行う。
おおよそアジアから中東地域は不自由、北アメリカ、欧州地域は自由、南アメリカやアフリカはやや自由地域が多い。先行記事の「報道の自由」に関する地図と類似点が多いのは興味深い。
具体的な値では、トップはアイスランドの95点、次いでエストニアの94点。以後カナダ、ドイツ、オーストラリア、イギリス、アメリカ合衆国、アルメニア、フランス、ジョージア、イタリア、そして日本が続く。数ポイントの差は誤差となり得ることを併せ考えると(3項目の合算で1項目につき1ポイントの誤差が生じると試算すれば、合計値では3ポイントまでが誤差となりうるとの考え)、おおよそアルメニアから南アフリカぐらいまでは日本と同程度のインターネット上の自由が得られていると見てよいだろう。なおアジア太平洋地域で自由判定を受けているのは、日本とオーストラリアのみである。
インターネット上の自由度で不自由判定を受けた国を見ると、中国やイラン、シリア、キューバといった強硬的な政治手法に基づいて国を統治している国や、宗教あるいは時代背景的に情報の自由な伝達が国家運営上望ましく無いと判断されている国が多い。
今調査では「世界のインターネット利用者の87%を網羅した」とあるが、その実情が分かるのが次の図版。報告書からの抜粋だが、各国のインターネット利用人口を1つの六角形あたり100万人で表し、個々の国の自由度を上記の世界地図と同じような色付で示したもの。
中東やアフリカ諸国で不自由判定を受ける国数は多いが、利用者人口の上ではさほど大きな影響は無く、むしろロシアやベトナム、イラン、そして何より中国の影響が非常に大きい実情が分かる。
メディア関連の調査結果でもよく問題視される話ではあるが、「インターネット」は本来インフラを主に指すのであり、それを利用して流通するコンテンツは付随的なものでしか無い。新聞やテレビ、ラジオのようなメディアとは体系的に異なるもの(新聞などはあくまでもそれぞれの媒体で伝えられる中身そのもの、さらにはそれを成す組織までも合わせ、言葉の意味としての主な対象となる)。インターネットと比較するのなら新聞は紙媒体全体や流通ルートまで含めた包括的なもの、テレビならば電波の送受信機や放送局などとの比較が必要。
一方でインターネットは情報の発信が個人ベースで容易にできる、情報の展開の際に国レベルでの許認可が必要無いなど、これまでの情報送受信の媒体とは概念が大きく異なる。今後インターネットを利用できる端末の普及率上昇とともに、情報を統制する必要がある国々においては、これまで以上に自由への束縛が強固なものとなっていくだろう。
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※国際NGOフリーダム・ハウス
1941年にアメリカ合衆国国内で設立された国際NGO団体。同国としては初の世界規模で自由を守るために活動する組織として知られており、創設者はウェンデル・L・ウィルキー(1940年時点の共和党の大統領候補)やエレノア・ルーズベルト(当時のアメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトの妻)。同大統領の支援も受けているが、超党派的な存在として設立され、その方針は今も続いている。
設立当時同国内をはじめ世界には孤立主義、共産主義、ナチズム、全体主義が広まりを見せており、それに対抗しうる最大の武器が、自由と民主主義の浸透であるとし、それを監視しその現状を知らしめることを存在意義としている。またその考えに連なる形で、世界中に自由や人権を広め、強化していくことも使命として掲げている。現在では12か所に事務所を構え、120人以上の専門家や活動家から構成されている。なお同国の指標的報告書「Freedom in the World(世界の自由度)」は1973年から展開を開始した。
※※インターネット上の自由度(Freedom on the Net)
インターネットを利用する際の自由度を指標化したもの。インターネット技術の発達と普及に伴い、現実社会における自由の保護同様、オンライン上での自由も重要となってきた。技術の発展の一形態であり、新様式の情報伝達手段でもあるインターネット上の自由が確保されることで、閉塞感のある社会を打破し、自由と民主主義を支えるエネルギーとなりうるからである。他方、インターネットに係わる技術は諸刃の剣のようなもので、政府や権力者による自由の束縛のツールとしても使われ得るため、インターネットの自由の確保は、社会全体の自由にとっても欠かせないものとなる。
計測精査対象となるものは大きく3要素。「アクセスのための障害(インフラや経済面や法令面など)」「内容の制約(検閲やフィルタリング、ブロッキング、自主規制など)」「個人の権利への侵害(プライバシーへの監視行為や不法対処など)」。各要素ごとに細かいチェック項目を用意し(合計で100)、チェックに該当する値が大きいほどインターネット上の自由度も高いと判断される。チェック数=スコアが100~70が自由(Free)、69~40がやや自由(Partly Free)、39~0は不自由(Not Free)の判定が下される。
団体内の専門家によって振り分けられたスコアに対し、対象国の専門家や学者、一般市民の代表などによって開催される国際電話会議や検討会において、該当期間内の各種状況や対象国・地域の法令、慣行などとともにスコアの内容の精査と見直し、調整が行われる。その上で修正された値に関する最終確認が団体内で成されることになる。なお各地域の協力者に関しては、該当国で身元が判明する事により何らかの問題が生じる特殊な事例をのぞき、原則として公開されているため、透明性は確保されている。
2009年に予備的調査が始まった同調査では15か国が対象だったが、最新版では65か国までに拡大。これによりインターネット利用者の87%を事実上カバーした調査結果となっている(直近年分)。なお直近分の2019年版では2018年6月から2019年5月が対象。
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