センバツを懸けて滋賀でも名将同士が対決! 近江の独走阻止を狙う彦根総合が健闘
近畿大会出場を懸けた近畿各府県大会も終盤戦。今度の3連休で出場校と順位が決まる。兵庫とともに進行が早い滋賀は、先の土日で準決勝を終え、近江と滋賀学園が決勝進出を決めた。準決勝では、今春センバツで甲子園初出場を果たした彦根総合が王者・近江に挑んだが、逆転負けを喫した。
近江の多賀監督は甲子園22回で28勝
近江は言わずと知れた滋賀の盟主で、夏の甲子園では現在、全国最長の5大会連続出場中(3年前の独自大会を入れれば6連覇中)と、独走状態にある。これに待ったをかけようと新進気鋭の彦根総合が挑む構図なのだが、実はこの両校を率いる監督が、滋賀を代表する名将だったのだ。
近江の多賀章仁監督(64)は、監督歴35年の大ベテランで、甲子園出場22回(春6、夏16)を誇り、通算28勝を挙げている。この数字は滋賀では断トツで、春夏ともに準優勝の経験がある。
彦根総合の宮崎監督は北大津で活躍
彦根総合の宮崎裕也監督(62)は、甲子園では北大津の監督としてなじみが深い。県立の無名校だった北大津を強豪に育て上げ、10年以上にわたって近江との「2強」時代を築いた。甲子園へ6度(春3、夏3)も導き、センバツでは東北(宮城)や横浜(神奈川)を倒して、全国のファンを驚かせたこともある。
しかし公立校教諭につきものの転勤によって北大津を離れてからは、近江に独走を許していた。指導者としての情熱も冷めかけていたが、彦根総合に招かれ、再び近江とのライバル関係が復活した次第である。
昨季は一度も対戦が実現せず
宮崎監督の実質指導1年目の学年が主力となった昨秋は、準々決勝で当たる組み合わせだった。しかし近江が彦根東に敗れて対決は実現せず、「目の前で近江が負けてショック」と宮崎監督自身も落胆した。その後、彦根総合は快進撃で、近畿大会での大阪桐蔭戦が評価されてセンバツに初出場を果たした。そして夏、「近江を倒して甲子園」を合言葉に勝ち進んだが、準決勝で滋賀学園に惜敗し、近江とはついに対戦しないまま、昨季を終えた。
彦根総合が先制も、近江がビッグイニング
宮崎監督にとって待ちに待った試合は、彦根総合が初回から攻める。近江先発の右腕・西山恒誠(2年)から、4番・後藤悠徳(2年)と5番・安達秀介(2年)の連続適時二塁打で2点を先制。先発右腕の中島輝(きらり=2年)も、3回まで1安打無失点と近江を抑えた。
しかしさすがは滋賀の王者。二巡目に入った4回に上位打線が目覚めると、4番・大石尚汰(2年)の適時打で1点を返す。さらに連打で満塁と攻め、7番・高橋直希(2年)が逆転打を放つと、続く西山もスクイズを失敗したあと左翼越えの適時三塁打で加点し、打者一巡で6得点のビッグイニングを完成させた。
「センターラインがしっかりした」と多賀監督
多賀監督の「カウント球を狙え」という指示に選手が応え、積極的な打撃が近江に流れをもたらした。試合はこの6点で決まったと言っていい。後半に彦根総合も挽回を図るが、すかさず近江が突き放す試合運びには王者の風格が漂う。最終スコア8-4で近江が快勝した。前チームでも主力だった西山と左腕の河越大輝(2年)が投手陣を引っ張るが、多賀監督を喜ばせたのが逆転打を放った捕手の高橋だ。「彼の成長が大きい。これでセンターラインがしっかりした」と看板の守備力強化に安堵した。滋賀1位の座を懸けて、決勝では滋賀学園と当たる。
「近江のしっぽは見えた」と宮崎監督
一方、敗れた彦根総合の宮崎監督は「傍から見ていると(近江は)そこまでじゃないと思ったけど、実際にやってみると粘りがあるし、攻撃も徹底されている。守りではタマ際が強かった」と、潔く敗戦を受け入れた。中島を救援した左右の1年生投手もつかまり、計13安打を浴びた投手陣の整備が、今後の課題になる。県立校を早期退職して宮崎監督が選んだ学校は、近江と同じ彦根市にある新鋭私学。年齢的にも残された時間が多いとは言えない。それでも「今までは(近江の)残り香しかわからんかったけど、しっぽくらいは見えたかな」と、まんざらでもなさそうだった。
北大津時代には近畿大会で中田翔の大阪桐蔭を破る
滋賀の近畿大会出場枠は3校なので、彦根総合にもチャンスがある。3位決定戦では県立の名門・八幡商と当たる。1年生の好左腕と4番打者がいて油断ならない相手だが、北大津時代の2005年には、滋賀3位で出た近畿大会で、中田翔(34=巨人)のいる大阪桐蔭を延長13回の死闘で破ってセンバツ出場を果たした。今回も同じ大阪開催で、これは吉兆かもしれない。まずは近畿大会に2年連続出場を決め、近江との差を縮めていきたい。