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林家ぺー・パー子が撮り続けて見つけたもの

中西正男芸能記者
写真への思いを語る林家ぺーさんとパー子さん(撮影・倉増崇史)

 ピンクの衣装で手にはカメラ。お馴染みのスタイルで知られるのが林家ぺーさんとパー子さんです。携帯電話の普及で誰でも写真が撮れる総カメラマン時代になっていますが、写真を撮り続けてきた二人の目に映る世の中の変化とは。

カメラを持つきっかけ

ペー:僕が初代林家三平の弟子になったのが、前回の東京オリンピックの年、1964年でした。

その前年の63年11月にアメリカのケネディ大統領が暗殺された。偶然、現場を撮っていた人がいて、その写真がすごい値段で売れたという話があったんです。それを聞いた師匠がそこからカメラを持ち歩くようになったんですよ(笑)。

当時のカメラはかなり高価なものでしたし、みんなが持っている物ではありませんでした。しかも、師匠が撮るとなると、皆さん「えっ、師匠が撮ってくれるんですか?ありがとうございます」とすごく喜んでくださるんです。

藤圭子ちゃんとか細川たかしさんとか、師匠の番組に出てくれたゲストの写真もたくさん撮っているんですけど、本当に皆さん良い笑顔なんですよね。

ま、これは後日談だけどね、時々、フィルムが入ってなかったこともあったんだけど(笑)、それでも師匠は「いいんだよ、パフォーマンスでも。みんな喜んでくれるんだから」って言ってました。

要はね、写真というものはとっても良いコミュニケーションの道具になるということを、師匠につきながら思っていました。

なので、僕がカメラを持つようになったきっかけは完全に師匠です。師匠が周りのみんなを笑顔にしているのを見て、自分も持つようになりました。

この人(パー子)の場合は、僕が持つようになったからというのもあるし、もう一つ意味があって持ち始めたんですよ。

パー子:自分で言うのもアレなんですけど、本当にシャイで人見知りなので、カメラがあるとすごく助かるんですよね。

まず、あいさつがわりに撮影させてもらっています。写真を撮ると、一気に空気が柔らかくなるというか、スムーズになるんです。カメラに助けてもらってきました。

「パフォーマンスだけでいいですから」

ペー:今みたいな感じで、仕事の現場というか、公の場で最初に撮影した芸能人第一号が郷ひろみさんでした。もう50年近く前のことです。細かい数字は全く分からないけど、少なく見積もっても、これまで何十万枚単位で撮ってきたと思います。

今はデジカメだから電源がある限りいくらでも撮れるんだけど、昔はフィルムだから、今ほどジャンジャン撮れないんですよね。

ただね、その分というか、撮った写真を渡すと、皆さん、すごく喜んでくれました。

丹波哲郎さん、青島幸男さん、みのもんたさん、桂文枝さん、赤塚不二夫さん、水島新司さん、そりゃ、お一人お一人挙げていったらキリがないくらい、皆さん本当に喜んでくださって、それはそれは素晴らしいお礼の品もくださいました。

フィルムの時代には、フィルム以外にも、今と違って他のいろいろな付属品も買わないといけなかったので、写真を撮ることにお金がかかったんです。正直な話。

一番たくさんお金を使っていたのは、1990年前後に出してもらっていた日本テレビの「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」の頃だったと思います。

そこから写真を撮るというキャラクターを認知していただいたというか、僕らと言えば、写真を撮っている人というイメージがついたというのは感じましたね。

パー子:ビックカメラでフィルムとかを買ってたんですけど、たまったポイントで買い物ができるようになると、冷蔵庫、テレビ、掃除機…。ウチの電化製品をいつもポイントで買えるくらいは買い物をしてきました(笑)。

ペー:ずっと写真を撮ってきて感じるのは、写真に対する意識が、今と昔ではガラッと変わりましたよね。

昔は写真を撮ることが特別だったのが、今は当たり前になりました。撮られる側も、昔は「撮ってもらえるんだ!」という心浮き立つ感じがあったと思うんですけど、今はそれがほぼなくなりましたもんね。

特に、僕らが撮っているような芸能人はまた特別な要素もあるし、それ以上に皆さんが喜んでくれてたんだけど、今はかなり気を使っています。

これはね、僕の感覚だけど、流れの変化みたいなものを最初に感じたのは「モーニング娘。」の皆さんが出てきた頃、そうだなぁ、20年前くらいかな。そのあたりから、少しずつ変化を感じてきました。

それまで僕らは写真を撮る人という枠というか、ある意味、そこで市民権を得ていたと思ってたんだけど、そのあたりから番組のスタッフさんから「悪いんですけど、撮っているというパフォーマンスだけでいいですから」と言われることも出てきたんです。

その時はフィルムを入れずに、タレントさんとかアーティストの人の写真を撮る。厳密にいうと、撮るフリをする。そういうことも出てきたのが20年くらい前からですね。

写真をみんなが撮るという中で、写真に関する意識が高まってきたんだと思いますし、今の時代は、それがSNSと言うの?ああいうものにも結びついちゃうし。

ごめんなさいね、うまく言えないところもあるけど、そういう変化を感じる中で「え?そうなんだ」と思うことも出てくるようになりましたね。

そんな一つ一つの経験をしていく中で、僕の意識というか、写真を撮ることに躊躇する思いも正直、出てきたというのが今の本当の思いです。

ありがたいことにね、ほとんどのタレントさんが後輩だから「写真、いいですか?」と尋ねると、ほとんどの人がOKと言ってくれるんです。

この前も、フワちゃんと撮ったんですけど、すごく好意的に迎えてくれました。ありがたいんですけど、だからこそ、こちらが気を使わなきゃなとも思っています。

写真で見える夫婦のカタチ

ペー:あんまりこんなことは言ったことはないんですけど、写真を撮る中で、この人(パー子)への尊敬の念が高まっていったんです。

ま、口ではね、この人にいろいろギャーギャー言ったりしてるけど、すごい人だと思いますよ。

まず、この人が撮った方がほぼ確実に被写体の表情がいいんです。過去にイチローさんの写真を撮った時も、見たことがないような穏やかな顔をされてるんです。

長嶋茂雄さんも、寺尾聰さんも、皆さんが「パー子さん!」って寄ってきてくれるんですよ。そして、写真を撮ってくれる。

一度も会ったことはなくても、向こうが一気に寄ってきてくれるというか、そういう認識される力というか、引き寄せる力というのがすごいなと。

これまでの写真を見ると、改めて、こういう奥さんだから、ここまでやってこられたのかなと思います。

パー子:逆に、私が思うのは、本当に博識だし、助けられています。ウチは夫婦というか、兄妹みたいな感じでやってきて、そういうところが今日までやってこられた理由かもしれませんね。

ペー:僕にとって、カメラですか?そうですねぇ。カッコつけるわけじゃないんだけど、武士でいうところの刀じゃないですかね。今は時代が変わって、簡単に抜くものじゃなくなったのかもしれませんけど、それを携えておくだけで気持ちも変わりますしね。

今撮りたいのは大谷翔平選手ですね。被写体として、本当に魅力がありますね。これはねぇ、撮りたいね。なんとか、ヤフーさんの企画で撮りに行くとか、できませんかね(笑)?

パー子:その前に、ここのみんなで一緒に写真を撮りましょうよ!

ペー:違うんだよ!今、そういうのじゃないんだよ!ピントがズレてるんだよ。

パー子:やだ、もぉ~!

■林家ぺー・パー子

林家ペー。本名・佐藤 嘉彦。大阪府出身。林家パー子。本名・佐藤粋子。東京都出身。ともに、ペーが運営する「P&P企画」に所属。ペーは64年に初代林家三平に入門。一門の後輩にあたるパー子と72年に結婚した。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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