監督解任と場外乱闘で上昇したフィリーズとマリナーズのPS進出でエンジェルスが引き継ぎそうな不名誉記録
【8シーズン連続でポストシーズン進出を逃すエンジェルス】
大谷翔平選手が所属するエンジェルスが、現地時間の9月19日に行われたマリナーズ戦に1対9で敗れた。これにより今シーズンの通算成績が64勝83敗となり、ワイルドカード進出の可能性もなくなり、8シーズン連続でポストシーズン進出を逃すことが決定した。
またエンジェルスは7シーズン連続の負け越しもすでに決定しているだけでなく、2019年に記録したシーズン90敗に並んでしまう可能性も残している状況だ(ちなみに、2000年以降でシーズン90敗以上を記録したのは2019年の一度しかない)。
シーズン開幕前はメディアからの評価が高く上位進出が予想される中、5月下旬まで地区首位争いを演じていた当時、シーズン終盤の現状を誰も想像していなかっただろう。
【突然の転落劇に日本では「なおエ」が流行語に】
5月25日のレンジャース戦からチーム初の14連敗を喫してから、明らかにチーム状況が一変した。連敗中の6月7日にジョー・マドン監督も解任され、1ヶ月後の6月25日には34勝40敗で地区首位に12.5ゲーム差をつけられてしまった。
その転落ぶりに、エンジェルス・ファンが味わった失望感は計り知れないものがある。日本でも大谷選手が活躍する一方でエンジェルスが負け続ける状況に、「なおエ(なおエンジェルスは負けました)」という言葉がSNS上で流行するほどだった。
さらにトレード期限日までにノア・シンダーガード投手、ライセル・イグレシアス投手、ブランドン・マーシュ選手と、次々に主力選手たちを放出してしまったのだから、もうその時点でエンジェルスのポストシーズン進出の可能性は断たれてしまったといっても過言ではないだろう。
【監督解任でチーム状況を上向かせたフィリーズ】
ファンをより失望させることになったのが、エンジェルスとは好対照のフィリーズとマリナーズの存在ではないだろうか。
まずフィリーズだが、エンジェルスとほぼ同じ時期(6月3日)に成績不振を理由にジョー・ジラルディ監督を解任したところ、それを機にチーム状況は一変。解任直後から8連勝を飾るなど、現在もナ・リーグでワイルドカード出場圏内に止まり、11年ぶりのポストシーズン進出に一歩ずつ近づいている。
一方のエンジェルスは、フィル・ネビン監督代行が指揮をとるようになってからも、チーム状況は改善するどころかむしろ悪化する始末だった。前述通り日本で「なおエ」が流行し始めた6月と7月のチーム勝率は.308(16勝36敗)という状況だった。
エンジェルス、フィリーズともにシーズン前は好評価を得ていたチームでありながら、監督解任でこれほど明暗がはっきり分かれてしまったのだ。エンジェルス・ファンとしてはやり切れないだろう。
【場外乱闘以降快進撃を続けるマリナーズ】
さらに別の一件で、エンジェルスと好対照になったのがマリナーズだ。
この2チームは6月26日の対決で場外乱闘を演じた末、両チーム合わせて12人(監督、コーチも含む)が出場停止処分を受けてしまったのは、記憶に新しいところだろう。
処分を受けた1人だったイグレシアス投手は騒動直後に、「我々は1つのチームだ。これでより結束できた」と語り、不振だったチームが変化していくことを匂わせていたのだが、チームが結束したのはエンジェルスではなくマリナーズだった。
エンジェルスは騒動後もなかなか勝てるようにならず、前述通り7月まで不振が続く中、マリナーズは6月27日以降の19試合で14連勝を含む17勝2敗という快進撃を演じ、6月26時点で地区4位(34勝40敗)だったのが、一気に地区2位(51勝42敗)まで躍り出ることに成功したのだ。
マリナーズの快進撃はその後も衰えることを知らず、現在もフィリーズ同様ワイルドカード出場圏内を維持し、21年ぶりのポストシーズン進出を手中にしようとしている。
【8シーズン連続がMLBの現行最長記録に?】
まさにエンジェルスとは対照的に、監督解任、場外乱闘を機にチーム状況を改善させたフィリーズとマリナーズだが、実は現在ポストシーズン進出から最も遠ざかっている1位と2位のチームだったのだ。
前述した通り、マリナーズは2001年以来、フィリーズも2011年以来のポストシーズン進出を目指し、その不名誉な記録に終止符を打とうとしている。
仮に両チームが無事にポストシーズン進出を果たすことになれば、次にポストシーズン進出から離れているチームこそ、8シーズン連続を決めたばかりのエンジェルスなのだ。タイガースとともに2014年を最後にポストシーズンに進出できていない。
大谷選手の契約延長問題に止まらず、球団売却問題まで抱えるエンジェルスは、この不名誉な記録をいつ打ち破ることができるのだろうか。