N・プライスから松山英樹へ。「打倒タイガーだ!」
世界のゴルフ界における松山英樹の存在感が驚くほどグングン高まっている。
「マツヤマはパットとショートゲームが、とにかく上手い。弱点を探しても見つからないぐらい、すばらしい選手だよ」と絶賛したのは、プレジデンツカップで国際チームのキャプテンを務めるニック・プライス。
松山は今週、オハイオ州アクロンのファイアストーンCCで開催されるWGC(世界選手権シリーズ)ブリヂストン招待に初出場するのだが、大会開幕前に開かれた会見でプライスは記者陣がまだ何も質問していないというのに自ら松山の名に触れ、「つい今さっき、ヒデキ・マツヤマと15分ほど話をしてきたところだ。彼に直接会ったのは初めてだった。でも、ここ数か月、彼のゴルフを興味深く眺めてきたよ」と饒舌に語り始めた。
米メディアからは、いろいろな母国語が入り混じる国際チームのメンバーの英語力を問う質問が出たが、プライスはその質問を松山に対する質問と捉え、「そのためにシゲキ・マルヤマがいる」と、副キャプテンを務める丸山茂樹の助力に期待を示した。
そして「他の11名のチームメンバーと一緒に戦うことになると、マツヤマはナーバスになるかもしれない。個人戦とは違うからね。でも、私はマツヤマをナーバスにしたくない。彼が気持ちよくプレーできるようにしてあげるには、どうしたらいいのか。その方法をシゲキと相談して考えるよ」と、松山を手厚く迎え入れる心積りだ。
そして、松山に対する期待や注目の高まりの表われは、プライスの絶賛以外に、もう1つある。ブリヂストン招待は予選カットのない4日間大会だが、松山はその初日と2日目にタイガー・ウッズと同組で回ることになった。
世界ランク1位、同大会過去7勝のタイガーとツーサムで回るその相手に、大会初出場選手が選ばれること自体、異例中の異例だ。が、当の松山本人は、タイガーと同組になっても「何も思わない」と、あまり気にしていない。
だが、「プライスがめちゃめちゃ褒めてましたよ」と伝えると、「何て言ってました?」と、そこは気になる様子。
舩越「『ビート・タイガー!』だって」
松山「『ビート』って何?」
舩越「『打倒タイガー』って意味」
松山「へ~。面白い人っすねえ」
やっぱり、あっさり――。
松山にとって、周囲の評価や褒め言葉は、気にはなるけどそれだけのこと。それよりも今の彼の最大の興味関心は「先週も良くなりそうで良くならずに終わった」という自らのショットの調子だ。
米ツアーの来季シード権が獲得できるかどうかも「見えてきているけど、(ショットの)調子が最悪なので……。あんまり気合いを入れてやるより、普段通りやっている方がいいのかな」。
ショットの不調を感じているだけに、メンタル面の保ち方に一抹の不安を感じている様子だが、心技体を相互に補完しながら好成績を出してこそ、プロの腕の見せ所だ。
「どういうプレーができるかわからないけど、予選落ちがないので、4日間一生懸命がんばりたい」
どういうプレーができるのか――世界の視線も、タイガーの視線も、松山に注がれている。