海に漂流するごみの墓場「太平洋ごみベルト」で、回収作戦に挑む
海洋学者のチャールズ・ムーアさんは、1997年ロサンゼルスに向け太平洋を航行中、目を疑うような光景を目にしたと記しています。
「船のデッキから海を眺めていたところ、一面にペットボトル、キャップ、ラップなどプラスチックのごみが広がっているのが見えた。この信じられない光景は、一週間いつ見ても変わることはなかった」
これが「太平洋ごみベルト(英語 Great Pacific Garbage Patch)」と呼ばれる、海洋に浮かぶ巨大なごみの墓場の発見となりました。
太平洋ごみベルトとは
【場所と面積】
太平洋ごみベルトは、北太平洋海流の内側、ちょうどハワイとカリフォルニアの間に位置しています。その面積は160万平方キロともいわれ、日本の面積の4倍に匹敵するほどの大きさです。
【内容】
ごみの46%は漁業用の網で、網にかかって窒息するなどして毎年10万頭のクジラやアザラシ、ウミガメなどが死亡しているそうです。
一方プラスチックのごみの数は1.8兆個とも推定され、そのうち9割以上が「マイクロプラスチック」と呼ばれる5ミリ以下のかけらといわれています。小さいがゆえに魚や海鳥が誤って食べてしまい、それが食物連鎖に入り込んで、海洋生物全体に影響を及ぼしています。
【起源】
全体のうち約8割が北米やアジアからのごみで、残りの2割が航行中の船舶からのものといわれています。陸地から太平洋ごみベルトに到達するまでにかかる時間は、北米だと6年、日本など東アジアだと1年とのことです。残念なことに、プラスチックごみの3割は日本からのものであったという報告もあります。
(↑漁網にひっかかってしまったウミガメ)
(↑一匹のウミガメの体内から見つかったプラスチック片)
「オーシャン・クリーンアップ」作戦
太平洋ごみベルトの発見から20年たった今年の夏、大規模な清掃活動が始まる予定です。
活動の指揮を執るオランダ人ボヤン・スラットさん(現在23歳)は中学生のころ、ギリシャで海に浮遊する大量のごみを見て以来、問題解決のために研究を続けてきたそうです。彼が大学生だった18歳の時に、海洋のごみを海流の動きを利用しながら自動で回収するシステムを発表し、世界中から賛同の声が上がりました。
(↑オーシャン・クリーンアップの詳細)
スラットさんはNPO「The Ocean Cleanup」を設立し、海洋のごみ清掃の実現に向けて活動を続けています。5年間で太平洋ごみベルトの50%のプラスチックごみを回収・除去し、2050年までに完全になくすことを目指しているといいます。
この若き研究者は、海洋環境を守る救世主となるのか--。世界から期待が高まっています。