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メーガン妃を「信じない」英司会者が反撃。「被害者面して言論の自由を抑圧するな」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
メーガン妃への謝罪を拒否して降板を強いられたピアース・モーガン(中央)(写真:REX/アフロ)

 今月上旬に放映されたインタビューでメーガン妃が言ったことを「信じない」と発言し、朝番組「Good Morning Britain」を降板させられたイギリスの有名司会者ピアース・モーガンが、反撃に出た。現地時間27日午後6時に「Daily Mail」が公開した長い記事で、彼は、なぜ自分はメーガン妃を信じないのかを説明、キャンセルカルチャーを強く批判したのである。

 記事は、モーガンがインタビューを見た現地時間今月8日の朝4時から現在までに起きたことを振り返る形で書かれている。イギリスよりひと足早くアメリカで放映されたそのインタビューを見て、モーガンは、「これは、メーガン妃とハリー王子が英国王室に投下した原爆だ」と思うほどショックを受けた。アメリカの人気司会者でメーガン妃の友人でもあるオプラ・ウィンフリーが行うそのインタビューで、メーガン妃とハリー王子は、ふたりの息子アーチーに対して生まれる前から人種差別があったこと、心の病に苦しんだメーガン妃が治療を受けたいと言ってもイメージを気にして許してもらえなかったことなどを語っている。それを聞きながら、モーガンは「インタビューが続けば続くほど、私はますます信じられなくなってきた」という。

 たとえば、メーガン妃が、結婚式の3日前に密かに結婚していたという話だ。「つまり、私たちは偽物の結婚式を見せられたということか?イギリスで最も尊敬される聖職者は、あのガーデンで、偽りの儀式を行ったというのか?」と、モーガンは疑問を持った。また、メーガン妃が、ハリー王子に出会うまで英国王室にまるで興味がなかったというのも嘘だと感じている。過去に、メーガン妃の昔からの友人が、彼女は英国王室、とりわけダイアナ妃に強い関心を持っていたと発言したのを、モーガンは覚えていたのだ。

 しかし、最も強い抵抗を覚えたのは、アーチーが肩書きをもらえないことを人種のせいにしたことだった。これは単にそういうルールだからで、人種には関係ないのに、「こう言えば人種問題に敏感なアメリカでは炎上して、王室に最大のダメージを与えられると思ったのだろう」と、モーガンは指摘。「マークルのようなハリウッドの成り上がり女優がこういう腹に一物ある行動を取るのは想定内。だが、ハリーまでが自分の家族を公の前でズタズタにするとは」と、モーガンは残念に感じた。

 それで彼は、番組が始まると正直に「私は強い怒りを覚えている」「彼女(メーガン妃)の言ったことは一言も信じない」と言ったのだが、共同司会者に「そんな気持ち(自殺願望)を持つ人に対して情けないことを言うんですね」と、ピシャリとやられてしまった。黒人のゲストからも、「メーガン・マークルに対する女性差別で人種差別的な攻撃」と言われてしまう。その翌日の番組でも、別の共同司会者に「あなたはメーガン・マークルを前から嫌っていますよね」「彼女はあなたへの連絡を絶ったようですが、彼女はそうしたければそうする権利があるのですよ」と言われ、腹が立ったモーガンは、カメラが回っているにもかかわらず、番組を出て行ってしまった。

 そんなモーガンに、テレビ局は、公に謝罪するよう勧める。だが、モーガンは「私はメーガンを信じない。なのに謝罪をすれば、視聴者に嘘をつくことになる。メーガンを嘘つきと呼んでいる私が同じことをするはめになるのだ」と言い、番組を降板するほうを選んだ。皮肉にも、視聴率が大幅に上がったタイミングで、モーガンは番組を去ることになってしまったのである。

降板後、著書の売り上げはアマゾンで1位に

 だが、モーガンは今、「あらゆる意味で、人生で最もエキサイティングな時期を過ごしている」と書いている。「私は被害者ではない。キャンセルされてもいない」ともいう彼は、自分の発言に対して寄せられた苦情は5万7,000件だったが(そのうち一件はメーガン妃自身が寄せたものだともモーガンは指摘)、モーガンが仕事を取り戻せるようにという運動には30万人が署名したことを挙げている。また、番組降板の後、彼の著書「Wake Up」の売り上げは急増し、アマゾンで1位を獲得するまでになった。モーガンの近所のパブには、「ロックダウンが終わってピアース・モーガンが訪れたら、私から一杯奢らせてもらいたい」と、見知らぬ女性からメールが届いたとも、モーガンは述べている。

 そんなモーガンは、現地時間29日にも「Daily Mail」に新たな記事を寄稿。その記事では、モーガンを弁護したシャロン・オズボーンがアメリカの番組「The Talk」をクビにされたことに重点を置き、「シャロン・オズボーンが私を弁護したからと言って彼女が人種差別者であることにはならない。メーガン・マークルを信じないからと言って私が人種差別者であることにはならないように」「私たちがふたりとも仕事を失ったのは、言論の自由への攻撃であり、キャンセルカルチャーのひどい例であり、偽善だ」と主張した。27日の記事の中でも、モーガンは、メーガン妃を「不満ばかり言う偽善的なセレブリティのひとり。被害者面をして言論の自由を抑圧しようとしている。自分の主張する真実のほうが本当の真実より上で、それに従わない人をキャンセルしようとするのだ」と非難し、キャンセルカルチャーをキャンセルしようと訴えたばかりである。

 もちろん、モーガンへの非難の声も絶えない。しかし、それらのツイートにも、彼は「私が言うことなんか誰も気にしないと言うなら、どうして790万人ものフォロワーがいるんだい?(君もそのひとり)。それにどうして私の本が1位になるんだい?」と、強気で立ち向かっている。問題のインタビューが放映されて、もう3週間。しかし、その余波はまだまだ続きそうである。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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